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読書感想文『極北に駆ける』植村直己

日本が誇る冒険家、植村直己さん。五大陸最高峰に登頂した後、犬ぞりでの南極横断を目指します。この本は、そのための極北トレーニングの模様が描かれています。

舞台は’72~’73年のグリーンランド。言葉も分からず、滞在先のあてもないまま、物語はスタート。世界最北のエスキモー部落(現在はイヌイットと呼ぶのが一般的ですが、ここでは原文のまま表記しますね)、シオラパルクを拠点にした冒険が、まるで目に浮かぶようでした。

言葉を覚え、生肉の食文化やバケツでの用便に馴染んでいく様子が興味深かったです。ほかにも現地の人々が性に開放的だったり、とにかくお酒が大好きだったり。初めは驚いていた植村さんですが徐々に慣れて、しまいには日本人だと信じてもらえなくなるんですよ。現地の老夫婦と養子縁組までしちゃうんですから!

もちろん、犬ぞりでの冒険やアザラシ・オヒョウの漁もスケッチ入りで詳しく書かれています。アザラシを撃とうにもライフルの腕前は今ひとつだったり、犬ぞり用のムチの扱いに手こずったり。日本の飼い犬とは異なる、犬ぞり犬たちとの関係にも戸惑います。およそ「カッコ良さ」とは程遠い様子も、ユーモアたっぷりに綴ってあるんですよね。

本文中で一番印象的だったのは「冒険とは生きて帰ること」の一節。後に植村さんは北米大陸最高峰のマッキンリー(現在の正式名称はデナリ)で消息を絶ちます。でも、きっと無茶をした訳ではないんでしょうね。「無謀」の連続みたいに捉えられることもある植村さんの生涯が、私には愛おしく感じられました。

次に読むのは、戸井十月さんの「チェ・ゲバラの遥かな旅」。これまた強烈な個性を持った人物が主人公です。楽しんで読みますね!

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