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「社会人が学ぶこと=MBAに行くこと」とは限らない!大人の学び方6タイプ(前編)

リカレント教育(社会人が学ぶこと)を研究しています、というと、「MBAの研究をしているの?」と聞かれることが多いです。社会人が学ぶというと、MBA、あるいは社会人大学院というイメージが強いのだなと思います

自分も研究を始めた当初は、MBAだったり、大学院というのが一般的なのかなという仮説で研究を始めました。研究を進める中で、「現代のリカレント教育はそれだけではない」と考えるに至りました。そう思ったきっかけとなったのは、このイベントです。

このイベントにパネリストとして参加していた教育系のサービスを提供する皆様が、下の類型でいう「社外体験提供系」の学び方のサービスを提供している人が多く、大人の学び方の多様性に目を向けるきっかけになりました。それ以降いろんな人に会って調べる中で、大別すると以下の6つに分かれるのではないかと思っています。

1. 社会人大学院(大学): 読んで字のごとく、社会人が大学院・大学などの教育機関に行って学ぶこと
2. 新技能習得系:AI/プログラミングなど、社会変革とともに求められる新技術を学ぶこと
3. 社外体験提供系:所属している企業や団体から外に出てマインドやスキルをブラッシュアップすること
4. MOOCS系:Massive Open Online Coursesの略、オンラインで大学講義などを受けて学ぶこと
5. 事業創造系:自身が創業者となり、サービスやプロダクトを作って起業することを学ぶこと
6. 課題解決の場を提供系:座学や通学によって学んだことを実践し、実際の社会の課題を解決して学ぶこと

なお、「類型」と書いていますが、MECE感はまだありません。というか、それぞれの要素の組み合わせなども多々みられるます。(例:2. 新技術習得を3.MOOCSで実施する、というケースも多い)ということで、最終的にはタイプを列挙していきたいと思っていますが、現状はどちらかというと「社会人の学び方(キーワード)」みたいなイメージです。

前編では1-3について検討してみたいと思います。

1. 社会人大学院(または大学)

大人の学び方、と聞いて誰もが思いつきやすい「社会人大学院」。読んで字のごとく、社会人(すでに働いている人)が大学院に入学して学ぶことを指します。社会人学生かどうか、という点は、各種調査などでは単純に「25歳以上の入学者」というように一定の年齢以上か、という観点で調査されているケースも多くみられます。

少し古いですが、「文部科学省の社会人の学び直しに関する現状等について」資料によると、以下のようなことがわかっています。

- 平成27年3月時点の集計によると、高等教育機関で教育を受けている社会人は11.1万人。うち、大学院の社会人入学者数は17,517人。平成20年の1.9万人をピークに入学者は横ばい

- 大学院入学者の社会人割合は平成26年で18.2%

- 大学入学者のうち25歳以上の割合は、OECD各国平均18.1% (アメリカ23.9% イギリス18.5%)に対して 日本1.9% 。OECDの中でも突出して低い

- 「OECD Stat Extracts (2012) 」(日本の数値は「学校基本調査」と文部科学省調べによる社会 人入学生数(4年制大学))

- 大学側の取り組みとして、主に社会人を対象として学位取得を目的 としたコースを設置しているのは国立大学59 (68.6%)、全体でも269 (43.7%)。10年前の2009年には30%に満たなかったことを考えると、急ピッチで整備されてきたことが感じられます。一方で同一の調査の中で「企業等と連携して開発した 社会人を対象とした教育 プログラムを実施」と答えた大学は41学校(全体の6.7%)にとどまっており、2007年の調査からほとんど変わってません。*文部科学省調べ(平成24年度大学院活動状況調査)
- 「当該大学の学生以外の者で大学入学資格を有する者を対象とした特別の課程を編成し,これを修了した者に対し,学校 教育法に基づいて修了の事実を証明する「履修証明書」を交付する」という履修証明制度が2007年からスタート、こちらの実施大学は72学校(全体の9.4%)となっています。具体的にやっている事例はこんな感じです。

大学によるリカレント教育の先進事例として知られる「日本女子大学」でも、この履修証明プログラムで講座を提供しています。

青山大学も熱心にやっている印象があります。

2. 新技能習得系

テクノロジーの発展、社会変革の加速に伴い、新しく必要になる新技能を習得するタイプの学び。現時点でいうと、AI、プログラミング、ロボティクスなどの教育事業が資金調達をしていたり、大手企業に買収されるケースが多くみられるように思います。
アメリカで話題になっているGeneral Assemblyもこの系列かと思います。

また、フランスにはこんなのもあるみたいです。フランスの驚異のエンジニア育成スクール「École 42」

リカレント教育とは直接関係ありませんが、ロボティクスのような分野に企業が投資を始めている事例がちょこちょこあります。こちらはiRobotが教育ロボットRoot Roboticsを買収という例。

日本でもCODE Camp、Tech Academy、Tech::Campなどのプログラミング教室とか、キカガクのような機械学習、AIの学習支援サービスなどが出てきているイメージです。

3. 社外体験提供系

調査を始めて一番意外だったのがここです。転職は増えてきたにしても、まだまだ何かしらの企業に所属して仕事をしている人の割合が多い現状。企業に所属することのメリットは数え切れないほどありますが、人材開発上の弱点が2つあるのではないでしょうか。

①人の経験が所属企業、担当業務や担当レイヤー(経営層なのかマネージャーレベルなのか、実務レベルなのか)に縛られてしまう。

②会社の看板の力で下駄をはいた状態で仕事ができてしまう。個人の名前で別環境に飛び込んだときの市場価値がわかりづらい。

「社外体験提供系」の学びは、この2つの弱点の解決策になっているのではないかと。つまり、会社の看板を外して社会に出る経験をさせることで、修羅場体験を積むことができる。同様に、現状の担当業務や担当レイヤーでは経験することができない経験をさせることで、目線を上げたり、スキル、マインドセットをブラッシュアップしていくような効果が見込めます。ここでは上記のSchooのイベントで知ったサービスを中心にご紹介。

リクルートが社会人インターンシップなどのサービスを提供している「サンカク」

企業間レンタル移籍サービスを提供している「LoanDEAL (ローンディール)」

海外でのインターンシップを提供している「Tiger Mov(タイガーモブ)」

新興国への「留職」プログラムを提供している「CROSS FIELDS(クロスフィールズ)」

Tiger Movだけは若年層に特化したサービスのイメージがありますが、それ以外のサービスは、どちらかというとある程度経験を積んだ幹部候補生、少数精鋭を送り込んで、急成長させることを狙ったサービス設計になっている印象です。逆に言えば、今後は少数精鋭以外も社外体験を通じて成長できるような機会を提供していくようなプレイヤーが増えるのではないかなと思います。

ちなみに、2と3については市場規模など客観的に状況が図れるデータがないかを探していますが、まだ見つかっていません。

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