見出し画像

JAPAN⇄CANADA 4-2

(今回は以前noteにあげた「東京へ来た理由とイラストレーション」でも触れている話が出てきます。そちらも併せて読んでいただけると嬉しいです)



私の通っていた高校では、10月から11月にかけて「Post Secondary Fair (ポストセカンダリーフェア)」というものが開催されました。ポストセカンダリーとは高校卒業後の学校のことで、大学・短大・専門学校などあらゆる選択肢のことを指します。12年生はホームルームで説明があり、参加を促されていました。もちろん私も例に漏れず、高校後の進路を決めるべくほのポストセカンダリーフェアの会場だった体育館におにぎり抱えていきました。


この頃、卒業後なにを勉強するかまだ決めかねていました。日本の大学に行きたい気持ちもあり色々調べてはいましたが、金銭面を含めて早々に辞めることにしました。加えてこの時の自分の気持ちは、カルガリー市にいたいという思いの方が上でした。あんなに日本に帰りたい、とカナダに住むことを嫌がっていたのになんとも不思議な感じでしたが、マーチングをしたいと強く思っていました。せっかく楽しめるものを掴んだのにここで手放すのは惜し過ぎる。引退しなきゃいけない年までやり切りたい、と決心したのです。というわけでポストセカンダリーフェアでも、市内の大学を軸に話を聞いてまわりました。残念ながらピンと来る大学がなく、何となく市内の1番大きな大学のジェネラルスタディに進むのかなと思うようになりました。ジェネラルスタディとは読んで字の如くなんですが、文系、理系と大まかに分けられた分野を当たり障りなく勉強する学科です。1年目は全般的な勉強をし2年目に専攻を決める、何がしたいかはっきり分からない、色々試して勉強したい、というような学生向けの学部でもありました。


その日家に帰り、フェアのことについてまずはまみーに相談しました。まみーは

「まずは色々してみてらから決めるのもいいんじゃない?」

と言ってくれました。心の中ではやりたいことを含めて色々勉強できるのは楽しいかもしれないと考えていました。実はこの当時、やりたい(勉強したい)ことが3つありました。1つ目は音楽。クラリネットの演奏もできるし、理論についても深く学ぶことができると考えていたけれど、卒業した後プロになりたいかというとそういう気持ちも強くなく、学校の先生にもなりたいわけではなかったので選択肢から外れました。2つ目は歴史。その中でも日本史について学びたいと思っていました。ただ市内の大学で日本史について深く研究するようなところはなく、なんとなく親からもやめといた方がいいかもねと言われていました。そして3つ目がイラストです。イラストは音楽と一緒で卒業後の進路に確実性がないと諦めていました。


さて、とりあえずジェネラルスタディに進もうと身を固め始めていた私ですが、その夜だでぃーに話をした後に全てがひっくり返るのでした。


まみーに話したことと同じ内容を説明し、どう思うか意見を聞きました。

「まりぃは絵を描くことが好きだし、カードとかポスターとかも作るの得意だからデザイン向いてるんじゃない?」

そう、意外な言葉が返ってきたのでした。だでぃーはどちらかというと教育パパ、というか人生の為に教養をつけなさいというような考えの人なので、技術を身につけるような科目の名前が出てきてびっくりしました。まさかと思い、

「本当に?」

と聞き返してしまいました。それに対してだでぃーは

「デザインもいろんなジャンルがあるし、人が使うもの見るもの全てにデザインが関わっている。どのデザインかは別としてそういうのって合ってると思うよ」

と返してくれました。


そっか、私はイラストの道に進んでいいんだと自分の進路にはじめて肯定的になれました。心のどこかで親に反対されるんじゃないかな、というストップをかけていたんだと思います。私はゲージから解き放たれた競走馬のように一直線に目標に向かいはじめました。まずは、パソコンで進学しようと考えていた大学のサイトにいき可能性のある学部や学科をくまなく調べました。どうやらその大学には美術学科があるようでした。デザインについての授業もあるようでしたが、果たして私が学びたいことがやれるのか定かではありませんでした。自分の力だけでは情報が不十分だったので次のポストセカンダリーフェアでその大学のブースに行って質問をしようと決めました。


後日、調べていた大学のブースを目的に体育館に行きました。ひと通り質問をした後、他の大学も見ておこうと回っていた時でした。私の目に「Desigh」という文字が飛び込んできたのです。目の前が急に明るくなったように感じました。ディズニー映画やミュージカル映画だとここで風が吹き音楽がかかるんじゃないかって思ったくらいです。これが私が通うことになる大学、「Alberta College of Art + Design (現在Alberta University of the Arts)」とのファーストコンタクトでした。すぐにブースの人に話を聞きに行きました。資料を貰って読んでみると、さらに驚くことにイラストレーション学科があることが発覚しました。奇跡の出会いだと感じ、その日家に帰るなり親に資料を見せました。2人とも賛成してくれて、早速入学の申請に必要なポートフォリオ制作を開始しました。次の日の美術の授業で、先生にも相談していろいろなアドバイスをもらいました。友達や他の先生にもイラストを勉強することを伝えました。1番驚いていたのは、毎週火曜日一緒にお昼を食べていたESL(英語を第2言語として学ぶクラス)で1番お世話になった先生だと思います。てっきり音楽をするのかと思っていたようで、意外だったそうです。でも先生は私がイラスト制作が好きなことも美術が好きなことも知っていたので納得もしていました。他の人も何人か似たような反応をしていました。確かにクラリネットに没頭していたのは事実で、大学もその道に進むと思われてもおかしくないと思ってました。ただなぜか音楽を将来の道として選ばなかったのは、演奏する喜びを感じるだけで充分と感じていたからかもしれません。


とにもかくにも進路と希望校が決まったので私はそれに向かってまっしぐらでした。でもそれだけに没頭していてはいけません。もちろん音楽の活動を続けていたし、私にはマーチングバンドでの活動が待っているのでした。

-つづく-

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?