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読書感想文『落日燃ゆ』城山三郎

『落日燃ゆ』(城山三郎)、読み終えました。

東京裁判で絞首刑を宣告された7人のうち、唯一の文官、広田弘毅が主人公の小説です。

福岡県の石屋のせがれが外交官になり、外相、総理大臣へと出世していく様子が描かれており…というと痛快なお話みたいでしょう。でも、当の広田は出世欲など全くなく、「物来順応」、「自ら計らわぬ」生き方を貫きます。

当時は今以上に家柄が重視されたはず。そんな中、いわゆるエリートとは違う広田がおのれの生き方を貫く様子は、読んでいて心奪われました。
恋愛結婚した妻とは、最後まで相思相愛だったそう。その一方で、息子を自死で亡くしたりと、辛い出来事も多かったようです。

生まれてくる時代は、誰も選べない。それでも、この人が平和な時代に生きていたら…と想像してしまいます。
戦争を回避することに全力を尽くした広田が戦犯として刑に処せられたのは、なんともやるせなく、大きな損失だと感じました。

著者の城山三郎さんは大好きな作家ですが、なにぶん内容が重い作品。読み終えるまでに時間がかかりました。
そういえば、城山さんも広田と同じで恋愛結婚をされたんでしたね。広田も公の場では大変なことが多かったでしょうが、家ではよき夫でよき父親だったのかな。一人暮らしの私には、ちょっと羨ましいです。

次に読むのは、植村直己さんの『極北に駆ける』。日本が誇る冒険家の著書です。楽しみだな。

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