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血と家から考えるアイドリッシュセブン④(ネタバレ有)

【アイナナ考察記事についてのお願い】
・「二次創作」としてお読みください。ストーリーの展開を保証するものではなく、公式やキャラクターを貶めようとするものではありません。
・アイナナに関するすべての情報を把握しているわけではありません。個人の妄想と願望を大いに含む、一解釈であることをご理解ください。


こちらは、アイドリッシュセブンを「血」と「家」という観点から考察する記事です。初めての方はからご覧下さい。

今回も自己満足の極みの読みにくい文章で、TRIGGERについて考える。今回はグループ外の人物との関係性から。少し「血」「家」というテーマから外れる……ようで外れないつもりである。
全マネージャーにとっての関心事であるのことに触れつつ、TRIGGERの対人能力を考えたい。


1.八乙女楽と紡―乙女ゲームとの決別

まず八乙女楽である。アニナナで誰よりも早く紡を名前呼びし、ゲーム内では口説いて振られまくり、3部では別れまで切り出す八乙女楽である。自己完結型恋愛のスペシャリストと呼びたい。
前回の記事で「圧倒的に女性耐性がない」と言ったあたりを、詳しく見ていきたい。

何よりも、発想が全て中学生レベルである。
私は彼をゲームのホーム画面にしているが、「女って強引な方が好きだろ」という勘違い発言を毎日してくる。1部序盤でも「女は甘いものが好きだろ」「(蕎麦屋)あんたなら八乙女楽でも落とせるだろ」「おまえ(七瀬陸)の女か?」と言うなど、枚挙に暇がない。
この思い込み、女性慣れしていない典型である。
(その延長線上に、「紡を父の愛人と勘違いする」もあると思う)

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普段から無意識でカッコイイ台詞を撒き散らす(笑)八乙女楽だが、対紡の場合は無意識ではないことが多いのがポイントである。
確かに好意を隠せない、素直さが根底にある。それを江戸っ子気質の直接話法といえば可愛げがあるが、楽の場合かなり拗らせていると言えるだろう。

そしてこの言動の裏には、「自分は(父と同じように)女性と上手く付き合えないのではないか、好かれないのではないか、優しく出来ないのではないか」という根深い不安が横たわっている
父母の離婚に対する疑念が原因であることは言うまでもないし、幼少期から思春期にかけての尖っていた時期に友人や恋人が出来なかった経験も影響していよう。
仕事絡みの言動では「アツい、まっすぐ」の範囲で収まっているものが、女性関係になるとどこか歪んでしまうのは、八乙女楽の「家」問題の影響なのである。

つまり、八乙女楽は、先輩アイドルとしても蕎麦屋としても、紡に接する時は「ものすごく頑張っている」状態である。彼にとって紡は父母の代替的存在でもあるので、愛されたくて必死なのだ。(詳細はの記事を参照されたい)

言い換えればそれは恋ではないし、八乙女楽から与える無償の愛でもない。物語は、八乙女楽に紡とのロマンスの可能性をあからさまに背負わせることで、それが決して実らない幻想であると、1部の始発から我々に示しているのである。

だからこそ私が違和感を覚えたのは、唐突に挿入される楽と紡の別れ話エピソードである。3部の「視線」回にそれはある。

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テレビ局の会議室で交わされる楽と紡の会話は、七瀬陸でなくても「えっ?」となる内容である。

この会話、八乙女楽は「紡と付き合ってる(寸前?)つもり」で話していて、紡は「他事務所のアイドルと親しくしすぎた、裏方としてあるまじき状況」を反省して話をしている。

何度も言うが、八乙女楽は紡を何度も口説いているものの、成功していない。
付き合っていないのだ。

例えラビチャでカップルっぽく会話していようとも、それは八乙女楽が「頑張って」やっていることであり、その恋は幻想以外の何物でもない
2人の口数が少ない場面なので誤解をうみやすいが、2人は最後までこうしてすれ違っている。八乙女楽は幻想の恋を、一人で始めて一人で終わらせている。

私はこれは公式が乙女ゲームとの決別を明示した、意味深い場面だと思っている。


紡は小鳥遊事務所社長令嬢、18歳の未成年である。正直言って、いくら弱小事務所とはいえ、18歳の新人をマネージャーにつけるのは、ビジネスとして有り得ない。確かに紡は有能だが、無理な設定であることは明らかである。

なぜ18歳にする必要があったのかといえば、アイナナ最年少の和泉一織との恋愛の可能性を残したかったからだろう。1歳差なら年下でも違和感がないということか。こういうところは、アイナナというゲームが当初、女子高生くらいのユーザー(あるいはその程度の精神年齢の女性ユーザー)をターゲットにしていたのが透けて見える部分である。

