地域の中に専門職を!保育所等訪問支援事業1丁目1番地
2018.10.13(土)朝にこんなnewsをtwitterで拝見しました。
股関節の手術を受けて退院したばかりの6年女子児童にストレッチを行い、女児が左太ももの付け根を骨折する全治5カ月の重傷を負っていた(中略)
女児の両親によると、女児は身体障害があり、以前から車いすを利用し、リハビリを続けてきた。自立歩行に向けて股関節を固定していた器具を外す手術を受け、8月末に退院した。(中略)特別支援学級での体育の授業中に女児の筋肉をほぐそうとあぐらを組んだ状態で背中を押すストレッチをしたという。女児は痛みを訴え、病院で骨折していることが判明。現在も入院している。(中略)「退院直後という特段の配慮が必要な状況で、保護者に確認せずにストレッチをした」としている。両親は「長年のリハビリが水の泡になった。卒業前の大切な時期を病院で過ごすことになり、娘も悲しんでいる」と話した。
引用:Yahoo news 「長年のリハビリ水の泡」手術後の小6女児に教諭がストレッチ行い全治5カ月
手術は怖いものですし、傷跡も残るだろうから、手術をするまでの過程もいろいろとあった思われます。。
私はこのニュースを見たときに思ったのは、連携不足が問題だと思いました(このtweetしたときは、特別支援学級ではなく学校で起きたものと勘違いしていました。)
このニュースに対して様々なご意見があり、子どもさんや家族、関わる専門職にとって他人ごとではないニュースだと感じました。
療育(治療と教育)現場である学校生活
特別支援学校の場合、”授業中にストレッチを行う”ということは、よく見られます。
それは、車椅子などに長時間乗ることで変形を助長したり、身体が硬くなって体調を崩してしまう生徒さんもいるため、必ずストレッチを行う時間はあります。
そして、そのストレッチの方法などを知るために、学校の先生は夏休みなどの期間に、普段通われているリハビリの訓練見学をされます。
そこでリハビリの担当からストレッチの方法や注意事項などを教えてもらい、日々の授業に活かされることが多いです。
今回は、特別支援学級での出来事とのことで、特別支援学校とは違い医療職の参入障壁は非常に高いように感じます。特別支援学校ほど連携はできていないのかもしれません。
中には、実際に学校にリハビリの担当者が訪問し指導することもありますが、その訪問は事業所の方針によって異なります(学校訪問での指導は外来リハビリでの保険請求ができないため)。
今回の骨折の原因について、分かることは
”股関節の術後に過負荷のストレッチを行なったことによる骨折”
であるということです。
術後のリスクや、具体的なストレッチ方法などの情報共有が出来ておらず、誤った方法でストレッチをしてしまったことが、今回悲しい結果になってしまったんだと思います。。
障害を持っている子供は骨が折れやすい
骨粗鬆症と聞くと、高齢者に見られるものと思うかも知れませんが、障害をもつ子供にも多く見られます。
運動機能の高低や、抗てんかん薬の服用によって骨密度が下がるためと言われています。
介助時に身体の一部をぶつけたりして骨折する場合もあれば、自分の筋肉の緊張や不随意運動によって折れてしまうケースもあります。
そういった予備知識があるのとないのとでは、骨折のリスク管理は大きく変わってしまいます。
学校の授業でのストレッチは重要なこと
現在、私は卒後の方の外来リハビリを多く担当させていただいています。そして卒後のリハビリを希望される方が非常に多いです。
その理由は、
①卒後になると今まで通っていた外来リハビリの頻度が減ってしまう(私の地域では、週1回が月2回に減るケースが多い)
②毎日あった学校での活動やストレッチなどの時間がなくなってしまう
→結果、変形が強くなったり、身体機能が落ちて介護量が増えて大変という声に繋がっている。
それぐらい、学校での活動などは重要度が高く、家族も重要性は感じています。
正直、僕は前職では未就学児〜就学児さんを中心にリハをしていたこともあって、卒後のリハの重要性はあまり考えていなかったのが本当のところで。。
卒後のご家族の不安をよく聞くようになり、改めて学校の重要性とライフステージに合わせた支援が大事だと教えてくれました。
地域の中に専門職を!
