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ヒンディー語テキストレビュー② ~文法編~

こんばんは。ヒンディー語オタクな岡本です。
前回記事からだいぶ間があいてしまいました。

その間にヒンディー語のオンライン講座をスタートさせたり、本業の学問の方で論文を書き始めたり、いろいろ動きがありましたが、その辺のことは改めて記事にしたいと思います。

前回はヒンディー語のテキストを使って自習する際に文法とフレーズのバランスが良いものをご紹介しました。(ちなみにあの記事を書いたあと、「ニューエクスプレスヒンディー語+」という最新版の白水社の語学書を買ったので、そのレビューもまた今度載せます)
今回の記事では、ヒンディー語の文法をさらに詳しくがっつり学びたい人向けのテキストをご紹介します。

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よろしくお付き合いください★


見やすく丁寧で調べやすい!練習問題さえあれば…
「ヒンディー語文法ハンドブック」(著:岡口典雄/岡口良子、白水社)

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この参考書は2015年に初版が発行されており、日本語で書かれた文法特化の参考書の中でいちばん新しいものだと思います。出版社も語学系マニアに安心と安全を与えてくれる白水社。著者のお一人である岡口典雄先生は、ヒンディー語よりもパンジャービー語研究者としての印象が強いですが(私がパンジャービー語学習者だからかもしれませんが…)、岡口良子先生のお名前は「旅の指さし会話帳・インド」の著者として知っている方も多いのではないでしょうか。

文字表+全23課(最後の課は動詞活用形の表などのまとめ)+索引、という構成になっています。特に素晴らしいのは例文の量です。CDエクスプレスやteach yourselfとは違ってスキットや実際の場面を想定した便利フレーズなどは載っていませんが、一つの文法項目について多いと5つ以上の例文が添えられています。例えば進行形について、現在進行形で5つ、過去進行形で4つ、未来進行形で3つ、不確定未来進行形で2つの例文、という感じです。

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また、巻末についている索引がとっても便利!目次自体にもその課で学習する内容が「2課 名詞 1. 男性名詞と女性名詞~」とわかりやすく書かれていますが、索引にはより細かく「ii語尾でない女性名詞 p.○」と書かれています。これによって、別のテキストを使って読解や作文などを学習している際にわからないことが出てきたら辞書のように調べて該当箇所のみを参照することができます。

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惜しむらくは練習問題がまったくないこと、でしょうか。例文の日本語訳をうまく隠して自分で練習問題にするという方法はありますが、できれば後に紹介する「基礎ヒンディー語」のようにヒンディー語文と日本語文を別ページに書いてくれれば練習問題になったのに…無念…という感じです。
また、例文が載ってはいるものの、文の要素を細かく分解して説明しているわけではないので、たとえば現在進行形の例文3の「मुझे देर हो रही है」は与格構文であり、देरが文法上の主語になっているため女性形の動詞活用がされている、ということに自力で気づく必要があります。独学している初学者の方などはもしかしたらこういう箇所でつまづいてしまうのではないでしょうか。CDエクスプレスなどの基礎的な本をやりこんだ後に、より文法を極めるという目的でこの本を使うのが良いかもしれません。


これを極めれば誰でもヒンディー語教師になれる?!読みにくいけど正統派な文法書
「基礎ヒンディー語」(著:古賀勝郎、大学書林)

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はい、もう表紙からして古めかしさが出てますね。こちら昭和61年に発行されている文法書です。私が持っているのは平成23年に刷られた4刷です。恐らく現在も新品が入手できるのではないでしょうか。著者は「大阪外国語大学の鬼」と言われた古賀勝郎先生。「ヒンディー語=日本語辞典」の編者として有名ですね。
ちなみに、私が東京外国語大学に入学した頃、大阪外国語大学の厳しい語科トップ3は「灼熱のアラビア」「極寒のロシア」「地獄のヒンディー」と言われていました。その時代のヒンディー語専攻で教鞭を取っていたのは(現在もお勤めの)高橋先生なのですが、その先生の師匠(指導教官)にあたる方が古賀先生です。お堅いイメージの大学書林から出ていることも相まって、表紙から威圧感が漂っているような気さえします。

さて、数年前に買ったは良いものの、わりと最近までほとんどページも開いていませんでした。威圧感のせいかな。でも去年あたりからヒンディー語をもう少し極めないとどうにもならない仕事を引き受けて取り組んでいたこともあり、初めて内容を読み込んでみたのです。その読みにくさ!!編集者は誰だ?!

本書には見出しがなく、()内の数字を振られたパラグラフがあるだけで、文法ごとに課が括られているわけでもありません。例えば、仮定形(本書では叙想法仮定完了形)の練習問題が(492)まで続いたあと、唐突に(493)から受動態の話が始まります。

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でも目次を見ればどこにどの文法の説明があるかわかる…わけでもなく。
例えば「複合動詞(1)」の後にしばらく別の文法項目を挟んでから「複合動詞(2)」とだけ書かれているので、「複合動詞のपढ़नाの意味を調べたい」など具体的に調べたくとも目的のページに辿りつくのは困難です。まじで編集者さんに何があったの。

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そんなわけで読みにくさは天下一品の文法書ですが、練習問題の量が引く勢いで多く、語彙も豊富なので、この本を通読して最後まで練習問題を解けば文法マスターになれる気がします。巻末にヒン日、日ヒンの辞書もついています。後にヒン日辞典を編纂された先生なので訳語の精度に関しては間違いないと思います。

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また、一つのトピックに関する説明がきめ細かいのも特徴です。発音方法のページだけで50ページ以上あります。
つい最近、オンラインでのヒンディー語教材を作っている最中に「そういえばचाहिएって何なのだろう」と疑問に思いました。ヒンディー語学習者なら必ず見たことある構文ですが、「मुझे यह चाहिए」という文章には動詞がないように見えますし、चाहिए「必要な」をचाहना「望む」の依頼形だと考えると訳がおかしくなります。
もともとは動詞とセットで使う助動詞だとする説明が「CDエクスプレス」「ヒンディー語文法ハンドブック」には載っていますが、名詞に対して形容詞的に「必要な」と使う時に動詞がなくていい説明が書いてありません。
これに対して、「基礎ヒンディー語」では「もともと動詞の活用形だったが今日では形容詞的に用いられる~」と、その単語の使用が時と共に変化したこと、もともとचाहिएが動詞だったから慣用的に現在も動詞が使われていないことが説明されていました。こういうちょっとした説明が嬉しいです。

というわけで、使いにくいという致命的な欠点はあるものの、説明内容に関しては群を抜いている参考書だと思います。練習問題の量・質ともに素晴らしいですし、これを極めればヒンディー語の教師にだってなれるのではないかと。ただし本当に使いにくい(何度も言う)のと、お値段6000円で高い部類の本です。お財布とよーく相談することをオススメします。

次回は街歩きに使えるフレーズ本

文法特化型の参考書が一冊家にあると、独学を進めていても心強いかなと思います。ですが、すぐに旅行で使えるフレーズなどを学ぶには向いてません。
そういうわけで次回は、フレーズや単語に特化した参考書をご紹介したいと思います!お楽しみに★

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