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「生まれ変わったら何になりたい?」

大掃除をしていたある日の午後、

クローゼットの奥から懐かしい絵を見つけた。


決して上手いとは言えない油絵。



まだ自分が小さい頃、

子どもなりに真剣に考えていた事がある。


それは、


生まれ変わったら何になりたい?


っていう何ともいえない質問の答え。


考えても考えても、しっくりくる答えが見つからなかった私は周りの人に聞いてみることにした。



幼なじみであるのんちゃんに聞いてみたら、

自信満々にこう言った。


「んーー、めっちゃかわいいチワワ!!!」


当時、のんちゃんは可愛らしいミルクティー色のチワワを1匹飼っていた。


だからだと思う。


その答えを聞いた私は思った、

「ずっとドッグフード食べるなんて、飽きそう...」

子どもながらなんて生意気な考えだったんだろうか。

そこら辺の犬に怒られそう。




そして小学校のクラスメイトのさやかちゃんに聞いた。


「ねぇねぇ、生まれ変わったら何になりたい?」


そしてさやかちゃんは答えた、

「鳩かな!空飛んでみたい!」


.......なるほど。

それも悪くない。


でも、

「雨の日も風の日暑い日も外にいるの嫌だな」

こんな甘ったれた考えを持つやつは鳩になる資格はない。



そして考えて考えて、考え抜いた。




考えながら何となく上を向いた時

あるものを見つけた。




.............あ、

これならなりたい。



毎日同じ物を食べたりしなくてもいいし、

暑い日も寒い日も外に居なくていい。

何も考えなくていい。



雲になりたい。



当時、私がいた小学校では誰かが仲間はずれになることは日常茶飯事。


みんなお互いにいかに嫌われないようにするか、

必死だったように思う。


リーダー格の子に媚びを売ったり、

昨日まで仲良かった子が、

放課後一緒に遊ばなかっただけで突然無視したり。




私はそんな学校生活が大嫌いだった。




こんなに疲れるくらいなら、

人間じゃない何かになりたい。




そんな私に唯一味方でいてくれたのは、

毎日空を見ると白くてふわふわ浮いてて

ゆっくり流れている雲だった。



誰かが泣いても笑っても、そんなの関係ない。


何からにも左右されない。



それから私はずっと生まれ変わったら

雲になりたいと思い続けていた。




だけど、ちょっと寂しく思うこともある。



喜怒哀楽の感情ぐらいは持ちたいな、と。


私は何も考えたくないとか言っといて、

こんなわがままどうしようもない。



人間てすごく面倒くさいと思う。



裏切られたり、傷付けたり

美しいものばかりではない。




そんなある日、

弟と犬の散歩をしている途中に聞いてみた。



「ねぇねぇ生まれ変わったら何なりたいとかある?

ちなみにあたしは雲になるって決めてる。」



すると彼は言った。




「うーん、それもいいと思う。

だけど、人間のほうが楽しくない?」




何かよく分からないけど、

弟に負けた気がした。




負けたというか、

凄い面白くて重大な秘密を教えてもらったような感覚になった。



確かに毎日毎日嫌なこともあるけど、

人間やめたくなる時もあるけど、



それも人間しか味わえないことだ。






のんちゃんのチワワだって、

公園にいる鳩だって、

感じることが出来ないもの。



良くも悪くも、

それが人間として生きるということなのかもしれない。




まだまだ雲になりたさはあるけど、





また人間として生まれ変わって、

お調子者で生意気な

君のお姉ちゃんになるのも悪くなさそうだ。









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