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10年経った今、ようやくスタートラインに立つ福島の人々(1/2)


2020年12月4日、上野駅から8:05時発の「ひたち3号」に乗った。11:20時に予定通り双葉駅に到着。つい最近、2020年3月14日にやっと常磐線が全線再開になったと後から知る。何も考えず常磐線に乗って双葉駅に着くことを当たり前な事と勘違いしていた自分を恥ずかしく思い、不思議な気持ちを抱く。そもそも東北大震災後、「必ず福島に行って自分の目で現場を確かめ、助ける」と強い意思を持っていたはずなのに気づくと9年間一度も訪れていなかった。全線再開になるまでの年月をどれほど待ち望んでいた地元の人がいるのかと思うと自分、そして世間の無知には心が痛む。駅では既にバスが待機していてまず最初の訪問先へと出発する。移動中に所々の中間保管場所に収集されているまだ多くの黒いビッグバッグが目に留まる。

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11:30時、昼食を食べて東日本大震災・原子力災害伝承館を見学する前に少し時間があったので外に出る。海の方を見ると堤防しか見えない。町自体かなり復興が進んでいて新しく建てられた建物に人とお店が入り活気を戻し始めている雰囲気だった。

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12:30時、東日本大震災・原子力災害 伝承館の中で印象に残ったのはやはり小学生の手紙。そこから伝わるのは地元は原発のおかげで繁盛し、裕福な暮らしが可能になった事。震災で突然全部置いて故郷を離れなくてはならなかったこと、混乱、不安が伝わる。当時の震災のニュースのヘッドラインが蘇るが多くはもう思い出せなくなっていた。

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福島ロボットテストフィールド(源:https://www.fipo.or.jp/robot/overview

次に2020年3月にオープンした福島イノベーションコースト構想のプレゼンテーションを聴き、未来へと前向きな計画が着々と進んでいることを知る。既に243件のテストケースが実地された経歴を持つ。その一環である福島ロボットテストフィールドはディズニーランド程ある敷地でドローンを飛ばせる試験会場、救助フィールド、インフラ点検を試験できる町のモックアップが設置してある。もちろん消防訓練にも活用できる。

しかし課題もある。最先端技術は現地のニーズから程遠いため、地元とのギャップが生まれつつある。そのギャップを埋める為、イベントを行なったり、もっと親しみのある課題でメリットを説明し、連携を測っている。現在企業の訪問先に活用されていて会社のワークショップ、グループセミナーにも使われている。
プレゼンの後に質問、アイディアとして参加者から以下が挙げられた。イノベーションコーストに移住することはかなりハードルが高いがワーケーション、1週間滞在、1ヶ月体験滞在プログラムを組めばよりハードルを下げられるのでは。大学のキャンパスの設置もアイディアとして挙げられた。このような活動は現地の人のみでは到底不可能な為、外部の人がアクティブにどんどん紹介、つなげることが不可欠。

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15:00時、水素製造工場(FH2R)を見学。未来の新たなエネルギー源としての期待が高まっている。実際こちらで再生可能エネルギーから得た水素をオリンピック会場に運んで活用する予定である。太陽光パネル約7千枚、12ヘクタールの敷地で発電される電力の最大出力は20MWでこのような施設としては世界最大。研究費としてNEDOから200億円出ている。工場の外には8本の水素タンクが設置しており、すぐ隣にトレーラータンクがある。タンク1個でトレーラータンク2台満タンにできる。因みに1トレーラータンクは現在約40台の水素自動車を満タンにできるキャパである。水素技術はまだ成熟してない為コストが高く採算がまだ合わないが2032年までには効率を上げ、実用化を目指す。オーストリアでもEU巨大プロジェクトでH2FUTUREが運行している。こちらは電解キャパ世界最高順(技術SILYZER’s Proton Exchange Membrane electrolysis technology)6MWが試験運行中。

16:20時、大熊町の役場で町おこしをする為、記者をやめて大熊町の役場に就職した2名から話を聞く。今年3月ようやく限られた除染され避難解除区域に限り実際戻ってきた住民は約270名。震災前の住民登録を元に見る人口は11,505人で、現在は10,273人。データ上住民登録を大熊町に残している人は東京電力から出る賠償金など住民票を移すと全部失う恐れもあって残してあり、実際は大熊町には戻っておらず、他で暮らしている。色々課題が浮き彫りになる。役場の方々は正直日常の作業で手一杯。とても定期事業をこなし、更に町を発展することは困難。

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かなり内容の濃い一日が終わり無力感に襲われる。しかしまだ陽が当たる一日の最後に福島に来て一番きれいな光景が目に入り道のりは長いが諦めないでコツコツやる事をこなすよう促している気がする。(続きは第二部にて)

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