ニースの手強い蚊と、フランスの蚊取りの成分を分析してみた。

セミの鳴き声は風情があってよいものですが、夏の虫と言えば、蚊もいます! 温暖なニースでは、5月から10月頃まで蚊が多く、網戸はありません。

ニースに出没する主な蚊は3種類います。

イエカ:いわゆる蚊で、茶色っぽく、全長1cmと大きめです。5月~10月頃の朝と夕方、夜に活動。夜電気を消して寝ようとすると、耳元にプ~ンとやって来ます。耳障りな割には刺されてもそれほどかゆくなく、15分程度でかゆみは治まります。

シマカ:全長5mm程度と小型の、黒と白の縞模様のヤブ蚊。フランスでは「moustique tigre」(タイガーモスキート)と呼ばれています。昼行性とされていますが、6月~9月頃の早朝や夕方、夜間に活動し、湿度が上がり蒸し暑くなると出没回数が増えます。小柄なのに何ヵ所も連続で刺し、刺されると猛烈にかゆく腫れます。デング熱を媒介する可能性のある、要注意な蚊です。温暖化と熱波の影響で、フランスを北上中。フランスでは半数以上の人がまだその存在を知らないそうです。フランスの天気予報サイトには、シマダラカ発生県マップなんていうものもあります。

小型のイエカ:普通のイエカより小型で、真夏には見かけません。暖房の効いた室内で真冬でも出没します。日本の地下鉄で冬でも見かけるチカイエカに似ています。

ニースでは、4月になると蚊取り製品がスーパーに並びます。日本では、部屋に1回プッシュするだけで蚊がいなくなる小型スプレーが主流ですが、フランスにはそんな素晴らしいものはありません。蚊取りはコンセントが必要な旧式のリキッドタイプか、さらに旧式のマットタイプ、昭和を思わせる蚊取り線香、虫に直接かけるキンチョールのような大型スプレーしかありません。

蚊取りリキッドの成分を分析してみました。

なんと、日本で20年ほど前に蚊取りリキッドの成分として使われていた「プラレトリン」をいまだに使っています! 濃度は1.2%です。

ラベンダーやジャスミン、オレンジの花、ユーカリなど香り付きの蚊取りリキッドもあり、その中で唯一、レモングラスの香り付きの蚊取りリキッドに「トランスフルトリン」が0.88%使われています。

「トランスフルトリン」はドイツのバイエル社が80年代に開発した殺虫成分で、プラレトリンより少ない分量でよく効き、日本では数年前まで殺虫剤の主流の成分でした。プラレトリンより割高です。

現在日本の蚊取り製品で主流の「メトフルトリン」使用の製品は、フランスにはありません。「メトフルトリン」は住友化学が開発した次世代殺虫成分で、ほんの少量で蚊に驚くほどよく効き、しかも希散性に優れ長時間効果があります。部屋にワンプッシュで24時間も効くってすごいですね。

メトフルトリンと、蚊がいなくなるスプレーがフランスに上陸するのはいつになるのやら。

夏にニースを旅行される方は、蚊がいなくなるスプレーを1本スーツケースに入れておくことをおすすめします。

フランス人の友人に殺虫成分の話をしたら、さすが日本とドイツ(ナチスの毒ガス実験)、と皮肉られました。虫と同居したくないので、技術はありがたく使わせていただきます。その友人は飼い猫に蚊を捕獲させ、その友人の友人は、クモに巣を張らせて天然蚊取りにしているそうです。エコ過ぎ。外で食事をして虫が寄ってきても平気だし、室内に虫がいても気にならないらしい、フランス人は野生です。


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