#1 『Tokyo(etude ver.)』について 【後編】〜あの場所もなくなって〜
▼前編・中編はこちら
前編の記事にも書いていた、「なくなっていく場所」について。
この曲の歌詞「あの場所もなくなって」には色々な意味が込められていますが、
オリンピックを前にして、"再開発"の名の元どんどん無神経に壊されていく("むなしや 槌が鳴り止まぬ" です)、上京したての自分の心をとても躍らせた「東京」の風景。その後も、コロナの影響でどんどんなくなっていく、大切な場所たち。それをきっかけに生まれた歌詞です。
「無くなってしまう、しまった場所」を少しでも形に残したくて、今回の映像のロケ地を選びました。
そして構想を終えてから、撮影・自分の手で編集している間にも、なくなることが決まった建物や場所はどんどん増えていきました。
この【後編】では、撮影エピソードや個人的な思いも添えながら、そんなロケ地を紹介してきます。
・東急百貨店&Bunkamura
朝6時、渋谷から撮影開始。こんなに早く起きたの何年ぶりよ。
東急百貨店は、再開発で2023年に取り壊しになるそう。隣のBunkamuraもそれにともない長期休業だとさ。ミュージアムも劇場もコンサートホールもあって、いろんな芸術が集まる、私にとって安息の地。
・アップリンク渋谷(跡地)
Bunkamuraから近い、アプリンク渋谷があった場所に、まだ面影があるかと思い行ってみた。完全に跡形もなく、もうすっかり空っぽ。その絵をそのまま映像に採用。
ただのテナントになっていて、切なかった。インディペンデントカルチャーの、映画の亡霊がまだこの中にいそう。
・恵比寿:リキッドルーム(の近くの並木道)
リキッドリームは絶賛機材搬入途中だった。この時期は公演開始が早くて大変だよね。なので近くの並木道で撮影。
リキッドリームは、サカナクションのNFだったり思い出がたくさん。なくならないでね。
・六本木:国立新美術館
建物としても、空間としても、とても好きな場所。朝早すぎで門が閉まってた。ここの庭で展示見た後に少しぼーっとするのと、閉館間際の人が少ない夜の館内が好き。
・新宿:珈琲西武
ゲリラ撮影。一瞬の隙を狙って、アー写も撮影。藤田嗣治「カフェにて」の再現ロケ地として、"らんぶる"とも迷ったけれど、営業時間の早さと広さ、窓があるという点で"珈琲西武"に采配が上がる。通された席もいい感じ。
ワインはないよな…と思い、飲みたいからという理由でレモンスカッシュを頼んだのでグラスの中身が赤くないのはご愛嬌。感染対策の座らないでねマークを、しれっとバイエルちゃんで隠している。
古くからある場所が好きだ。
出典:WikiArt
・新宿の目
ふと思い立って撮影。ドレスコーズ×前野健太のライブビジュアルを思い出して(椎名林檎っていう人も多そう)。スバルビル解体と共になくなる説があったけど、なくならなくてよかった。
・都庁前
オリンピックの旗が映り込んでいる。今だけの風景。
・新宿西口全景
映っていないけれど、コクーンタワーの向こうにある小田急百貨店に思いを馳せている。高速バスで東京に帰ってくる時に見える景色。最初の頃は「わ、東京だ、新宿だ…(ワクワクと緊張)」となってたのが、いつの間にか「帰ってきた」「心地よさ」を感じる景色に変わっていた。そんな小田急の建物も2022年には解体されるらしい。
・新木場COASTとZeppTokyo
これらは撮影直前あるいは撮影後に発表があった(しロケ地としても遠すぎた)ので、自分のスマホからプライベートな写真を引っ張り出してきた。
撮影の翌日、オリンピック開会式の裏側で、ROTH BART BARONを見てた。この時はまだなくなる発表前。ÁsgeirやPanic!At The Discoなどの海外アーティストもここで観てえらく感動した。なくなるのが悲しすぎる。
COASTには思い出がありすぎるけれど、ドレスコーズの「どろぼう」ファイナルが一番かも(平凡さんのmemeも捨てがたいが)。偶然手に入にしたバラはずっと大切にとってある。
Zeppが一番思い出歴が長いのでは。初めて行った「Version 21.1」はよく覚えている。こちらもなくなる、今までありがとう。
早朝からたくさんの移動を伴う撮影をしてくれた(そして編集も教えてくれた)オオハラさんに大感謝。素材が素晴らしいので、マリエの編集作業は楽しすぎた。
これ以上、なくなる場所が増えませんように。
そして文化が、我々の居場所が、壊されず、この先誰にも邪魔されることなく続いていきますように。
メイキング動画も作ったので見てね。
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