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横鼠ゆりね
2021年3月7日 17:07
ふと人気を感じて目が覚めた。人気というより人の吐息を感じた。僕の低い鼻のすぐ前にはあざといような人懐っこいような切れ長の目があり、「これは現実ではない、ひとときの夢だよ」と語り掛けてくるようだった。それが数秒だったのか、ほんのコンマ何秒だったのか、視線のぶつかり合いに負けた僕が少し目を伏せたとき、少しひやっとする唇が斜め45度に交差して押し当てられた。そんなことは別に人生で初めてのことで
2021年3月7日 17:01
下賀茂神社から流れ出る小川は干上がり、その周りに広がる糺 (ただす) の森は蝉しぐれに沈みかけていた。僕と彼女はその蝉しぐれから逃れるように横道に逸れ下鴨本通りに出ると、彼女に連れられるまま何かの研究施設みたいな不思議な響きの名を冠した洋食屋に入った。学校の教室を大きくしたようなだだっ広い空間に疎らにテーブルが並んでおり、クーラーから出る湿った冷気と厨房から漂う優しい脂の香りが、熱で虚ろになり
2021年3月7日 16:57
下鴨神社から流れ出る小川は干上がり、その周りに広がる糺 (ただす) の森は蝉しぐれに沈みかけていた。僕と彼女はその蝉しぐれから逃れるように横道に逸れ下鴨本通りに出ると、彼女に連れられるがまま何かの研究施設みたいな不思議な響きの名を冠した洋食屋に入った。学校の教室を大きくしたようなだだっ広い空間に疎らにテーブルが並んでおり、クーラーから出る湿った冷気と厨房から漂う優しい脂の香りが、熱で虚ろになり