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アムステルダムで天井を眺めています

日本を飛び立ってから30時間、アムステルダムにようやく到着。
本来、ドイツのハノーファーが最初の目的地だったが、
訪れた友人がこぞって「将来住みたい場所」と称えるアムステルダムに行ってみたかった私は
東京ーアムステルダムのフライトをとり、ハノーファーまでは電車で移動する予定だった。
しかし、アムステルダムでの滞在はたったの24時間。
行きたいところを事前に調べて、どれだけ効率よく周れるかが勝負だった。
空港に到着し、ホテルまでの道のりを歩く。
憧れのアムステルダムは、街の至るところに河が流れていて、建物は河を見守るようにきれいに並んでいて、雨の中でさえも風情を感じられた。
ホテルに到着し、チェックインを済ませようとした。
ここで問題が発生。私に突然の尿意が襲ってきたのだ。
飛行機のトイレの、あの思いきり飲み込まれるような音が苦手な私は、フライト中、お手洗いに行かなかった。30時間の長丁場を終え安心したのか、それは本当に突然やって来た。
受付のお姉さんに、先にお手洗い貸して!と2階のトイレに駆け込むと、死にものぐるいで電気をつけて、鍵を締めた。

便器まであと一歩。
その時、突然、腰に激痛が走り、腰が抜けて立てなくなってしまった。
鍵を締めた時、焦りすぎて腰を変に捻ってしまい、ぎっくり腰になってしまったのだった。
若い頃よく、「お父さんがぎっくり腰になってさ」なんて話を聞いて、何をしたらそんな事になるの?そんなに痛いの?なんて理解出来なかったが
私は25歳で、世界旅行の初日に、アムステルダムのホテルで、トイレの鍵を締めたことにより、生まれて初めてぎっくり腰になった。
なんとか無事にトイレを済ませた私は
激痛が走る腰を上げ、這いつくばって階段を降り、受付に戻った。
受付のお姉さんは、数分前に笑顔を見せ2階に駆け上がっていった若者(私)が、四つん這いで死にそうな顔で戻ってきたのを見てびっくりし、「どうしたの!?チェックインは後でいいから休んで」と優しく声をかけてくれた。
もらった鎮痛剤を飲み、ようやく部屋にチェックインを済ませたが、どうにも歩ける状態ではない。
私には24時間しかないのに。
自転車で川沿いの景色を見ながら走り、リストアップしていたヴィンテージストアを巡り、蚤の市に訪れ、コーヒーショップで楽しい時を過ごす。そんな、当初思い描いていた完璧な一日を想像しながら、ホテルのちいさなベッドで、悔しさを押し殺して天井を見つめているのだった。

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