小説(SS) 「禁断の自白魔法」@毎週ショートショートnote #しゃべる画像
//お題 しゃべる画像
人の姿をしたその魔王は玉座から立ち上がると、椅子に後ろ手を縛られた勇者の前に歩み出た。
「あれほどの拷問を受けてなお、口を割らぬとはな。だが今日こそは、貴様らの仲間がいる場所を吐いてもらうぞ」
歯噛みする勇者を見下ろし、魔王が指を鳴らした。城内の奥にある扉から、フードを目深に被った老体が、背丈より高い杖をつきながら現れる。
「私めにお任せを。禁術であるこの魔法をかければ、どんな者でも秘密を喋り出すことでしょう」
「かねがね噂は聞いてる。早速やってみせよ」
老体は「は!」と短く返事をすると、長い杖を両手で持ち、身体の前で小さく振り下ろした。
詠唱が始まり、黄金色の魔法陣が杖の前方で光を放ちながら回り始める。
魔法を逃れようと、拘束された勇者が暴れ出す。しかしきつく縛られた縄は、その微力な反抗を物ともしない。
「くそっ、ぼくは絶対に喋らないぞ! 仲間を売るなんて、そんなことできるはずがない!」
なおも詠唱が続き、魔法陣がさらに光り輝き大きくなる中、勇者は泣き叫び、喚き散らした。椅子をがたがたと動かし、絶叫する。
その衝撃か、勇者のズボンから、異世界転移時に持ち込んだスマートフォンがこぼれ落ちる。
咄嗟に、勇者はそれを両足のつま先で挟み込むと、空中へ蹴り上げた。
同時、詠唱が終わり、魔法陣から一筋の光が放たれる。それは勇者めがけて伸び、そして――宙に舞い上がるスマートフォンの画面に直撃した。一帯がまばゆい光に包まれ、その場にいる者たちが目を伏せる。
スマートフォンの落ちる音とともに、光が消失した。
「い、いまのは!? なにをした、勇者!」
魔王が近寄り、スマートフォンを拾い上げる。その画面を見た魔王は一瞬、絶句した。
「……禁術を使いし魔術師よ。確認なのだが、先ほどの魔法は、あと何回使用できる?」
「いましがたの一回のみ……でございます。私めの体力を吸い尽くす、禁断の術でありますゆえ」
「……そうか」
魔王はそう言って、スマートフォンを見下ろした。その画面に映っていたのは、勇者の待受画像である、猫ちゃんの可愛らしい姿であった。
にゃ〜ん。
なんでも喋らせる禁断の魔法は、勇者に届くことなく、スマートフォンの画像に効いていたのだ。
にゃ〜ん。にゃ〜ん。
魔王が落胆する中、その後もしばらく、猫ちゃんの"しゃべる画像"から出た鳴き声が、天井の高い城の中でむなしく響くのであった。
〈了〉 992字
*
なんというか、いつになくしょうもないものを書いてしまったという実感があります。
今回は、しゃべる画像、ということで
最初から"不思議なしゃべる画像がある"のではなく、しゃべる画像が偶然にも出来上がってしまった! という過程を書くアプローチでやってみました。
また、人ではないものにしゃべらせた方が面白い気がしたので、猫にでもしゃべらせるか……なんて考えてたら、こうなった次第です。
たまには異世界モノもいいですね!
ではではまた!
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