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毒舌寿司

私の家の近くには少し変わった寿司屋がある。

その寿司屋の大将は、酢飯が嫌いで酢の匂いも嫌いで、寿司を注文した客に片っぱしから毒づいていく。


『大将!まぐろ1貫!』

“へい、なんでこんなもんたのむかねぇ!”

『鰻4貫!』

“4!?こんなの4も食うなんて正気の沙汰じゃねえな”


こんな感じで訳もわからず毒を吐かれるのにも関わらず、ここの客足は絶えない。

なんでかって?

それはね、お魚を捌いている時・お寿司を握っている時・お客さんが食べている時の大将の口元はにやつきまくっているから。

酢飯が嫌いで酢の匂いも嫌いなくせに、お寿司とお魚とお客さんのことが大好きな大将。

それが全部出ちゃってる大将が可愛くて、

お寿司も美味しくて。

みんなまた会いに行きたくなっちゃうんだ。

人は一片だけではわからないところだらけ。

今日はどんなお魚があるかな?

“へい、今日もすっぺえすっぺえ味にしてるぜ。臭えからさっさと食いな!”

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