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怖いのについ、聞いてしまう 「怪談」の不思議な魅力

あとでトイレに行けなくなると分かっているのに、つい怖い話を聞いてしまった......。
そんな経験がある方は結構いるんじゃないでしょうか。
そして心当たりがある方は、実に怪談の沼にハマる素質があります!

怪談バーの常連で、暇があれば怪談系YouTubeを視聴している怪談好きの私ですが、怪談を聞いた後「やっぱり聞くんじゃなかったー」と後悔することはしょっちゅう。
それでもこりずに、怪談を探して聞いてしまいます。

「怖い」というネガティブな感情を、わざわざ自分から体験しにいくのって不思議ですよね。でもそれは、ネガティブな要素を超えるポジティブな魅力が怪談にはあるからだと思います。

今回はそんな怪談の魅力を、怪談を卒論のテーマに設定し、数々の怪談好きにインタビューをしまくった私からお伝えしたいと思います。記事の終わりには、おすすめの怪談もお伝えしたいと思いますので、最後まで読んでもらえたら嬉しいです。

それでは、一緒に怪談の沼にハマりましょう!!

安全に恐怖の追体験ができる

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大学生の時、テスト前など忙しい時に限って、ネットで怪談を検索して時間を使ってしまうことがありました。

「忙しい時に限って、なぜ怪談を聞いてしまうんだ......!」

実は、こんな自分への怒りから、「人は何故、怪談を聞いてしまうのか」という卒論のテーマを設定しました。そして研究の一環で、ホラー作家や怪談師さんなどにインタビューをする中、怪談のおもしろい魅力に気がつきました。

怪談は、安全が保証されている中で恐怖を追体験することができるんです。

ふつう恐怖という感情は、自分の身が危険に脅かされているときに抱く感情です。
例えば、車に引かれそうになった時や、ヤンキーに因縁をつけられた時など。けれど、日常生活の中でそんな危険な目に遭うことはそうそうないですよね。

恐怖という感情は、他の喜怒哀楽に比べると珍しい感情なのですが、そうした感情を危険を伴わずに体験できるのが怪談というわけです。

怪談に限らず、ジェットコースターなどの絶叫マシーンも同じです。安全で手軽に恐怖を体験できるコンテンツが、エンターテイメントとして成立していることはよくあります。

私が、忙しいときに限って怪談を聞いてしまうのも、試験勉強のストレスを別の刺激を受けることで緩和しようとしていたからではないかと思います。

退屈を感じている時や、逆に忙しさにストレスを感じている時、怪談の刺激に頼ってみるのもいいかもしれません。

議論の余地がある

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世の中には色んなお話がありますよね。その中でも、怪談、とりわけ実話怪談の特徴には「オチがない」というものがあります。

以前、SNSで見つけた怪談好きが集まるオフ会に参加したことがあります。

参加者は15人ほどで、怪談収集家からホラー作家やお坊さんまで、さまざまなバックグラウンドをもった人たちがおり、とても面白い集まりでした。

その時のオフ会のテーマは百物語。区民センターの一室で、参加者は円になって座って、順番に怪談を話していきます。基本的に、話し手は自分が体験した話か、人から聞いた話をしていました。そして、毎回話が終わった後に、5分から10分ほどの考察タイムが設けられていました。

実話怪談だと、基本的に誰かが実際に体験した話になります。そうなると、話の中で起きたトラブルや不思議な出来事が、結局幽霊の仕業だったのか、それとも偶然の事故だったのかよくわからないままに終わることがほとんどです。

考察タイムでは、話の真相がなんだったのか、みんなで意見を出し合うのですが、私はこの時間がとても楽しくて記憶に残っています。

私が話した「ふわふわ」というタイトルの怪談も議論が白熱しました。
私の友人A子ちゃんが体験した話なのですが、かんたんに説明するとこんな感じの内容です。


“A子ちゃんは小学生の頃、心臓の病気で1ヶ月ほど入院していたことがありました。
小児病棟への入院だったため、同じ病室の子ども達も同い年くらいで、すぐに仲良くなれたそうです。ただ、1つ不思議なことがありました。

「A子ちゃんはふわふわがついていないね」

入院初日、隣のベットのSちゃんにそう言われたそうです。「ふわふわってなに?」と聞くと、どうやら病室の他の子たちには、人の肩の上にふわふわとした白い物体が乗っているのが見えているらしい。ふわふわは人によってついていたり、ついていなかったりするらしいのですが、とにかく病室の子たちみんなに見えていました。

最初はなにがなんやらだったA子ちゃんでしたが、2日、3日とその病室で過ごしていくうちに、病室の子たちの肩のあたりにふわふわした白い物体が見えるようになりました。

人によってふわふわの数は違って、看護士さんなど病室のメンバー以外にもふわふわがついているのが見えることもあったそう。ただ、同じ病室の子以外にはふわふわは見えていないようでした。結局、ふわふわの正体がなんなのか分からないまま退院することになり、退院後はふわふわを見ることも無くなくなったそうです。

