誰かが書いたような文章【掌編】
誰かが書いたような文章ですね。
「いえ、僕が書きました」
そういうことじゃなくて、何かのパクリみたいな文章だなと。
「いえ、僕が僕なりに書いたものです」
オリジナルの劣化版に過ぎないといいますか、、、。
「•••オリジナルってなんですか?」
端的に言うと、あなたには才能がないってことですね。残念ですけど。
「それでは、あなたが代わりに書いてくださいますか?」
ほら、やっぱり誰かに書いてもらうことしかできないんですね。恥ずかしくないんですか?
「そこまでいうなら、あなたの文章を読ませてくださいって言ってるんです」
・・・云々
*
「おい、さっきから独りで何ブツブツいってるんだ?」
友人Aが僕の肩を軽快に叩いた。
僕は驚いて振り返った。
「おお、びっくりした。ちょっとね、来たるべきアンチコメントに備えていたんだ」
友人Aはふふんっと笑った。
「なんだそれ。取らぬ狸の、なんちゃら丼ってやつだな」
なんちゃら丼のところが少しひっかかったが、僕は負けずに言ってやった。
「いや、そなえあれば種無しブドウってやつだ。」
しばしの沈黙の後、僕らは笑い合った。
平和ってこういうことをいうんだろう。
*
しかし、その後、僕にアンチコメントがやってくることはなかった。
それはつまり、幸か不幸か、取らぬ狸のなんちゃら丼だったわけだ。
それでも僕は、とりあえず書き続けている。
来たるべきアンチコメントが来ようが来まいが。
そう、そなえあれば種無しブドウってことだ。
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