養育費が存在しないベルギー

ベルギーは、共同親権の国である。

両親が別れてからも、子供には両親に会う権利が保証されている。

だからこそ、子供は父親と母親の家を行ったり来たりしながら生活し、その内訳で一般的なのは50%ずつだ。

つまり、子供は父親とも母親とも同じ時間だけ生活する事になる。

ベルギーでは、共働きの家庭が多いので、別れてからもフルタイムで働いているシングルファザー・マザーが多い。

両親は、子供が自分と一緒にいる時の生活費を払う。

なので、両親の給料にあまり差が無く、子供が両親と過ごす内訳が半々の場合は、養育費は存在しないのだ。

日本とベルギーの養育費という概念には、違いがあると思う。

日本の事はあまり知らないが、私の認識では、日本の養育費は「子供が生きる為に必要な全てのお金」を含んでいると思う。

なのでそこには、急な事態に対応出来る為の予備が含まれているような気がする。

一方ベルギーでは、養育費とは「日常的に必要なお金」の事を指す。

そこには食費・洋服代・風邪などの病院代などが含まれている。

なので、子供の習い事代や授業料、子供が大きい病気や怪我をした時の治療費などは養育費には含まれていない。

では、養育費に含まれていない費用の支払いは誰がするのか?

ベルギーには、養育費とは別に「特別支出費」のリストがある。

特別支出費とは、日常生活に必要ないが、たまに起きる(可能性がある)支出の事を指す。

上記した習い事代や授業料、大きな病気・怪我の治療費などが、この特別支出費に含まれる。

そして、この特別支出費用は、両親が50%ずつ負担しなければいけない。

この特別支出費にどの項目を含めるかも、ある程度のテンプレートがあるものの、細かい部分は両親で話し合って決めなければいけない。あるいは、話し合いがまとまらない場合は、両親の言い分を聞いて裁判官が決めるようになっている。

ただ、ここには大きな落とし穴があるのだ。

このリストに乗っているからと言って、自動的にもう片方の親に半分払ってもらえるという訳ではないのだ。

もう片方の親が同意して、初めて半分払ってもらえる事になる。

ベルギーは、つくづく離婚してからも両親が話し合わないといけないような環境作りがされていると思う。

こういう強固な仕組みがあるからこそ、夫婦は別れてからも末永く付き合っていかなければいけないのだ。

これは、両親ともに育児に積極的に関わらないといけないという点では、良い仕組みだと思う。

ただ、関係が拗れた両親にとっては、心労が増えるのだ。

私は子供達といる時間が元旦那よりもかなり多い為、養育費をもらっている。

ただ、ベルギーでは「養育費」と「特別支出費」という考え方があるからこそ、養育費は必要最低限しかもらえない。

私の場合は子供2人で2万8千円ほどだ。

娘の習い事については、お金を払いたくない元旦那とかなり揉めてきた。

そしてある時思ったのだ。

お金を払いたくない元旦那にお金を払わせる事を考えるより、自分の収入を増やして元旦那に頼らなくても娘に好きな習い事をさせてあげれる経済力を自分につけた方が早いのではないかと。

元旦那の気持ちや行動はコントロール出来ないけれど、自分の気持ちや行動はコントロール出来るのだ。

だとしたら、そこに集中した方が自分にとってもストレスにならないんじゃないかと。

幸い元旦那は、私が子供達と基本一緒に住んでいる事もあって、金銭的な問題が絡まなければ、子供達が私といる時にどんな習い事をしても何も言わない。

言い換えれば、金銭的な問題さえクリア出来れば、子供達に好きな習い事をさせてあげれるのだ。

そう考えるようになって、私は私の出来る事に集中しようと思えるようになった。

約3年に渡る元旦那との攻防戦によって、折り合いをつけるという事を学んだのだ。

元旦那の絶対譲れないところを聞いて、自分の譲れるところは譲れるようになってきたのだ。

こう考えれるようになったのは、共同親権の国であるベルギーで離婚したおかげだと思う。

妥協する事を学ばないと、永遠に衝突し続けて、毎回裁判に行かなければいけないのだ。

そうなれば、使わなくていいエネルギーを使い、使わなくていいお金を使う事になる。

それだけはどうしても避けたいのだ。

「出したものが返ってくる」と言うが、元旦那もそんな私の姿を見て、譲れるところは譲ってくれるようになってきたと思う。

だが、私たちの関係はまだまだ脆く、衝突してしまう事もまだある。

だけど、3年前の一切会話も出来なかった事に比べると、お互いにかなり成長したと思う。








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