初めての緊急入院、手術(4)「最優先は、希望を抱き続けるために“今できること”」
「このまま良くならないかも」
リハビリ病院には、不安を抱え落ち込んでしまう患者さんもいる。
リハビリ病院の医師たちは基本、無責任に「絶対良くなる」とは言わない。治らない前提の話をされるから、なおさら落ち込んでしまう。
「どうしたら、そんなふうにポジティブでいられるのか」
「あなたのようにはなれない」
などと言われたこともあったけど、私だって落ち込みます。人間だもの。
でも敢えて落ち込まないように、希望を失わないようにしてきたのです。
だって、希望を失ったら人は生きていけないから。
今回は最終回。
入院中、良くなることだけを目指して、リハビリに励んできた精神論について。
前回はこちら↓
口パクは女性のほうが理解してくれる?
初めにいきなり余談。
喉にチューブで声が出せず、口パクしていた大学病院にいた頃。
ST(言語聴覚療法:Speech-Language-Hearing Therapy)の訓練士さんが話していたこと。
「これは私の持論で、正しいかわからないんだけど、口パクは男性より女性のほうが理解してくれると思うの」
口パク生活になって、「口パク上手ね~」と言われた。生まれて初めて言われたけれど、口の動きがわかりやすいそう。もちろんわかってもらえるように、わかりやすく動かしていたのだけれど。
長い言葉は伝えにくいから、どうしても伝えたいことだけ伝えていた。例えば「暑い」「寒い」「苦しい」「痛い」など。
ゆっくりと口を動かしても、何度伝えても伝わらないこともあった。結局「書いて!」って、筆談を求められることも。
さて、大学病院の訓練士さんの持論、「口パクは女性のほうが理解してくれる」は本当か? 口パクだけで2ヶ月半過ごした経験でお答えしましょう。
正解! 本当に、口パクは女性のほうが理解してくれます!
思うに、男と女の脳の違いなのではないかと。女性は見たものから連想して言葉にするのが得意。言語能力が高いんですね。逆に男性は言葉に置き換えるのが苦手。
「思ってることがあるなら言いなさいよ!」と言われても、女性のようにできないのが男性なんです。
「こんなにわかりやすい口パクなのに、伝わらないことがあるの?」と驚いていたのも、女性訓練士さんでした。
脳はだまされやすいから、ポジティブワードを言い聞かせる
前回書いたこと。
↑と書いたので、ちょ~簡単な恐怖心のなくし方を今回書きます。
恐怖心は危険から身を守るものだから、必要な恐怖心もある。
でも、リハビリ中は訓練士さんもついているため危険なことはない。だからリハビリ中の恐怖心は不要なものと考えた。
本当に、ちょ~簡単な方法。
結構人間は、思い込みで物事を決めつけてしまっている。
絶対正解なんてないのに、「××だ!」って思いこむと、それが正解になってしまう。つまり、脳はだまされやすい。
ならば、意識的にポジティブなことを自分の脳に思い込ませることができるのでは?
こうだと思うと、脳は勝手にその理由を探し始める。
例えば。
「歩行器で歩くの“怖い”」
なぜなら、
→転ぶかもしれないから
→怪我をするかもしれないから
→怪我をしたら、もっと動けなくなるから
リハビリ中は転ぶことはないのに、「怖い」と思うことで脳が勝手にネガティブな事態を想像して、ネガティブが大きく育っていく。
そこで考えた。
「怖い」と思っている脳にでも、ポジティブワードを言い聞かせたら、勝手にポジティブな世界を想像するようになるのでは?
例えば。
「歩行器で歩くの“楽しい”」
なぜなら、
→歩くのが好きだから
→もっと歩けるようになるためだから
→もっと歩けるようになったら、すっごく楽しいから
そうか! 試してみよう!
歩行器で歩きながら頭に浮かんでくる「怖い」を、「楽しい」で塗りつぶした。
具体的には、歩きながら「イチッ、ニッ」の心の中での掛け声を「楽しい」に変えた。「たの、しい」「たの、しい」
ぐらっときて「怖い!」って思いそうになったら、即「楽しい!」で打ち消した。
そしたら、ホント、不思議!
