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#27サスティナブル調査隊

今日は、日本を離れ海外の水資源事情をウオッチしていきます。

国土面積による水資源の問題

日本の高度な技術による浄水や下水処理の技術と資源の再利用を見てきましたが、経済も発展したアジアの国でも、排出した水の再利用や、そもそもの水資源の発掘に苦労している国があります。

その国は、シンガポールです。

東京23区よりやや大きい719.9㎢の国土面積に、人口564万人が暮らす多民族国家で、初代首相リー・クアンユーの一党独裁制度の下、高度な経済戦略を駆使して、世界でも類を見ない速度で今日の経済発展の礎を築きました。

そして観光地としてのシンガポールも大変魅力的で、口から水を吐くマーラに、セントーサ島での水を使った様々なショーや、マリーナ・ベイ・サンズの屋上にはプールがあったりと水が豊富にあふれているイメージがあるのではないでしょうか。

しかし、実はその国土の狭さゆえに資源、それも水資源の不足が深刻な問題なのです。

シンガポールの狭く平坦な国土は、保水能力に乏しく大きな河川もありません。

そこでシンガポールは、1962年に署名された隣国マレーシアとの協定「The Johor River Water Agreement of 1961-1962」に基づき、マレーシアから水の供給を受けています。

価格は1,000ガロン当たり0.03リンギットで、シンガポール はジョホール川から1日あたり2.5億ガロンの原水を引き出して使用することができます。

1日当たり約18万円と格安で提供されています。
※0.03リンギット(MYR)約0.72円で算出(2020年4月レート)

しかしマレーシアの財政問題の解決を目指すマハティール首相は水価格の引き上げをシンガポールに要求しています。

シンガポールは2061年まで協定は有効の一点張りであり、2061年も価格改定は認めない姿勢を示している。

シンガポールがその姿勢を頑なに変えないのも、必要となる水は、半数以上をマレーシアからの輸入に頼らざるを得ない状況だからです。

そして二国間関係に軋轢が生じるたび、水の供給停止や値上げを駆け引きに使われ、水資源をいかに確保するのかが大きな課題となっています。

シンガポールの「4 つの蛇口」

水資源を隣国マレーシアに依存してきたシンガポールは、自給率アップの柱として下記の「4 つの蛇口」という政策を掲げています。

・国内の貯水池
・輸入水
・逆浸透を利用した再生水「NEWater」
・海水淡水化

これらに達成の目標数値を掲げ自国の水資源を確保仕様との目論見です。

その中でも「NEWater」は国内の水需要の40%を賄っており、2060年までに55%に拡大することを目標としています。

NEWaterとは、下水を処理場で通常処理した後、さらに高度な浄化処理を施した再利用水です。

精密ろ過、逆浸透ろ過、紫外線殺菌という 処理を用いる事で、飲用可能な水準まで浄化します。
精密ろ過、逆浸透ろ過の技術においては、日本企業のが大きく貢献しています。

このNEWaterは主に工業用水として利用されています。
さらにその一部は、貯水池に戻され雨水等と混合された後、通常の浄化
処理を経て一般家庭にも供給
されています。

このように水資源の再利用や開発に力を注ぐシンガポール政府は、水処理関連事業を成長ビジネスの柱の1つに据え、官民あげ「ウォーター・ハブ」構想を推進しています。

しかし、これらの活動も安泰ではありません。

シンガポールは海水淡水化を4番目の水源と位置付け、2060年までに国内水需要の30%を海水淡水化によって賄えるようにすることをめざしています。

ですが足元では、シンガポールの水処理・電力会社ハイフラックスが電力事業の失敗などで資金不足に陥り、2018年6月、裁判所の破産保護下に入り、直近まで、支援の行先などその同行が不透明な状況でした。

このように水という資源は、化石燃料などと共に古くから各国との紛争の火種となっています。

このように自国で資源を確保・開発するという目標は安全保障にも大きく関わる問題です。

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しかし、自国では解決できない国々も多い中、日本の技術や知恵をいかに提供していくか、これも日本の重要なテーマだと思います。


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