なぜTOEICを使うべきではないのか

ヴェネツィアやベルファストにてCOMASのプレゼンを行っていた際、私は現地にいたプロの英語教師たちに日本のビジネス英会話の現状について説明をした。その時に挙げたのは、英語レベルの評価をするために日本で一番よく使われているテスト方法。それは、選択肢問題とリスニングとリーディングであるということだった。それを聞いた時の教師たちの表情を今でも鮮明に覚えているが、明らかに困惑と恐怖でしかなかった。冗談かと思われてしまったようだが、私も正直そうであってもおかしくないと思える。だが、それが日本のビジネス英会話の現実。なぜこのようになってしまったのか、そして英語力の上達を目指す上で企業が直面する問題などについて私は考えるようになった。私の考えは次の通りだ:

適切な理由で間違ったテスト法を使用している

多くの企業は言語問題を解決するための専門家を雇う主導権がなかったり、財源がなかったりします。専門家の必要性を上司や人事部にアピールするためのデータなどがあればいいのだが、英語を深く理解することを必要としないTOEICを簡単に取り入れてしまっている。

TOEICは英語の知識や理解力を測るためには大変適したテストである。しかし、それだけではビジネス英語に要する力には値しない。全体的に言えることだが、英語が堪能な人間は高い点数を取ることができるが、高い点数を取った人間が必ずしも英語が堪能とは限らない。これは決して過言ではない。

また、ビジネスをするには英語の基本的な理解力だけでは足りない。複雑な意見をわかりやすく伝えたり、会議を円滑に進行したり、相手に配慮するような物の言い方をしたり、重要人物と交渉をしたり、そして相手企業と食事をしながらカジュアルな会話などをすることができなければならない。選択肢問題を正しく回答する能力があるだけでは、このような英語力があるかどうかという判断はほぼできない。昇格や人材雇用などをする上でTOEICを必須条件とするのは不合理である。

テストの点数に執着してしまい、本来の目標が損なわれてしまう

昇格条件としてTOEICを取り入れる企業も少なくないため、多くの英語トレーニングサービスはビジネス英語の上達よりも、テストの点数を上げることを目標としてしまっている。英語トレーニングサービスを提供する多くのいわゆる英語コーチング会社は、3ヶ月で80点上昇などとうたっているが、焦点が完全にずれている。本来必要な英語力を身につけることができたはずが、テストの点数を上げることに集中してしまい、それにかけた時間が全て無駄となってしまっている。目標は常に、仕事に必要な英語力を身につけることであるべきで、テストの内容もこれを評価できるものであるべきだ。

当たり前の現状に対抗するのは難しい

大学入試や就職活動など、日本社会の中でも多くの場面で当たり前のようにTOEICは取り入れられているため、別の手法を取り入れることはかなり大胆な動きとなる。** 求人広告などを見ると、ほとんどがTOEICを必須としている。社会全体が間違った手法を取り入れていても、その社会に馴染んでしまう方が楽なのは確かだ。主導権を握る人物もTOEICを受けてきた人間であるため、この間違ったシステムに織り込まれてしまっている。そのため、新しい手法を取り入れることが自社のビジネスにとって本当に必要なのかどうか、客観的に見ることは大変難しい事なのだ。

私は次のように提案をする:
 

1)集団から一歩踏み出る
他の誰よりも良い結果を生み出すためには、何か違った手法を取り入れないといけない。周りがやっているからと言って真似をする必要はない。何が目標なのかをじっくり考えるべきだ。
言語を始めとし、強いリーダーシップを誇っている会社の一例として挙げられるのがAutify。彼らのやり方から学べることは沢山ある。

2)自身の限界を越える?
ヨーロッパでは選択肢問題のテストはほとんど使用されていない。なぜなら言語力を評価するためには適していないからだ。より適した方法は他にも沢山あるが、例えばCEFRなどが挙げられる。英語力の弱さが問題となっているのは日本に限らないが、日本や韓国では未だにテストの点数に執着している。
他国の企業がどのようにして言葉の壁を乗り越えたのか、少なくともそこから学べることは数多くあると言える。

3)専門家と手を組む
人事部が言語問題を解決できないのであれば、解決できる者と手を組み、専門的な知識を身につけると良い。今までと同じ楽な手法を繰り返していると、今までと同じ平均的な結果を生み出すだけとなり、時間とお金の大きな無駄になってしまう。
私たちはグローバルな成功を目指す企業のために、筆記テストから離れ、英語をひとつのビジネス術として扱えるよう自信を付け、言葉の壁を少しずつ崩していくことができる。

* 読み書きを伴うTOEICも存在することは把握しているが、これもL&Rテストと比較すると範囲が狭い。

** 日本語学習者向けの日本語能力試験に関しても言えることだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?