恐怖心が消えたんですよ! ホントに「楽しい」気持ちになったんです! 言葉が脳に与える力、大き過ぎる!
ねねね? めちゃ簡単でしょ?
実際、私は成功したから、ぜひ試してみて!
「楽しい」ではなくて、「うれしい」とか「幸せ」とかでもいいと思う。
ダメなのは「怖くない」というようなネガティブな言葉の否定。
「怖くない」と思いながら「怖」の言葉が強く脳にアピールされてしまうから。
これね、たぶんリハビリだけではなくて、日常生活でも活かせると思います。
脳はだまされやすい、ネガティブにもポジティブにも簡単に変わる、ならばポジティブワードを言い聞かせて楽しく暮らしましょー。
今の最優先は、より良い未来のために、今しかできないことをやること
先にも書きましたが、基本的にリハビリ病院の医師たちは無責任に「良くなる」とは言いません。
それどころか、良くならない最悪の話をしてくる。良くならなかったときの準備のためですね。
やっぱり落ち込みます。いえ、落ち込むというより「絶望」。影響力の強い医師の言葉ですし。
「良くなることを信じて」リハビリに励んでいるのに、良くならないなら頑張る意味もない。
リハビリには、大げさではなく、その後の人生がかかってますから。
で、主治医との面談の後、絶望した私は「このままではいけない」と、必死に気持ちを切り替えました。
リハビリ病院の回復期病棟は、入院期間が決まっています。最長5か月間。
限られた期間で、最大限に回復しないといけないんです。絶望している暇はない!
治るか治らないかなんて、医師であったって言いきれない。実際、奇蹟的な回復をしている患者さんはいるので。
治るか治らないかは不確定な未来。
ならば。
これ、twitterで書いたことなのですが。↓
今、折れずに100%以上の気合で頑張ることが、今の最優先。
その結果、もしも行った先に「良くならない」未来があったとしても、それはその時考えれば良くない? 先でもできることではなく、今しかできないことを優先するべし。
「もしも」のことを考えていても頑張れる方はいいですけれど、私はそれほどタフな精神力を持ってないですから、絶望を抱えながら最大限の気合では頑張れないかな…
桜を眺めながら優しさに包まれていた
入院中にコロナの問題が大きくなり、病院は身内ですら面会禁止。
まるで鎖国のようになった院内では、患者さん同士の結びつきが強くなった。
毎日、尽きることないおしゃべり。
「いってらっしゃい」
「ただいま~」
リハビリのため病室を出入りするたび声を掛け合った。
転院当初は「期日より早く退院する!」と意気込んでいた。
でも、転院から3か月が経った桜の花が咲くころには、気持ちが少し変わっていた。
「できて当たり前のことをできるようになるたび、訓練士さんや看護師さんに報告すると、あったかいリアクションが返ってくる。なんて優しい世界なんだろう。
思うように動かない体に寄り添ってもらえる、この優しい時間を思いっきり満喫しよう」
入院中は素直に、無邪気になれて、無防備なままでいられた気がする。
退院して、外の世界に戻ってきた。
リハビリに専念できた日々を懐かしく思うこともある。
あたたかい思い出が切ないものになってしまうのはおかしい。
あたたかい思い出は、今後の糧になっていくもののはずだ。
だから私は、入院時代のあったかくて優しい思い出を胸に、これからも楽しく生きていく。もちろん「歩く」ことを楽しみながら。
それが感謝の気持ちを表すことだってことも、わかっているから。
そういえば、桜が咲く病院の中庭にあった銅像の名前は「希望」だった。
了
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発症から退院までの記録は以上です。
経験が、なにかのお役に立てば幸いです。
そして退院後もリハビリは続いています。やっぱり現実は慌ただしく厳しい。
こんなそんなも、どこかで書けたら。では、また^^
追記:リハビリ日記、始めました!↓
ご覧いただき、ありがとうございます!楽しんでいただけたら、スキしてもらえると、テンション上がります♡