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美術館のジャム

12月初旬のある日。
所用の帰りに時間があったので、長野県安曇野市の碌山(ろくざん)美術館に立ち寄りました。
日本の彫刻の先駆者である荻原碌山(本名は「守衛(もりえ)」)をはじめとして、碌山にゆかりのある芸術家たちの作品を収蔵・展示している美術館です。
美術館が建つ安曇野市穂高は、碌山の故郷でもあります。

遠くに雪の山並みが見えます

大規模なミュージアムや巡回展が多くの人の目を惹くなかで、こちらのようなこぢんまりとした美術館は、時間のながれがゆったりしていて、とても落ち着くなあと感じます。

碌山美術館はこれまでにも何度か訪ねていますが、この時季は初めて。
北アルプスの山々はすでに雪を戴き、その凜とした空気のなか、美術館のシンボル的存在である「碌山館」は、静かにたたずんでいました。

美術館のシンボル「碌山館」

今年、碌山美術館は、老朽化によってあちこち傷んでいた碌山館の修繕資金を集めるため、クラウドファンディングに挑戦したとのこと。最終的に目標を大きく上回る金額が寄せられ、無事、工事に取りかかることができたようです。

この日、碌山館は改修工事を終えたばかりで、建物のなかに入ることはできませんでした。
本来は館の内部に展示されている、「女」「デスペア」「北條虎吉像」などの碌山の彫刻作品は別棟に移されており、そちらで鑑賞することができました。

碌山美術館を訪ねたのは20年ぶりくらいだったと思います。
かぎられた時間でしたが、可能なかぎり作品に向き合い、碌山の生涯にあらためて思いをはせることができました。

建物の壁に刻まれた、碌山の盟友である彫刻家・戸張孤雁のことば。深い。


思いがけない“収穫”もありました。
敷地内の休憩スペースのテーブルに、「ご自由にどうぞ」と、たくさんの “かりん” の実が籠に入って置いてありました。
碌山館の手前にかりんの木があって、そこに実ったもののようです。
荷物になるのは承知のうえで、お言葉に甘えていくつか、いただいて帰りました。

冬の景色に、かりんのあざやかな黄色が映えます

帰宅してから、そのかりんの実を使ってジャムをつくりました。
ジャムづくりなんて初めてなので、ネットのレシピサイトと首っ引きで、なんとかジャムらしいものができました。

さて、肝心のお味は……?
パンにも合うし、ヨーグルトにまぜてもおいしい。大満足!

できあがったかりんジャムを瓶に詰めて保存
美術館のジャムを朝食にいただく贅沢

瓶には「碌山美術館のかりんジャム」とラベルを巻いて、毎日冷蔵庫を開けるたびに、美術館の風景を思い出しながらちょっとずついただきました。

食いしん坊なのであっという間にジャムはなくなってしまいましたが、旅の記憶がこんなふうな形になって、感激でした!



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