退院してから数年経ったある日のこと。A子ちゃんは、お母さんから「同じ病室だったSちゃんって覚えてる?亡くなってしまったみたい。」と伝えられました。当時は知らなかったのですが、Sちゃんはかなり重い病気だったらしく、A子ちゃんが退院した後もずっと入院していたそうです。

その話を聞いて、Sちゃんには5つほどふわふわがついており、数が多かったことを思い出しました。思い返してみると、ふわふわの数が多い子に限って体調が悪化してしまい、他の病室に移るなんてこともありました。
いま考えると、ふわふわは体調の悪さ、はたまた寿命を表す何かだったのかもしれません。ただ、あの病室にいる時だけ、あの病室に入院している子どもだけ見えていたのは何故だろうか、ふわふわはなんだったのかと、今でも不思議な気持ちになるそうです。”


この話をした後、ふわふわは何を意味していたのだろうかと、色んな意見が飛び交いました。病状のレベルを示している説、寿命のカウントダウン説、集団催眠が働いていた説など。真相は分からないのですが、思いもよらぬ意見に新たな気づきを得るなんてこともありました。

「オチがない」というのはつまり議論の余地があるということです。

話が終わった後に他の人と意見交換して盛り上がったり、新たな気づきが得られたりと無限の可能性があります。そんな面白さも怪談ならではの魅力かもしれません。

コミュニケーションツールになる

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怪談はときに、コミュニケーションツールとして人と人とを繋ぐ役割を果たしてくれることがあります。

コロナになる前、新宿の歌舞伎町にある『怪談Barスリラーナイト』という、プロの怪談師さんの怪談が聞けるコンセプトバーによく行っていました。(気になる方は『怪談Barスリラーナイト』のHPからチェックしてみてください!)

1時間に1回、15分ほど怪談の時間があり、その他の時間は自由にお酒が飲めて、怪談師さんはもちろん、他のお客さんとの交流も楽しめるようなお店です。

お店には土地柄色んなお客さんがいて、普通のサラリーマンの方や、夜の街で働く煌びやかなお姉様方、堅気の雰囲気ではない強面のお兄さんなどその雰囲気はさまざま。初めてお店に行った時は怪談というより、他のお客さんにドキドキしていました。

しかし、いざ怪談が始まると、怪談や店内の仕掛けにみんなびっくりしっぱなし。強面のお兄さんは驚きすぎて椅子から転げ落ちていたし、お姉様方とは気づくとしょっちゅう顔を見合わせてキャッキャ騒いでいました。

怪談のあとは考察で盛り上がり、場の空気はとても和やかに。

最初は萎縮していた私も、他のお客さんと和気藹々と話せるようになり、その雰囲気が大変心地よかったため、気がつくと常連客になっていました。

ある怪談師さんは「怪談を聞いてる時は、みんな子どもに戻る」とおっしゃっていました。

確かに、怪談という恐怖の前ではどんなにやんちゃな大人の人でも無防備になって、好奇心と恐怖心でこちゃまぜになります。

それぞれの肩書きやバックグラウンドは関係なく、等しくみんな怖い。
こうした状況は、ある意味、子どもの頃のフラットな関係性に似ている気がします。

このように、どんな相手ともフラットな状態で楽しめるところも怪談の魅力の1つです。

未知の世界へ飛び込もう

「怖い」というのはネガティブな感情ですが、怪談にはそうしたネガティブな要素を超えてしまうほどのポジティブな魅力がたくさんあります。

単調な日常に退屈を感じてる時や、逆に忙しい日々に忙殺されて別の刺激が欲しい時、新しいコミュニティや未知の世界に踏み込みたい時、怪談を聞いてみてはどうでしょうか。

最後に、私のおすすめの怪談をご紹介したいと思います。

手相占い芸人の島田秀平さんのYoutubeチャンネル『島田秀平のお怪談巡り』で、タレントの松嶋初音さんがお話ししている回がイチオシです!

松嶋さんは、祖母がイタコで霊感家系であったこともあり、超絶不思議体験を沢山お持ちの方です。特にこの回の怪談は、とんでもない恐ろしさとどんでん返しのオチに、鳥肌が止まりませんでした......。


また、松嶋初音さん自身も『はつねちゃんねる』というYouTubeチャンネルで、自身の体験談を沢山お話しされています。「狐の嫁入りを見た」なんて話も聞けちゃいます。

興味がある方は、こちらも是非視聴してみてください。


みなさんが、怖くておもしろい怪談に出会えることを祈っております!

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