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真響のポイントが下がった~『RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴』(荻原規子)~

「レッドデータガール」シリーズの番外編にあたる短編3編と、表題作の中編を収めた1冊です。


↑kindle版


短編3編は、とても面白かったです。本編の最後に主人公である泉水子の彼氏になる深行の視点で書かれていて、当時の深行が考えていたことなどが分かり、本編にちょっと厚みをもたらす効果があったかと思います。


でも表題作の「氷の靴 ガラスの靴」は、若干なんだかなという感じでした。泉水子のルームメイトの真響の視点で書かれており、本編の後日談にあたるので、もちろん面白かったです。


ただ、本編でも見られていた、真響の弟2人と泉水子への執着がさらに増して、ちょっと常軌を逸していました。あと、最初はライバルというか敵役だったものの、本編の最後に一応仲間になったはずの一条への毛嫌いぶりも。確かに嫌味なキャラクターではありますが、結構まともなことも言っているのに、ここまで嫌わなくても、という感じでした。文武両道で美少女という設定の真響ですが、性格に深刻な問題がある気がしてきて、本編終了後にポイントが下がった感じです。


そして、これまた本編の時から思っていましたが、学校のシステムに対する作者の無理解ぶりが気になりました。いくら課外授業のスケート教室とはいえ、3クラスからなる1学年の8割が参加しているのに、引率の教員が2名というのはありえません。本編では、授業の一環である修学旅行を、自由参加のものとして描いていましたし。ファンタジーなんだから何でもありとはいえ、そういうところはきちんとしておかないと、現実味がなさ過ぎて、しらける思いです。「九月の転校生」における深行の担任の描写にも見られるとおり、作者は教員への悪意とまでは言えないまでも、軽視する思いを抱えているように感じました。


ただ、最後の最後に真響に変化の予兆が見られたことには、「おお」という思いでした。本編はもちろん、この作品の最後まで、真響がいっさい関心を見せなかったとある人物に、関心が向きはじめたことが語られているのです。弟2人と泉水子への執着が、良い意味で薄くなるのかもしれません。もう語られることはないであろう、彼女の今後の成長に期待が持てるという意味では、良い終わり方だったと言えます。


見出し画像は、「ハリー・ポッター」シリーズが大ブームだった当時に買ったチョコレートフロッグ。アメリカで買ってきたやつです。表題作で、チョコレートが登場するのですが、すぐに見つけられた手持ちのチョコレートの画像がこれだけだったもので(^-^;


↑文庫版



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