7月のなすびは大汗をかくか?!
父親譲りのせいで、生まれつきの汗かきである。
それも半端がないのでいつの間にか夏が嫌いになった。
早朝に家を出て会社へ行くのだが、7月に入ってから最寄りのバス停までの僅か5分で、身体中からもう汗が吹き出る。バスに乗っても、その先の電車の中でも、エアコンが効いているのにもかかわらず、背中に吹き出した汗が流れてゆくのが判る。が、四半刻ほど経つと、今度は車内の冷気で冷たくなる。これがまた気持ち悪い。
ただ、暑いといってワイシャツだけで外出するのは自殺行為である。ちゃんと下着を着なければならない。それも木綿は駄目だ。滴るばかりに水分を吸った下着が、べっとりと身体にまとわりつくので、汗の流れも冷たくなった汗も不快この上ない。それに第一、木綿は乾きにくい。ポリエステル製の、それもメッシュのシャツを愛用している。
首から上は、タオル地のハンカチで数秒おきに拭う。それでも、額を、耳の裏側を、首筋を噴き出た汗がダラダラと流れる。まつ毛を伝ってメガネに落ちる事もある。不快極まるので、ハンカチで更に顔を拭く。結果、タオルは絞れるほどになる。つくづく、化粧をする人種でなくて良かったと胸をなでおろす。
テレビやラジオで外出を控えるようにと言っている。
通勤も”勤務”の一部であるサラリーマンにとっては、何を言っているんだという程度の警告だが、とにかく熱中症というものが怖いらしい。事実、ニュースで何人搬送されたとか、お亡くなりになったなどと報道している。何年か前、海外ニュースで「熱波」という表現が使われていたことを思い出す。
そこで外出の前後、またその途上でも水を飲む。実際に飲んでいるのは専ら緑茶なのだが、この歳で熱中症が怖いので、とにかく気をつけて水分を補給するようにしている。調子に乗って飲みすぎると、お腹でタプタプと音がして苦しくなる。
そして暫くすると、また汗をかく。
夏場に汗をかくことの不快な日常を綴ったが、改めてエアコンに当たりながら考えると、そう悪いことばかりでもない。
5分も動けば汗だくになるので、大した作業もしていないのに大仕事をこなしたように見えるらしい。仲間内で一人、手足を動かして熱心に取り組んでいるように思われて、「暑いのにご苦労さま」とか「無理しなさんな」といった、労いの言葉を掛けていただくことが多い。いの一番に、冷たい飲み物や食べ物を「どうぞ、どうぞ」と頂戴する事も少なくない。そういう役得はある。
が、しかし、夏場は辛い。
休日、実家でぼやくと、老母が庭先で夏野菜をもぎりながら笑う。だから、お前には身体を使う仕事は難しいと言ったのだという。若いうちは気にならないが、ほらその通り、歳を取るとしんどさが二倍になると。
袋いっぱいに詰められた野菜のあれこれの中に、艷やかに実ったナスビを見つけながら、なるほど「親の意見と茄子の花は千に一つの仇はない」ものだと感心した。
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