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産業装置マーケティングでポジショニングを考えてみる

前回の記事では、ターゲティングの話をしました。
今回は、その”ターゲット顧客にその商品をどう認知してもらうか”という
ポジショニングの話をします。

ここは重要なポイントなので、もう一度言います。
ポジショニングとは、
「ターゲット顧客にその商品をどう認知してもらうか」
これを徹底的に考えることです。

ポジショニングが決定したら、そのポジショニングに沿って、
どう売るかを考えます。
したがって、ポジショニングの検討が浅いと、
この後にいくら素晴らしい売り方を考えても、その効果は小さくなります。
なので、しっかりとポジショニングの考え方をマスターするのは重要です。

ポジショニングの例

ポジショニングの考え方の前に、まずは、ポジショニングの例を見て、
ポジショニングの成果をみていきましょう。

ポジショニングに成功している例は多数あります。
例えば、スターバックス。

多くのカフェが、コーヒーとサンドウィッチ、コーヒーとドーナツ、
コーヒーとパンケーキなどと食べ物を充実させていきお客さんを呼び込みました。

その中で、スターバックはあくまで、コーヒーの品質にこだわりました。
味もかおりも十分に満足できる品質です。

さらに、家でも会社でもない落ち着けるサードプレイスという場所
その環境づくりにもこだわりました。

この品質と場所ということに徹底的にこだわり、
落ち着ける空間にて、高品質のコーヒーが飲めるという、ポジションを獲得しています。

他には、サントリーのプレミアムモルツ。
プレミアムもポジショニングの一軸です。
サントリー黒ラベルや、アサヒスーパードライとは異なり、
贅沢なビールというポジションをプレミアムモルツはとっています。

このプレミアムの分野での競合はエビスビールです。
プレミアムモルツは、このエビスビールと2つ目の軸を変えることにより、
ポジションを獲得していきます。

まず、先行していたエビスビールですが、
このエビスビールは、
ハレとケの、ハレの日に飲む贅沢なビールというポジショニングでした。

就職祝い、誕生日、還暦祝い
などハレの日に、贅沢なエビスビールを飲もう
というイメージをcmなどでユーザーに印象付けました。

これに対して、プレミアムモルツは、
ケの日に飲む贅沢なビールというポジションをとりました。
日常でのちょっとしたご褒美のビールですね。

このようなエビスビールの独壇場だったプレミアムビール市場で、
プレミアムモルツは急激にシェアを拡大しました。

このブログは産業装置軸なので、産業装置の例も挙げます。
ヤマザキマザックの工作機械がわかりやすいポジションをとっています。
それはデザイン性です。

従来、ひたすらに精度を追求してきた工作機械。
±0.000…と、それって差別化?どっちも精度いいのに、なんで精度を競っているの?
というのが工作機械でした。

そこに、格好いい工作機械が登場しました。
それがヤマザキマザックの工作機械です。

それまで、工作機械といえば、THE機械、ごつごつした油っぽいイメージでした。
そこに、黒と白と、オレンジの3色で構成されたおしゃれな工作機械。

デザインという軸を入れることにより、ヤマザキマザックの工作機械は
そのポジションに君臨しました。

ヤマザキマザックの中の人に聞くと、
デザインがさきに決まり、そのあとに詳細設計だから、
エンジニアは大変らいしいです。

ポジショニング検討の手順

スターバックの品質と場所
プレミアムモルツのプレミアムと日常
ヤマザキマザックのデザイン

このようにポジショニングを検討するにあたり軸を決めます。
その軸を、最終的に商品の購入を決定づける要因につなげます。

このユーザーが多数ある商品の中から最終的に購入する決定打となる要因を
KBF(Key Buying Factor)といいます。

Step1
まず、KBFとなる軸の候補をリストアップします。
このとき、他社がとっていない独自の軸を探すことが重要なポイントです。

このとき、商品特性に縛られず、独自性やユーザー視点の観点から、
軸をリストアップします。

プレミアムモルツが味の濃さなどの商品特性でなく、
顧客体験に視点から軸を選んだようにです。

Step2
次に、ユーザーに強く訴求できる軸を2つに絞ります。
結局、ユーザーの頭に残るのは2つくらいです。

特長を2つに絞るということではありません。
あくまでユーザーに訴求する軸を2つに絞るということです。

スターバックスも、コーヒーの品質と場所の雰囲気以外にも、
コーヒーに詳しいパートナーや、おいしいフード、おしゃれなグッズもあります。
軸が品質と場所であり、その特長を減らしているわけではありません。

この軸を選定するポイントは次の3点です。
①    ユーザーに、他社商品より魅力的だと認識してもらえるもの
②    競合が簡単にまねできないもの
③    他の自社商品と被ったポジショニングにならないこと

この3点に注意して、2軸を選定して、
その商品のポジショニングを決定します。

業界順位によって異なるポジショニング戦略

その業界で1番手の企業をリーダー企業といいます。
2番3番手の企業をチャレンジャー企業といいます。

リーダー企業の場合と、チャレンジャー企業の場合とでは、
ポジショニング戦略が変わってきます。

まずチャレンジャー企業ですが、
チャレンジャー企業はリーダー企業を倒し、1位を狙っています。

なので、自社の強みを活かせて、リーダー企業の弱みを狙える軸を選びます。
そこで差別化させ、且つユーザーに共感される軸とします。
そして、多くの共感を得ることによって、ユーザーを増やして、1位を狙います。

逆にリーダー企業の場合は、チャレンジャー企業が独自の軸で勝負してきたら、
すぐさま、同じ軸で戦います。

知名度が高く、信頼度が高いリーダー企業は、同じ軸ならば、
チャレンジャー企業よりユーザーに選ばれる確率が高くなります。

したがって、チャレンジャー企業にとっては、
リーダーが模倣しにくい、ユニークな軸を選ぶことが重要です。

ポジショニングの検証

ここで注意すべき点は、
ユニークに焦点が当たりすぎて、ターゲット顧客のニーズから離れていかないことです。

あくまで目的は、
ターゲット顧客にその商品を買ってもらうことです。

そのためには、ターゲット顧客のニーズに合致した軸で、ターゲット顧客に認知してもらう
それが重要です。

もう一つ。
リーダー企業でチャレンジャー企業を模倣しているときでない限りは、
競合商品とはっきりと差別化できているか確認してください。

結局、それ同じことじゃない?
とならないように注意が必要です。

以上の手順でポジショニングが決まれば、
あとは、それに沿った形で販売手法を構築していきます。

産業装置が、民生品と違って面白い点のひとつに、
このポジショニングがはまることにより
同じものでも、50万の価値しかないと思う人もいれば、
200万でも安いと思う人がいるということです。

民生品の場合は、マニアックなものでない限り、
そのような事例は少ないと思います。

ですが、産業装置の場合は、ポジショニング戦略によって、
販売価格が大きく変わることが多いです。

楽しいですね。

一緒に考えていきましょう!

さあ、出航だ!

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