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地元ではないどこかで

SNSを一切していない友達に、引っ越したことをどう伝えるか、悩んだ

わたしの世代は物心ついたときには携帯があって、中学に上がった時にはアメーバブログが流行り、高校に上がるとTwitter、大学はインスタと、進路が分岐した同級生とも「つながる」ことがとても簡単な時代に生きている。

わたしも当然のように、インスタのストーリーで引越し先の地域を伝えた。
数人の深い関係の人には住所をLINEで伝えたが、それ以外の人には引っ越ししたことすらもSNSに上げるネタでしかないのだ。

LINE以外のSNSをしていない友達。彼とは小学生の頃からの付き合いで、今思えば貴重な時代…連絡手段が口頭か家への電話しかない時代に関係を築いた人だった。お互いに、最古参の現在進行形な友人である。

だが、彼はノーマルで彼女がおり、わたしが女の子を好きになったことは知らない。2人で遊びに行くこともない。しかしながら、大学の方向が全く一緒、かつ通学の時間帯が被っていたため、大学4年間で偶然というには多すぎる頻度で彼とは顔を合わせていた。彼は6年制の大学のため、社会人になってからも夜に散歩したくなり彼を呼んだこともある。

いわゆる地元の男ともだち
そして今回の引越しにより、彼と自分をつなげていた土台である『家が近所』という条件がなくなった。
そして先にも述べたが、彼とわたしが2人で遊びに行くことはない。わたし達をつなげていたのは偶然の条件であり、さしたる苦労や時間をかけずとも会えることが前提の環境だった。

それでも、最古参の現在進行形な友人であることには違いない。引っ越したことを伝えたかったが、LINEで住所を送るのも、引っ越したと一言だけ伝えるのも何か違った。結局、急ぐことでもないかと保留としていた。

そして今日、兄姉の旅行土産である馬刺しを食べるために地元は一時帰宅し、今しかないと思い連絡を入れた。

20時にメッセージを送り、22時過ぎにバイトが終わった彼から返信が来て、23時に家の前で合流。彼はコートにゲロをぶっかけられたと言い、今の時期には頼りないスプリングコートを着ていた。
引越しと、近況の報告。住所は市の名前と地元からの行き方を口頭で伝える。どうやら彼は実家暮らしにも関わらず、セブンイレブンの惣菜にハマっているらしい。


彼とわたしは、地元ではないどこかで会えるだろうか。
複数人でわたしの家を訪れるアテがないわけではない。だがおそらく、しっくりは来ない。2人と複数人では、やはりどうしても同窓会の空気になってしまう。そして同窓会は少なからず緊張するものであり、2人と同じではないことは、彼もわかっている。

彼と恋人になりたいとは思っていない。だが、最古参の現在進行形な友人を降りるつもりもない。彼は連絡がきて嬉しかったと言った。わたしはその言葉を手の中で転がしながら、地元ではない場所で会う姿を思い浮かべた。

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