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32. roots②|1994 The Blue Devils|Marching Music Roots

諸見 賢

1|3つのRoots

マーチングに関してのRootsが3つあります。
① 1992 Blue Devils "Big ,Bad and Blue"|ハマる / 出逢い
② 1994 Blue Devils " My SpanishHeart"|Marching Music Roots
③ 1993 Star of Indiana "Medea's Dance of Vengeance"|Marching Visual Roots
本稿では、②について記します。

2|高校部室で聴いた衝撃

高校ではお昼に部室に集まって、全国大会やDCI Final などのビデオを観ながらお弁当を食べていました。
ある日、いつもとは違ったビデオが再生されました。
ユニフォームを着ていないんです。なにやら、円になってロングトーンをしていたり、バッテリーが四分音符を叩いています。その当時、珍しかった「ドラムコーのリハーサルビデオ」でした。
このビデオが、"1994 The Blue Devils" のリハーサルだったんです。
それはそれは強烈に刺さりました。
なかでも特に衝撃を受けたのは音でした。
当時のブラスキャプションヘッド "Gino Cipriani"(現 Boston Crusadersブラスキャプションヘッド)が出すハンドサインに合わせて次々にコードが変化していきます。
「え!? なんで音が変わるの?しかも綺麗だし」
「こんな音が世の中にあるんだ」
・「すごい!あんな音出したい!」と憧れていた音が
・「10代後半に聴いた"あの音"」が
今でも私の音づくりの根源となっています。

2|1998年

1996-1997年は "Phantom Regiment" でマーチしました。
1998-1999年は "The Blue Devils" でマーチしました。
実はBlueDevilsでマーチする気はあまりなかったんです。
きっかけは1997年の秋の終わり頃に観た「Inside the Blue Devils」でした。(一番最初に出たDrumCorpsチームのツアービデオだと思います)

高校時代に観た "あのリハーサルの世界" が画面の中にありました。これ以上の理由はありませんでした。

「最後にマーチするチームは "The Blue Devils" 」

数ヶ月後の1998年1月、アメリカ / カリフォルニアのConcordにいました。
初めてのリハーサルは雨の日だったと思います。
水曜日(だったか?)の夕方から始まるブラスリハーサル。
高校生の時に憧れ観たビデオの向こう側の世界で、Gieno のサインコードに合わせて初めてコードを吹く私がいました。

3|1994 Blue Devils "My SpanishHeart"

頭の頭の中に流れる音は、"10代後半の原体験" が元になっています。
その中でも、
 - 理想とする音
 - 理想とする音楽構成
 - 強烈な憧れ
 - 現在の自分を確認する指針
となっているショウがあります。
1994 Blue Devils "My SpanishHeart"」です。

その後のDCIにも大きな影響を与えたエポックメイクなショウです。

  1. ショウ全体の流れと演出を考え、練られた音楽構成

  2. オープニング展開の斬新さ

  3. ラテンビートとスパニッシュジャズのスパイシーなオープナー

  4. モーダルな音構成

  5. 美しい旋律と品の良いバラード展開

  6. クローザーの、ソプラノduo→ドラムブリッジ→ブロックコード→スモールアンサンブルと繋いで→ハイノートで更に一段高揚感を上げてプッシュ→一度落として→またラストのビックヒット、へと続く畳み掛ける展開の巧みさ

  7. リヤマーチで後方に広がりながら fffff 演奏の対比的なエンディング

  8. バッテリー、ピットまで含めた緻密なオーケストレーション

  9. ピットの譜面が凄い

 ピットの譜面が秀逸であることも、特筆すべき点だと思います。ちょっとした聞き流しそうなところにも様々なアクセサリーが入っています。隙がない。よく聴くと一拍だけ小物が入っている、なんてザラにあります。ぜひ、 一度精聴して観てください。ピットだけでお腹一杯になれます。
 また、ブラスのコードもいい。バッキングの入れ方、音構成はため息が出ます。響きにくい不協和音を、ちゃんとコードとして鳴らし切っちゃう。
 その他にも、このショウは一つ一つのシーンが短いことも特徴として挙げられます。どんどん音楽が変わっていくんです。いろんな曲が次々と展開されていくので、耳がずっと新しい音を探してしまうんですね。だからアッという間に聴けちゃう。 "気がつくとバラード現象" が起きるんです。
ショウアレンジ展開が聴きどころ / 見どころ満載で、今もなお多くの気づきと発見があります。

4|私の原体験

初めてアレンジをしたのは20歳でした。
ジャンルも曲調も違う曲を使っていましたが、何度も何度も何度も何度も "1994 The Blue Devils" をビデオを観ては脳裏に "音" を焼き付けていました。
その当時に焼き付けた"音"イメージが今でも残っていると感じています。
何度も何度も、ビデオを観ては聴き、頭の中で流しては聴き、を繰り返していくうちに頭の中に "音" が鳴るようになったのだと感じています。
この頃の没頭時間が原体験となっているのかもしれません。
私にとって "The Blue Devils" は、今でも教科書。

32. roots②|1994 The Blue Devils|Marching Music Roots


[諸見賢|Satoshi Moromi]
1996 – 1997 Phantom Regiment
1998 – 1999 The Blue Devils
1997 – 1998 DCI I&Eコンテスト1位|Solo Tuba
2004 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科卒業
同大学卒業演奏会出演
Tubaを上江洲安彦 安元弘行 荻野晋
ピアノを照屋充子
室内楽を後藤文夫 和声法を斎藤弘美 各氏に師事
一般社団法人日本マーチングバンド協会公認指導員
マーチング祭組織委員会 副会長
DCJ 公認審査員

[Drum Corps Fun:掲載記事]


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