現在、医療的ケア児の保育園入園の問題など、障害を持っていても地域の保育園や学校などへの参加に関して様々な議論がされていると思います。
その問題点は、保育や教育の専門職は配置されていても医療の専門職の配置がされていないことによる障害が大きいと思っています。
医療的ケアの専門職である看護師や、身体面や発達の専門職であるリハビリ職種などが十分に配置であれば、より生きやすさを感じることが出来るのではないでしょうか。
保育所等訪問支援事業
保育所等訪問支援は、平成 24 年 4 月 1 日施行の改正児童福祉法により創設された支援のことです。
①障害のある子どもも原則、一般施策の中で育つことが当たり前であること
②インクルージョンを進めるには障害のある子どもやその家族、受け入れる一般施策のスタッフや障害のない子どもたちが安心できるよう特性に応じた環境調整や関わり方、集団への働きかけなど専門的支援が必要であることが確認された。
その中において保育所等訪問支援は、インクルージョンを推進する「1丁目1番地」の重要な事業であり、全国的に普及させていく必要がある。
引用:厚生労働省
この支援事業によって、保育園、幼稚園、認定こども園、学校、放課後デイなどに専門職が訪問し、
①保育所等においては障害のある子どもの受入れを促進していくこと
②障害児通園施設等に通っていた子どもが円滑に保育所等に通えるようにすること
を目標としています。
また、
通所支援の課題に対応する未来志向型の事業です
障害のある子どもの発達支援は、これまで施設又は事業所という特別な場所において通所又は入所という形で提供されていました。しかし、
①発達上の課題が保育所等の集団場面で気づかれることが多いこと(家庭や個別対応では問題が見えにくく、通所支援に至らないことも多いこと)、
②通所支援で身につけたことが保育所等の集団場面に般化しにくく、不適応を起こすことも少なくないこと(保育所等での集団適応のための別の支援が必要であること)、
③通所支援を終え保育所等へ移行した後のフォローアップが不十分であること(フォローアップが制度上確保されていないこと)、
④障害特性の個別性からくる支援の困難さが保育所等の職員を疲弊させる一方で、保護者が保育所等に対してもどかしさを感じ、結果として保育所等と保護者の間にあつれきが生じてしまうことも少なくないこと(立場の違いによるニーズの違いがあること)
などの課題があるのも事実です。
(中略)保育所等訪問支援は、これらの課題への対応として期待できるものであり、インクルージョン推進の潮流に乗った未来志向型の事業として期待されています。
と、厚生労働省も現在の障害を持つ方々を取り巻く社会的問題点を把握しており、訪問支援事業を推奨しています。
しかしですね、
保育所等訪問支援を利用するには、保護者が保育所等訪問支援にかかる給付費支給申請を市町村に行う必要があります。つまり保護者が必要性を感じていることが、この支援を利用するための条件の一つとなります。(中略)
子どもが通っている保育所等の施設から申請を行うことはできませんので留意が必要です。
と、申請しないと受けられないんです!!
おそらく、この支援事業はそこまで認知されていないと思うんですよね。。
そして、利用頻度も月2回程度を想定した支援事業とのこと。
足りますかね??
保育所等訪問支援事業所数は年々増加しており858か所(平成28年10月現在)と、障害福祉サービスの中でもまだまだ少数なところが現状です。
参考:インクルーシブふくおか:福岡市の保育所等訪問支援、41億円中10万円だけ
福岡の現状は、インクルーシブふくおかさんのHPを見て頂けたらとわかりますが。。
今からもっとこの事業の必要性は上がってくると思われますので、もっと認知され、この事業の有効性や重要性が高まり、地域の中に医療職も配置されるようになればいいなと思います。
このマガジン:障害児ぱぱまま白書のメンバーであるきゅうじさんのフィンランドの障害児支援事情を報告したnoteでも、リハビリは学校や放課後デイなどに訪問するのが当たり前だそうです。
地域の中に専門職が配置されている方が、ご家族は安心して預けることができると思います。
ぜひ、保育所等訪問支援事業も「1丁目1番地」で終わる事なく、2丁目、3丁目と拡大していけるようにしたいですね。