marchan0046

浮かんだストーリーを描く予定です。文章は拙いと思うのですが、面白いと思っていただけるよ…

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浮かんだストーリーを描く予定です。文章は拙いと思うのですが、面白いと思っていただけるように頑張ります。

最近の記事

天満ナンパ物語 みなみ編②

 店に入ったものの、二人組が奥の席に案内されてしまい、荻野は一人であったため、手前のカウンター席に案内された。隣には韓国から観光に来た徴兵終わりの若者が座っていた。  女性の会計にタイミングを合わせ、荻野は二人組に声を掛けた。 「すいません、二人で楽しんでいるところ。同じ店で食事していたら二人の姿が目に止まりまして。よかったら、このあと一緒に呑みませんか」 片方は満更でもなさそうに笑い、他方は困っている様子であった。 「私はいいけど、どう?」 「まぁ、みなみがいいならいいよ…

    • 天満ナンパ物語 みなみ編①

       大学を卒業してはじめて、荻野は多くの独身者が言う「出会いがない」という言葉が理解できた。  平日は朝から晩まで黙々とパソコンに向かい、休み時間も誰かと会話をする訳でもなく携帯を触る。一時間の休憩とは短いものだ。荻野は自分の現在の生活に嫌気はさしていないがぼんやりとした不満はあった。なにか違う、と。  八月の三連休を目前にして、荻野は気分が上がっていた。なにか新しいことをしたい。荻野はスーツを脱ぎ、学生時代に好んで着ていた勝負服で家を出た。  天満駅から北上し、そのままブラ

      • 鏡の向こう③

         神戸駅で水風船が割れたような勢いで、電車からホームに人が流れ出た。同駅から再び乗り込んだ新快速の車両は、停車しない駅で待つ人々の顔が見えないほど、速く速く終点を目指していた。新大阪駅に到着したとき、すでに樹のシャツは汗でびっしょりだった。スーツ姿の大人たちが手や扇子で煽ぎながら四方に散らばっていった。  日常的に自由席でチケットを取っている樹にとって、指定席に乗る行為は非常に新鮮だった。自由席の方が圧倒的に便利だと常に思っていたからだ。自由席であればどの新幹線に乗るか選択可

        • 鏡の向こう②

           久しく実家には帰っていないな、と樹は思った。祖父母のいがみ合いを見ることも、引き籠もりの兄と顔を合わすことも避けたいと考えていたからこそ、年末年始もお盆も、里佳と過ごすことにしていたのだ。  新幹線の指定席は7時55分に新大阪駅を出発することになっている。JR新長田駅から徒歩10分ほどのアパートを出て新幹線の時間に間に合わせるには、遅くとも6時50分には出発しなくてはならない。しかし樹には決して乗り遅れることがない自信があった。朝の準備にかける時間が短いことを、毎日、得意げ

        天満ナンパ物語 みなみ編②

          鏡の向こう①

          「起きて。今日は早めに行動しないと、新幹線乗り遅れちゃうよ」  彼女の声で目覚めた樹は、首の関節を鳴らしながら枕元の時計を見た。午前5時47分。いつもの起床時間とさほど変わらないはずだが、身体の疲れは幾分にも残っているように感じる。 「ご飯食べよ」  女性にしては低く、落ち着いた声がする方を見ると、里佳は既に着替えを済ましていた。軽く身体を伸ばし、布団から熊のように立ち上がると樹はキッチンに向かった。袋からパンを二切れ取り出しトースターに放り込みフライパンをコンロに置き火をつ

          鏡の向こう①