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いよいよカンヌ2021 チタニウム部門ショートリスト通過20作 一挙紹介②

いよいよ21日から始まるカンヌライオンズ2021。開催に先がけて発表されているチタニウム部門ショートリスト通過作20作から、後半の10作をご紹介します。

Dove "Courage Is Beautiful"

長くDoveがブランドとして掲げている"Real Beauty"、美しさは見かけではなく何をするかに宿るというそのコンセプトを体現しているかのような、コロナ禍で闘う医療従事者を登場させたシリーズ。肌に刻まれたゴーグルの跡などが現場の過酷さを物語る写真は、実際に登場する人々が撮ったセルフィーで構成、クライアントへの提案から4日という短期間で制作、リリースされた。キャンペーンはカナダで開始され、世界16カ国へと拡がりを見せた。また、登場した人たちの勤務する医療施設近くのOOHにも重点的に掲示するなど、医療従事者を称え元気づけることも目的とした。


Google AI and Canadian Down Syndrome Society "Project Understood"

グーグルのボイスアシスタントは日々の生活に役立つ進化を遂げているが、その話し方や発音に特徴のあるダウン症の人たちにはうまく対応していない。ボイスアシスタント機能は、ダウン症の人たちが自立した生活を送ることにも強力な助けになる。そこで、カナダダウン症ソサエティーとグーグルが協力し、彼らにも対応するボイスアシスタントを開発。世界のダウン症の人たちにも声のサンプル提供を呼びかけることで、より精度の高いテクノロジーが誕生しようとしている。


Xbox "The Birth of Gaming Tourism"

ゲームを遊ぶものとしてだけでなく、バーチャルな世界の印象的な場所を観光するものとして新しく捉えたキャンペーン。Rough Guidesという有名な旅行本とタイアップし、186ページのゲームの名所の旅行ガイドを出版。バーチャル名所ツアーやゲーム機へのバンドルなど、コロナ禍の旅に行けないタイミングと相まって新たなゲームの楽しみ方を提供、トラフィックが+55%、エンゲージメントが+67%などの効果が見られた。

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Go Equal Movement "#GoEqual"

FIFA年間最優秀選手に6度も輝くブラジル人女子サッカー選手のマルタことMartha Vieira da Silvaは、その栄誉にも関わらず、男子選手の24分の1のスポンサーしか付いていない。多くの女子選手が抱えるこの賃金格差の問題を世界に訴えるため、彼女はシューズのスポンサーオファーを断り、自身のブランド"Go Equal"を付けることを宣言。ワールドカップにオリジナルロゴの入ったシューズで臨み、世界にアピールした。この運動は、平等を訴えるジェスチャーと共に拡がりを見せ、ブラジルナショナルチームは選手に男女平等の賃金を支払うことを宣言するなど進展を見せた。

Reddit "Superb Owl"

世界一高額と言われるスーパーボウルでのコマーシャル放映料、知名度を上げたいソーシャルサイトのReddit(日本で言う2chのようなもの)は潤沢な予算がなく、5秒間だけスポットを購入し、CMタイムをハックしたような映像を流した。この大胆な試みが話題を呼び、スーパーボウルCMの中で一番検索されたCMとなり、6億5千万のインプレッションを獲得。Super BowlをもじったSuperb Owl(一流のフクロウ)というスレッドへのアクセスは、1000%アップした。


City of Chicago "Boards of Change"

警官によるジョージ・フロイド暴行死事件に端を発し、ヒートアップしたBlack Lives Matter運動。黒人市民たちの選挙登録と投票率の低さに悩むシカゴ市は、社会を変えるのに有効なのは投票である、と街頭にベニア板でできた特設投票ブース型インスタレーション(デザインは、黒人ストリートアーティスト達に依頼)を設置、ブースにプリントされたQRコードを読み込むと、投票権の登録や次の選挙の情報などが届く仕組み。史上最高の登録者数とその後の選挙の投票率アップを実現した。

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Corona Beer "Corona the Match of Ages"

メキシコで長年サッカーリーグのスポンサーをしてきたCorona Beerは、コロナ禍で国内リーグが中止になった際、サッカーファン達にできることはということで、長年のライバルチームであるクラブアメリカとC.D.グアダラハラが対戦した70年分の試合映像を使って45日間かけ編集し、つなぎ合わせた"Match of Ages"という架空の試合を制作、プライムタイムに放送した。試合で映るフィールドの広告枠も売られ、売上はコロナで闘う人たちのために寄付された。

実際の90分間の試合映像はこちら。試合は、14対14の引き分けで終わった。


Reporters without Borders "The Uncensored Library"

ジャーナリストたちが各国政府から検閲を受け、世の中に出なかった記事を人気オンラインゲーム、マインクラフト上に図書館を作り閲覧できるようにした施策。世界各国の100以上の記事を掲載し、マインクラフトの主なユーザーである、これからの世界を担う若い世代に訴えかけた。

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Mastercard "True Name"

トランスジェンダーの人たちは、クレジットカードに記載されている名前を確認されるとき、容姿と一致しない自身の名前でトラブルになることが多々ある。銀行が認めない限り、本名以外をカードに記載することはできないが、マスターカードの働きかけによりいくつかの銀行が承認。Chosen name(自分でつけた名前)でカード名を記載することを実現した。

Bodyform "#wombpainstories"

"Blood Normal"、"Viva la Vulva"などで今まで語られてこなかったタブーを描いてきたBodyform/Libresseは、今回はpain(痛み)にフォーカス。女性の10人に1人が悩んでいると言われる子宮内膜症(endometriosis)や腺筋症(adenomyosis)など、おおっぴらに話したり相談できないが故に知識の得られなかったテーマを明るみに出しすことで、話題にしやすくしたり、悩み解消の一助となることが目的。話題を誘発するものとして、傷みを比喩的な言葉やアートで表現したPain Doctionaryやリサーチ結果をまとめたPain Report、ヴァーチャルの博物館Pain Museumなどを様々なコンテンツを制作、拡がりのあるキャンペーンを構築した。

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また、起点となる3分以上に及ぶ完成度の高いムービーは、実写と13人の女性アーティストのアニメーションによる傷みの表現をクロスオーバーさせたストーリーで、It's not that simple.(そんなに簡単な話じゃない)、あなたの話を聞かせて(#Wombstories)とメッセージ。エミー賞受賞の女性映画監督のニーシャ・ガナトラがディレクション。

以上、前編と合わせ20作のチタニウムショートリスト作を紹介しました。

グランプリの発表は、日本時間で25日(金)20時からの予定です。

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