雲田マリ

神経科学の研究をしています。気になった話題などを書いていくつもりです。

雲田マリ

神経科学の研究をしています。気になった話題などを書いていくつもりです。

最近の記事

科学論文は「真実」を明らかにしているのか?

今週の記事は私の個人的な意見を書いてみようと思います。 最近はコロナウイルスワクチンや治療薬について、いろいろな議論が交わされているようです。臨床の先生を除く多くの方々が医学論文をあまり読まれないと思うので、論文に対する私なりの見解を述べておこうと思います。 まずは科学論文が世の中に発表される手続きを簡単に説明したいと思います。 1:研究者によって実験が実施されます。最初に検証すべき仮説がある場合もありますし、実験中に見つけ出した「セレンディピティ」が元になって進む実験

    • 先天性発達障害に対する早期トレーニングの効果

      先天性発達障害は私の研究テーマのひとつです。先天性発達障害は、遺伝子の変異が原因となって発症する発達障害で、これまでにいろいろな遺伝子が発見されています。しっかりと調べ上げたわけではないのですが、Rett症候群はその原因遺伝子MeCP2が見つかった時期も早く、ここで紹介するHuda Zobhbi先生が世界の一線で研究を進めてこられました。 先天性発達障害を理解し対処するためにはいくつかの課題があると思うのですが、私が関心を持っているのは、患者の早期スクリーニングとスクリーニ

      • 機械学習を使った行動動画解析

        機械学習、AIという言葉が色々な分野で当たり前となってきました。私も最近ではDeepLabCutというプログラムを使っての解析を始めています。プログラミングはMatlabなどを通して数値解析に使っていたのですが、画像解析などはやったことがありませんでした。なので、これを機にすこし勉強してみようと思いました。 今日紹介しようと思う論文は、idtracker.ai: tracking all individuals in small or large collectives o

        • ゲノム編集で疼痛をやわらげる

          近年、いろいろな研究手法が開発されて、臨床応用を目指してトランスレーショナル研究が進められています。CRISPR/Cas9によるゲノム編集もその一つで、多くの研究分野で利用されていて、今ではCRISPR/Cas9を使いましたというだけでは、論文の加点材料にもならないのが現状です。 最近Science Translational Medicineに掲載された論文 "Long-lasting analgesia via targeted in situ repression o

        科学論文は「真実」を明らかにしているのか?

          ウイルスベクターのゲノム挿入

          お題は、新型コロナワクチンです。 前回の記事は前書きみたいなものなので、ここからいろいろと書き始めていこう、、、、って思っていたら、これが人生で初のブログなので、どんな風に書いた方がいいのかわからず、混乱しながらこの記事を書いています。個人的な出来事を書くのもリスクが高いので、最初は最近疑問に思っていることを書こうと思いました。 この記事を書いている時点(2021年3月)で、ニュースで話題になるのは、中国の不活性化ワクチン、ファイザーなどのmRNAワクチン、アストラゼネカ

          ウイルスベクターのゲノム挿入

          ブログを始めるきっかけ

          研究っておもしろいはずです。少なくとも小学生の私はそう思ったから、今の私がいます。私の研究は実験が中心なので、面白そうなことを考えても、技術的に実現不可能だったりラボの方針と合わなかったりして、頭のなかだけのアイディアとして泡と消えて無くなってしまう。そんな「研究のタネ」をどこかに残しておいたなら、いつか誰かの役に立たないかなって思う様になりました。 研究をやっていると勘違いしてしまいやすい罠なのですが、研究のアイディアって実はそれほど重要ではありません。以前、ラボのボスに

          ブログを始めるきっかけ