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こういうのを忘れちゃいけない

近所に、最高に可愛い焼菓子屋があります。

昔通っていた塾のすぐそばにできたそのお店を見つけたのは半年前くらいでしょうか、いつもと違うルートで散歩していた時だったと思います。
以前は何があったか覚えてないような場所に突然現れたかわいらしい外装のお店は、なんだか周りの風景から浮いていて、馴染めずに潰れちゃうんじゃないかなぁなんて思ったりしてました。

いつ潰れるかわからないから早いうちに食べておこう、というもっともらしい口実を作って、卒論をしに学校へ向かう前、店のドアを開きました。

外装と同じような雰囲気の内装と、生真面目な「いらっしゃいませ」の声で出迎えてくれた店員さん(のちに1人で切り盛りしている店長さんと知りました)。10種類もない焼き菓子が小さなカゴに入って待っています。
わたしは、散々迷って結局訳あり詰め合わせ品を買って店を出ました。

学校へ行き、卒論、休憩へ

食べ終わったあと、わたしは満足感とともに後悔したかもしれません。なぜなら、食べ終わった頃にはそのお店のことか好きになっていたからです。潰れてほしくないから、割引された商品ではなく正規の値段で買うべきだった、と。

市販の焼き菓子よりも大きく、厚みも舌との調和も、東京のオシャレな街で売っていてもおかしくないレベルだと思います。少し固めのビスケットは、ニヤニヤを抑えきれません。

そんな素敵な出会いから今現在までにわたしがそのお店へ行ったのは3回。おととい、コロナの影響でてんやわんやだったバイト先で受けたダメージを癒すために、閉店ギリギリ、なんなら少し過ぎてたかもしれませんが、店長さんは快く入れてくれました。
わたしがそのお店を好きなのは、もちろん1番は商品である焼き菓子が最高にときめくからということがありますが、店長さんの人柄もなんというか、ツボなんです。

真面目という言葉がこれ以上ないくらいピッタリ当てはまる店長さんは、22歳のわたしが言うのも生意気かもしれませんが、不器用な人なんだろうなと思います。ニッコリ愛想よく、柔らかい雰囲気で人当たりも抜群、という姿からは正反対かもしれません。緊張した口元と真っすぐ伸びた背筋、丁寧に、丁寧に述べられる接客用語。ちょっとした雑談をするのも憚られるようなオーラは、本職がパティシエールであることを如実に示していました。


頑張っている人は、やっぱり好感がもてます。職人で、不器用な店長さんが丁寧に作った焼き菓子を丁寧に売る。言葉を紡ぐことは苦手かもしれない店長さんが、人に伝えるために作った焼き菓子は、店長さんにとって言葉に代わるものかもしれません。

いつか店長さんと、たわいもない天気の話とかできたらいいなぁ。

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