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七夕の思い出

昨夕は牽牛と織女が一年で一度出会うロマンチックな日だったのだが、残念なことに、今年の異常気象は九州地方を中心に猛烈な災害をもたらしている。こちらでも警報が出ているせいか、今朝の通勤電車は人影が少なかった。被災された皆さんにお見舞いを申し上げたい。
ただ東京での記録だそうだが、実は過去10年で七夕の夜が晴れたのは3夜のみだそうで、恋する二人にすれば可哀想な話ではある。

昔、奈良時代の行事について調査したことがある。七夕という行事は古代中国において、旧暦の7月7日に手芸の上達を織女に願った乞巧奠(きこうでん)が伝わったものらしい。七夕の行事といえば、相撲の原型である「相撲節会(すまいのせちえ)」が執り行われたのもこの日だ。
七夕の際、お供えとして皆に供されたのが、「索餅(さくべい、さくへい)」と呼ばれる食品(ないしは菓子)だ。米粉と小麦粉を練って縄状にしたもので、麦縄(むぎなわ)とも云われ、現在のそうめんのルーツとも考えられている。

調査当時、歴史博物館の運営管理を担当していたのだが、交通の便が悪いため、専らバスで来館する学習旅行者が対象で、気候に恵まれない夏冬の来館者激減に苦労した施設でもあった。そこで毎年知恵を出して誘客方策を考えるのだが、2015年夏のテーマは「七夕」だったと記憶している。
ヒントは、丁度その頃流行っていたAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」だった。職場や学校で彼女らの振り付けを真似て動画を作成しネットにアップすることが流行した頃である。「七夕と占い」でまとめると世間の注目を集めることができると取組んだ。

展示として仙台の七夕飾りを始め、七夕の歴史解説パネル、石占(いしうら)や辻占(つじうら)、橋占(はしうら)など、古代の占いの疑似体験コーナーなどを設けた。また、先ほどの「索餅」を福祉作業所の協力を得、手作り感満載の焼き菓子として再現した。そして万葉集から恋の歌を無作為に抽出してこれに封入し、「恋占索餅(こいうらさくべい)」と名付けた。舌とココロでも七夕を楽しんでもらおうという趣向だった。奈良時代版の「フォーチュンクッキー」の完成だ。

結構好評だった。
製作した2000個ほどは瞬く間にさばけた。来館者が入口で「恋占索餅」を受取り、封入歌に一喜一憂する姿が印象的だった。つくづく人間には先の見えない事を知りたいという欲求があるのだなと思った。
ただ無料配布としたため、予算限りとなって人気の割には継続できなかった。その代わり受け取った皆さんがご自身のSNS等で発信し、PRしてくれたので来館者増に繋げられ、スタッフと喜んだことを思い出す。

厄災が重なり陰鬱な気分で過ごす今年の七夕。天の川の水量も増して牽牛織女も逢瀬を楽しめなかったに違いない。どこかで再び「恋占索餅」でも再現できれば、話題として面白かろうにと思うが、施設はもう無く記録も残っていないと思う。残念だ。

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