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第54回:バブル崩壊とはなんだったのか?

 1980 年代から1990 年にかけて発生した「バブル経済」。 まさに「Japan as No.1」と言われ、アメリカのGDP さえ抜くと言われたこの時代。 今回はなぜ「バブル経済」が起きたのか?そしてなぜ「日本経済」が「バブル崩壊後立ち直れないか?」をお話します。

 まずバブルの原因になったのは、1985 年のG5(日本・米国・英国・仏国・西独)で合意した「プラザ合意」。 当時の世界は、ハリウッド俳優上がりのロナルド・レーガンが前政権から引き継いだ高インフレ抑制政策として、厳しい金融引締めを実施していました。 金融を引き締めるということは、「お金」を借りにくくして「市場に流通するお金の量」を減らすということです。 そうすれば、お金が多すぎてお金の価値が下がる「インフレ」を抑制できるという考え方です。

 しかし、アメリカ市場は何から何まで極端なのが特徴で、当時の米ドル金利は20%にまで達してました。 当然そうなれば、世界中の投機マネーがアメリカに集中し「極端なドル高」を誘発し、アメリカの輸出産業が壊滅的なダメージを受けたのでした。 そこで、協調介入してドル高は抑制しようというのが狙いです。

 その結果、1 ドル=240 円前後で推移していた為替が円高に転じ、1 年後の1986 年には1 ドル=160 円前後まで上昇。日本では「円高不況」が生じました。 これを打開しようとした政府は「公共事業」を拡大し、日銀も内需拡大政策を実施しました。 また日銀は、急激な円高を避けるためにドルを買って円を売る市場介入を実施したのでした。 日銀が市場介入するということは、日銀がお金を刷って通貨供給量(マネーサプライ)を増やすという事です。 マネーサプライがあがるという事は1 円当たりの価値が下がる事を意味しており、結果として「円安」になるという狙いです。

 しかし、マネーサプライを急激に上げるとどうなるか?インフレが発生するのです。 これが今の日銀がやりたい事なのです。ただ為替相場には介入できないので「株式市場」に介入しているのです。 そしてその市場に急激にあふれたマネーが通貨、株式、不動産への投資に用いられ、 買い注文の殺到により株価や地価が高騰し「バブル経済」となったのです。 (なぜ、今の日本ではそうならないのか?ここら辺も調べると面白いです。結論としてはメガバンが悪いと思っています。

 さて日本は、市場に急激にあふれたお金で日本は一気に金持ちになり、ドル高是正の円高との相乗効果で世界中の資産を買いまくりました。 ではなぜ、バブル経済は破綻したのか?結論は単純で「日銀」が急に金融を引き締めたからですが、その背景を説明します。

 「バブル経済」が進むなかで、日本社会には「土地神話」と呼ばれる「これからも地価は上がり続ける」という誤った認識が広まっていきます(西武グループがこの戦略)。 そして各企業は本業への投資よりも、「財テク」と呼ばれるハイリスク・ハイリターンの資産運用や、投機的な土地の取引にのめり込むようになりました(日本の銀行がこれ)。 その結果、株価や地価の高騰に拍車がかかり、日経平均株価は1985年12 月の時点で1 万1 千円台だったところ、1989 年12 月には3 万8900 円に達しています。

 1989 年の『経済白書』には、地価の高騰について「戦後の歴史を振り返っても、最も大規模かつ深刻なもののひとつ」と記されるほどにまでなり、 投機的な資金の投入は過剰投資につながり、いつしか実体経済との乖離が後戻りできないほどになっていったのです。そして政府は、土地投機の抑制や金融引き締めを実施することを決意します。 つまり、1989 年日銀は公定歩合の引き上げ(金利の引き上げ)に踏み切りマネーサプライを減少させ、1990
年には大蔵省が「不動産融資総量規制」を実施したのです。

 これが大変まずかった。 なぜなら「土地神話」を信じていた日本のお金持ちは、「土地を担保」にして「お金」を「銀行」から調達していたからです。 この施策によって「土地の価格」は暴落します。土地の価値が下がれば、担保として借りられるお金の上限も減り、その差分を銀行に返さなければいけません。 するとお金持ちは、手持ちの株を大量に売って「お金」にしようと思うので株価は大暴落します。

 そうなると次は、資産を売り切ってもお金を返せない人が出ています。 そして銀行は、担保として「大幅に下落した」土地を手に入れることになります。 当然「銀行」はすぐに「土地を売ろう」としますが、「土地の価値」はどんどん落ちていきます。なぜなら「値段が下がる土地」を買う「好事家」はいないからです。 これにより土地は「売れず」、ドンドン値下がりし銀行は含み損を膨らませていきます。これが「不良債権」です。

 さて、その結果どうなったか? 企業の競争力は「試験研究費」等の投資に支えられることが多いですが、 「借金」をして「新技術」を開発して、大量に売るという「日本企業」の「強み」が一気に瓦解したのです。 なぜなら「銀行」は不良債権を大量に抱え、自分が生き残るので精いっぱいだったのです。 こうならないように、アメリカはリーマンショックの時に傷口が小さいうちに大量のお金を投資銀行につぎ込んだのです。日本は傷口が広がりきってからの公的資金投入でしたので、どうにもならなかった訳です。

 そして資金不足により、日本は「技術的優位」を失っていきます。 最近やたら「合併」を日本企業がしているのは、「試験研究費」を2つの会社で合わせて「開発費」を安くしようというものなのですが、 合併するからに
は、合併する前以上のマーケットシェアを奪わない限り「ジリ貧」になるのです。 そして、合併後はだいたい「シェア」を落とすことが多く、結果として「リストラ」をしないと経営が成り立たなくなる。というのが相場なので
す。

「リストラ」で一番簡単に効くのが「従業員のカット」か「給料を減らす」事と言われています。 そのような「企業」を救うために取られた政策が「小泉首相と竹中大臣」が進めた「派遣法」だと言われています。 この当時から「従業員」の給料を減らすことは、市場に回るお金を減らすことになり「お金の価値が上がる」(デフレ)を引き起こし、 (原材料の値段は変わらないので)安く商品を売らざる得なくなり、粗利が減り企業経営がますます苦しくなる(デフレスパイラル)になる。 と言われていました。

 では、今企業はどのような部分に活路を見出そうとしているのか? 大まかには下記2つです。

① 日本より安い労働力で粗利を上げる(ユニクロ等)
② 日本のマーケットは捨てて、粗利のでかい「海外」のマーケットに進出する。

 で、何が起こるかは簡単ですね。①で日本人の働く場所が減り(アメリカも同じような事がおきていたので、トランプが国内に工場を戻そうとしました)、②に関しては、日本から輸出するより現地で作ったほうが、コストが安いので日本人の働く場所が減ったのです。

 その後、日本に工場を戻すみたいな事をする企業が増えていますが、企業が儲けを出すためには「海外」と同じくらいの賃金にする必要があるので、 当然日本人の給料が下がり、デフレスパイラルが進行するのです。そしてその結果、

https://ecodb.net/ranking/bigmac_index.html

・中国企業(Huawei 等)が「母国より賃金が安い」日本に組み立て工場を立てる
・タイ並みの物価になった日本は「観光産業」がさかんになった
(←ショックでしょうけど、これはあるビックマック指数を見れば一目瞭然)

 というわけです。これが失われた30 年と言われている現象です。 技術的優位を失うということは、これだけ恐ろしい事だと分かってもらえるとありがたいです。

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