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ダウン症マオリの発達ストーリー第6話。地域社会でのふるまい方に戸惑いながら、自分を取りもどした時にやっとダウン症という憑き物がとれた。

*これは一般法人Maorisができあがるきっかけになった一人のダウン症をもつ少女と、アメリカ帰りの療育セラピストとの発達促進ストーリー第6話です。
*娘の発達を、アメリカで特別支援教育を学び、現地の療育の現場で経験をつんだ先生の考え方やテクニックなどを織り交ぜながらご紹介します。
*お母さま方には、その遊びを通してどういったスキルが習得できるのかといった読み方をしていただくことでより参考になるかと思います。

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2015年10月度の発達促進教室でのプログラムと娘の様子

1. 模倣遊び(セラピストの模倣をさせる)

① 粘土《こねる、指先で押す、手のひらで押す、セラピストの真似をする、『高い、低い』》
:粘土をもち、『高い』といって手を上げ、『低い』といって手を下げる。物の高低を、音と動作をつかった練習を通して理解させる。

② キッチン《野菜を切って、お皿にのせ、『いただきます』をしてから食べる》
:模倣は上手にできている。

③ 積み木《横につなげて電車づくり》
:積み木をつむ行為は上手にできているので、横に並べて『ぽっぽー』と言いながら電車を走らせる練習。


2. 微細運動
① 床でのプットイン(大・中・小・おはじき*難易度大)
:おはじき以外は右手でも左手でも入れられた。月の初旬ごろは、おはじきが入れられずに悔しくて機嫌が悪くなっていたが、最終週になると右手で5つ入れることができた。

② お絵描き《殴り書き、両手描き、スタンプ》
自ら『ブーブー』と音を出しながら左手で書く。筆箱のふたを『開けて、閉めて』の練習も一緒に行った。

3. 粗大運動
① ボール投げ
:セラピストと一緒に『せーの!』で、両手で投げることができた。『あー、いっちゃった』と声掛けの練習も同時に行った。

4. 身体づくり
① 体幹体操
② 体幹マッサージ
③ 足裏マッサージ
④ クロス運動
:今まで触られるのが嫌だったところを触らせてくれるようになったが、まだ好きではないので、遊んでいるときにさりげなく行っている。

5. パズル
① 動物のマッチングパズル
:しっかりと対象物を見ることがまだ難しく、見ることよりもピースを入れたい気持ちが強い。

6. 歌
① 頭、肩、ひざ、ポン
② 大きな栗の木の下で
③ きらきら星
少しずつ歌えるようになっている。歌だと、リラックスして発音できている言葉あり。

7. 言語
① 音声模倣(発音明瞭):やって、ま、やる、くるくる、あいよ、わんわん
②  〃  (〃不明瞭):あけて(「て」)、できた(「た」)、はいった(「た」)、たかい(「た」)、やりたい、ころころ、ちょうだい、やる、おしまい
セラピストが『〇〇と言ってみよう』と声をかけると嫌がるので、遊びの中や歌で発語を増やす方法をとっている。

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一か月で見せた変化

【模倣遊び編】
それまでの親指と人差し指に加えて、中指も上手に使えるようになってきた
・会話では出なかった音が遊びの中でだせるようになっている

【身体づくり編】
・身体に刺激をあたえるためにぜひ取り入れたいマッサージが好きではないので、もっとセラピー内でできるように、自宅で兄がマッサージを行うシーンを見せたり、兄と一緒にマッサージをしたり、本人が受け入れる工夫が必要。

今あの日々を振り返って(母の感想)

「我が子に障がいがあると、母はこんなにも忙しいのか」。ダウン症っ子のママ歴2年の私が当時よく思ったことです。
・身体が弱くしょっちゅう病院に行かなくてはならない
・ダウン症があるから故の通院もある(予防接種や遺伝科での診察、他の科での定期健診)
・療育関連
・ダウン症コミュニティ
等、定型発達の子どもを育てるよりも、「しなければならない」事が少し多い気がしました。こういった実質的な忙しさに加えて、精神的に余裕がなかったことも、さらに日々を忙しくしていたように思います

ようやく自分の中で、娘の障がいを受けれる事ができると、次に娘のために自分が「家庭と地域社会との懸け橋」になりたい(ならなくてはならない)という新たな目標に向かっていた時期でした。

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ふるまい方に戸惑う日々

自宅にこもっていては娘のためにならないことは承知していたものの、娘が違和感なく地域社会に溶け込む方法は(経験がなかったので)いつも手探り状態でした。
おもちゃ売り場に併設されている自由に遊ぶことができたコーナーで、相手に聞かれてもいないのに、そばにいたお母さんに「この子は発達が遅いので…」と意味もなく唐突にカミングアウトをしたという失敗もしたし、娘が他の子どもと関わろうとする先にいつも先回りをして子どもたち同士のふれあいの邪魔をするといった失敗(娘の障がいを披露しているようで嫌だった)もしました。自己嫌悪の回数に関しては、数えられません

ダウン症の母として、練習の日々

しかし、前回のストーリーで紹介をしたように、幸い私には息子の幼稚園でのコミュニティがありました。
娘にダウン症があることを伝え、そのままの娘を受け入れてもらうというプロセスを、私はママ友たちを相手に、数多く練習してきたように思います。

初めのころは「ダウン症がある娘」「ダウン症がある娘を産んだ私」を、相手に理解してもらうことに必死でした。しかし、そういった自分の態度が、相手との間に逆に「ぎこちなさ」をつくってしまっていたのでした。

自分のことばかりをやみくもに押し付けても、相手は困るだけ
こんな簡単な事を忘れてしまうくらい、精神的に余裕がなかったのだと思います。本当に相手に理解を求めるなら、まずは「自分という人間の中身」を伝えることが最重要事項なのに。ダウン症というのは「飾り」にすぎないからです。

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そしてようやくダウン症という憑き物から解放された

それに気づいてからは、もうダウン症という表面的なことに意識するのはやめました。憑き物が落ちたように、「ダウン症」からやっと解放されたとも言えます。それからは、育児や教育方針、人生観といった価値観の似たママ友があっという間に増えました。そしてそういった友達やその家族が、私の娘を拒否したことは一度もありません。かわいがったり、時には叱ったりと、娘を地域社会で一緒に育ててくれました
こういったペースが自分にできてからは、実質的な忙しさはあれど、精神的な余裕がうまれてやっと楽になりました

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参考情報として2015年度マオリの発達目標

【短期目標】
・身体のケアを目的とした体操やマッサージを少しずつ取り入れられるようになること
・遊びのバリエーションとその時間を増やすこと
・遊びを通して物の名前や機能を学ぶこと
・音声模倣(言語)が上手にできるようになること

【長期目標】
身体の変化、安定した歩行、原子反射の統合、言葉の表出向上

Maorisからのお知らせ

*Maoris組織の詳細やメンバーについてはHPをご覧ください。https://maoris.jp/
Maorisは発達促進を学ぶサークル活動(note)を行っています。セラピストを含む専門家からの情報発信、コメント欄を通してのセラピストとのコミュニケ―ション、そして定期的にセラピストとメンバーでのZOOMお茶会を開催しています。身体の機能を高めることで脳を育む方法を学びたい方、メンバー募集中です!ぜひお待ちしております。


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