公式を批判するつもりは毛頭ないが、主人公はせめて20代後半くらいの設定、欲を言えば性別はユーザーが選べた方がよかった。確かに第一部はアイナナというアイドルをマネージャーが育成し、あわよくば恋愛に発展するのが主眼のゲームだったかもしれない。

しかし、第2部でRe:valeの確執や、第3部でのTRIGGERの葛藤を描く構想を練った時点で、「あ、これは恋愛も育成も無理だ。芸能界という戦場でたたかうアイドルの行く末を、時に共感し涙しハラハラしながら見守るゲームだ」とわかったはずである。
悪いが、ときめきだの恋愛だの言っている場合ではないのだ。彼らの葛藤や闇を理解しつつ、ビジネスとして彼らをしっかりサポートするには、社会人経験が最低でも5年は必要だ。年齢を自由に設定できるなら、私はマネージャーを40代の男性にしたと思うほどである。

そもそも、アイナナのメインストーリーの中で、紡視点で話を展開できるのはアイナナがメインのものに限られている。彼女はアイナナのマネージャーなのであり、Re:valeやTRIGGERの内部の問題に触れることはかなわない。にもかかわらず2部を通じて、Re:valeの確執をメインストーリーに組み込んだために、第一部では通用していた「紡目線で物語を俯瞰する」手法が限界に達していた。こんな状況下での、第三部「視線」回だったということを確認しておきたい。


さて、八乙女楽と紡の場面に話を戻そう。
この場面での紡の決意は、八乙女楽を対象に限ったものではない。
マネージャーという立場をわきまえず、アイドルと親しくしすぎたことを悔やみ、「私が男だったらよかったのに・・・」とまで言っている。これは非常に重要な発言である。

紡は12名(プラスzool)全員の「恋愛対象外」となる宣言をしたのである。

この発言により、アイナナというゲームは乙女ゲームの概念である「登場人物のうちの誰かと結ばれる」結末を放棄した。放棄することで、今後は遠慮なく紡の目を通さない、アイドルたちの物語を展開することができるのである。アイナナは乙女ゲームとしての可能性を捨て、より体育会系の、男たちの生きざまを描く方向に舵を切ったのである。英断だと思う。

つまり、八乙女楽は乙女ゲームとしてのアイナナの幕引き役だったのである。ずいぶんと荷が重かったかもしれないが、これで彼も恋愛という幻想から解き放たれ、TRIGGER復活に全力を尽くせるので、まあよかっただろう。

結果、野外ライブの前のこの台詞の共有によって、楽と紡の幻想の恋は、TRIGGERとファンとの間の終わらない恋へと転換された。
※2枚目画像のように、MOP会場では、それまで紡の専売特許だった「虹」がファン共通の認識として示される。

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八乙女楽はじめTRIGGERは、消えない虹としてファンの前に立ち続けるのである。楽紡推しのマネージャーの皆様からはご批判も多くあろうが、私はこのように考えている。あくまで一解釈である。


2.九条天と十龍之介と紡


八乙女楽のことでだいぶ長くなってしまった。TRIGGERの記事なのだから、龍と天についてもざっくりと触れておこう。彼らの場合は、八乙女楽ほど複雑ではない。


龍はいわゆる、人たらしの気質を備えている。楽と違って、ガードが甘いというか、ATフィールド的な壁がとても低いのだ。沖縄という土地柄か。
秘密を抱えたままで不安定だった時期の二階堂大和と誰よりも早くサシ飲みをしているのも龍だし、帰り道にばったり会った紡をやすやすと誘い食事をしている

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三部でツクモの標的にされるのも、この壁の低さが狙われたと考えて間違いないだろう。ゲーム内のラビチャでも、紡と一番自然な会話を交わしているのが龍である。女性は苦手と思っているようだが、一度知り合い認定をしてしまえば、男女の隔てなく付き合えるのが龍である。TRIGGERの中で一番女性とうまく交際できるのは、たぶん龍である(その過程でだまされたりするだろうが)

続いて九条天である。これまた一番難しい存在である。
おそらく恋愛どころではないというところだろうが、かといって色気がゼロというわけでもなさそうだ。アニナナの沖縄回で「僕のほうがエロいよ」とも発言しており、それなりに色恋にも興味があるのかもしれない。
ゲームのラビチャでは一貫して紡へのアタリは強く、七瀬陸がらみで時折茶目っ気を出してくれる程度なので、正直いってよくわからない、というのが本音である。第4部次第ではあるが、弟妹属性が付与される人物に対してデレる傾向にあるので、同じく九条の養子になっている理(あや:四葉環の妹)とは、頑張れば何かあるかもしれない。その前に九条をどうにかせねばならないので、遠い道のりだろう。

こんなところである。
本当はここからが本題、八乙女楽と二階堂大和のことを書きたかったのだが、長くなってしまたったため、次回にしたいと思う。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!


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