わかりますか
「場所がわからないんで…」
明石家さんまさんが司会の番組に東大生が出ていた。
その中のひとりが、自分がわからない話題でも、わかっているかのように会話する方法といったワザ(?)を得意げに話していた。(そう見えただけ)
相手の話を聴きながら情報を収集して、類推しながら会話に乗っかっていく
といったやり口だ。
自分が「知らない」ということを「知られる」のが恥ずかしいらしい。
自ら「東大生は物知り」という呪縛にかかっているようだ。
東大生って、大変だな。東大に行かなくてよかった。行けないけど。
東大はともかく、日常生活でわからないことは「わからない」って言った方がいいのでは?
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都内のターミナル駅からタクシーに乗った時のこと。
行き先を告げると、運転手さんが「すいません、場所がわからないんで」と言った。
行き先は、かれこれ35年前にできた施設。その界隈ならランドマーク的。しかも、駅からほぼ道なり。
場所がわからないと聞き、一瞬「え~!?」って、シートからお尻が浮きそうになった。(自分が知っていても、相手が知らないことあるよね)
信号に引っかからなければ1メーターで行ける距離。
まぁ、東京駅から皇居のどっかの門まで行くような感じだ。
運転手さんは女性。マスクをしているので目しか見えない。が、助手席のダッシュボードの乗務員証には顔写真が載っている。
素朴で真面目そうだ。小学校で「人を見かけで判断してはいません」と教わったけど、道がわからないことを「わかりません」と言うのは、きっと真面目な人に違いない。
運転手さんは「失礼します」と言って、こちら助手席側の自動窓を少々開けた。「密」回避オッケー。やっぱり真面目だ。
乗務員証の写真からすると、なんかスポーツをやっていたっぽくも見える。
「なんだろう?ソフトボールかなぁ… 安定感のあるピッチャーか?」などと邪推した。
「真面目そうだからキャッチャーのサインに首を振ることはなさそうだな。」
今のタクシーはカーナビが付いている。なので、行き先を打ち込む手もある。でも、「道がわからない」と言った。打ち込んでいるヒマがあったら、出発した方が客のためと考えたのかもしれない。顧客ファーストのいいピッチャーだ。
行き先をカーナビに打ち込まないので、私が案内することにした。案内といっても、まっすぐ。途中、大通りと合流する地点がある。合流地点手前、200メートルくらいのところで「左車線に入った方がいいですよ」と告げた。
やや渋滞気味。100メートルくらい進んだので「左ウィンカー出しておくといいですよ」と伝えた。「ありがとうございます」と、指示通りに左ウィンカーを出した。やはりキャッチャーのサイン通りに投げるタイプだな。
車は大通りに合流。やがて、右からの道とぶつかる交差点。信号は、青だったが、右側の歩行者用信号機が赤になったので、こちらの車両用信号機は黄色に。
車は、すぐに減速。自分だったら、行っちゃうところだが、真面目だ。
すると「すいません」と小声が聞こえた。ちょうど、メーターが上がりそうなのを気にしたのだろう。メーターは、信号で止まっている間に上がった。都内のタクシーは、初乗り420円。1.052kmからは237mごとに80円加算される。たいしたことない。
とはいえ、日本のタクシー料金は、世界的に見てずーっと高めだ。
数年前、業界で初めて値下げに踏み切り、都内初乗り410円になった。
それから10円上がって今は420円。
初乗り運賃を700円台から400円台に値下げしたのは、タクシーの「ちょい乗り」を促し、潜在顧客を掘り起こす狙いがあったのだが、実はもっと壮大なビジョンもあるらしい。
通信大手のKDDIは、タクシー会社らと共同で、今日から8月7日まで都内で「オンデマンド相乗り通勤タクシーサービス」の実証実験を行う。
社員2000人を対象に、アプリで希望の乗降場所、乗降時刻を指定して
配車予約する。相乗りすることで、痛勤の回避や、少人数移動での安全性、ユーザーの受容性などを検証する。
社員が新型コ ロナウイルスに感染した場合、出退勤の移動データから、濃厚接触者をチェックして感染拡大の防止に役立てるという。
将来、タクシーが自動運転になると、人を運ぶだけでなく、人の移動データを活用するツールになっていく。移動データそのものに価値があるので、希望的観測だが乗車料金がさらに下がるかもしれない。
今、タクシーの後部座席に座ると、目の前のセンサーが客の属性(性別・年齢)を識別して、タブレット画面にターゲティング広告を流してくる。
(見たくない場合は、オフにできる)
たまにダイエットとか、育毛といった類のCMが流れると、「ちょ、待てよ」と、ツッコミたくなる。「それ、合ってないから」
AIに教えてあげよう。「人を見かけで判断してはいけません」
将来、客が乗車した時のデータ価値が上がれば、もしかすると乗車料金は限りなく無料に近づくかもしれない。
ところで、私が乗車したタクシー。信号が青になって再び走り出した。
まもなく目的地。「次の信号、手前あたり、左車線、車とまっているんで、ハザード(ランプ)出していただいて、車の前に寄せてください」
私、終始、ナビ役。自動車教習所の先生って、こんな感じなんだろうなぁ。
「ありがとうございます、500円です」
あいにく500円玉がなかったので、1000円札を出した。
運転手さんは、釣り銭を渡す際、意外な動きを見せた。
左手の人差し指と親指で500円玉の端をつまんで差し出しながら、
上半身を反らした。
「え?え~っ!?」
その日、二度目、シートから尻が浮きそうになった。
ものすごくわかりやすく言うと、なんかばっちいものを渡すような仕草だ。
おそらく、500円玉がばっちいわけではなく、ソーシャルディスタンスを
とろうと、上半身だけのけ反ったのだろう。
さらに、機械から出てきたレシートも、端っこをつまんでカットし、
上半身を反らして、距離をとりながら渡してくれた。距離っつったって、2,30センチくらいのもの。
そ、そこまでする?
よく、シニアの運転手さんが上半身をかがめながら、釣り銭ケースを
開けて、そのままの体勢で渡してくることがある。密だ。
が、こちらは、すぐ隣で運転していたにもかかわらず、釣り銭を渡す時だけ、ソーシャルディスタンス。
これも新しい生活様式なのか… わたしには、わかりません。
沖縄出身のお笑い芸人さんが命名してくれたペンネーム/テレビ番組の企画構成5000本以上/日本脚本家連盟所属/あなたの経験・知見がパワーの源です