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読んだ

昨日のお昼過ぎ、時間があった(あったのか?)から一乗寺はマヤルカ古書店に立ち寄り、澁澤龍彦の作品集を。ちょうど手持ち無沙汰であったから、早速帰りのバスから読み始めて、先ほど喫茶店にて読了。私自身、メルヘンチックな作風に触れる機会は少ないが、アンデルセンなり宮沢賢治なり、何かと好みの部類ではあるみたいだ。

本書には『撲滅の賦/エピクロスの肋骨/錬金術的コント』の三篇が収録されている。何れも珠玉たる逸品であるが、中でも『錬金術的一』には目を見張るものがある。物語られる幻想的悲劇は音楽を含めた"現場"の情景へと収斂され、添えられた逸話が、滲み出さんとする哀愁を優し気に引き締める。何たる作品であろうか...

ある子は自ら「書くため」に小説を読むと話していたが、私も同様の"用"を基準に読むのであれば、やはり『錬金術的一』をはじめとする作品群を読み漁るのであろう。

澁澤龍彦に引っ張られる形で、一緒に喫茶店へ連れ出したのが安部公房の『内なる辺境/都市への回路』だった。半年以上前に『S・カルマ氏の犯罪』を読んだときの、あの``浮遊感を求めて一一 なる動機だ。開いてみるとあら残念、論考でございやした。

なに、これがなかなか面白い。著者の「内なる辺境」への眼差しは極めて現代的であり、昨今の世界情勢や都市論にも関わってくる。作品解読はいささか性に合わないが、仮に同著者の作品を"読み解こう"とすることがあれば、大いに役立つであろう。それを抜きにしても、文句なしの読み応えだ。

そう、冒頭のマヤルカ古書店。澁澤龍彦を手に取った棚の一角には、稲垣足穂、安部公房、ボルヘス、バタイユなぞの書籍が密集していた。また漁りに行ってみるのも良いかも知れない。

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