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中国の穀物生産が過去最高 「世界の食料安保に貢献」とアピール

中国の国家統計局は12月11日、2023年の穀物生産が前年比1.3%増の6億9541万トンと、過去最高になったと発表しました。政府の食料増産政策に後押しされ、耕作面積が拡大し、単位面積当たりの収量が増加したのが寄与しました。国家統計局の担当者は「穀物生産が過去最高になったことで、世界の穀物市場の安定と、世界の食料安全保障の確保に貢献した」とアピールしています。豊作となるのは20年連続で、2015年以降は6億5000万トン以上の高水準を維持しているということです。

中国は世界最大の農業生産国であると同時に、世界最大の消費国であり、世界最大の輸入国です。近年は生産の伸びを消費が大きく上回り、大豆やトウモロコシ、小麦などの輸入を急増させ、世界の穀物を爆買いしています。中国の生産が増えれば、その分だけ輸入を抑えられるため、日本のような輸入国にとっては朗報と言えるかもしれません。
 
北東部の洪水や北西部の干ばつなど、中国各地は2023年、異常気象に見舞われました。しかし、国家統計局の担当者によると、地方政府の努力によって農業生産への影響を抑えることができ、豊作につながりました。1ヘクタール当たりの収量は0.8%増の5.845トンとなり、主要作物の収量の増加や生産技術の向上も増産に寄与したということです。
 
2023年の耕作面積は0.5%増の1億1900万ヘクタールとなりました。中央政府は小麦とコメの最低買い入れ価格を引き上げたほか、トウモロコシや大豆農家への補助金を改善したことが奏功したということです。
 
特にトウモロコシが好調で、生産高は4.2%増の2億8884万トンと、過去最高になりました。耕作面積は2.7%増の4420万ヘクタールで、少なくとも2015年以降で最大ということです。ロイター通信は農業コンサルティング会社のアナリストの話として、新疆や内モンゴル、黒竜江省などで農地の再利用が進んだとの見方を伝えています。
 
一方、コメの生産高は0.9%減の2億0660万トンにとどまりました。北東部でコメと大豆を生産する農家では、コメを減らし、大豆を増やす動きが進んだようです。現在はコメの政府在庫は高い水準であるため、輸入に多くを頼る大豆生産を増やすよう促したとみられます。
 
この結果、大豆の生産面積は2.2%増の1050万ヘクタール、生産高は2.8%増の2084万トンとなりました。「退林還耕」などの増産政策がそれなりの効果を挙げているようです。しかし、米国やブラジルなどからの大豆輸入は年1億トン規模に達しており、国内自給にはほど遠い状況です。
 
小麦の生産高は0.8%減の1億3660万トンとなりました。一方で輸入は増え続けており、米農務省(USDA)によると、2023~24年度(7~6月)の中国の小麦輸入は1250万トンと、2年連続で世界最大の輸入国となる見通しです。
 
地域別に2023年の穀物生産をみると、中国の「穀物庫」と呼ばれる黒竜江省が7788万トンと、中国全体の11.2%を占め、11年連続でトップとなりました。耕作面積は1474万ヘクタールで、中国全体の12.4を占めました。夏に洪水に見舞われたものの、生産への影響は限定的だったということです。
 
一方、中国人民大学の専門家はサウスチャイナモーニングポストに対し、「生産地域や生産のポテンシャルは限界に近づいている」と述べた上で、中国が穀物生産をさらに増やすためには、今後数十年は栽培技術の向上に頼らざるを得ないとの見方を示しました。中国政府は2021年以降、こうした分野への投資を加速しており、今後も継続する必要があるということです。遺伝子組み換え(GM)やゲノム編集、スマート農業などへの期待が一段と高まりそうです。

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