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月と六文銭・第十六章(20)

 武田は根本的な失陥を抱えていた。"好奇心が旺盛過ぎて"自分を危険な状況に陥れる関係にも平気で突入してしまうのだった。
 武田が銀座のホステス・喜美香きみかと会うのは彼女の日本人離れした超弩級ボディが好きだったからだろう。レースクィーンのようにある意味決まった型にはまっているスタイルではなく、胸や尻の大きさだけでなく、全身の脂肪の層が適度にあったからだとも言えた。

~充満激情~

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 武田は少しだけ秘密を共有してくれるホステスの喜美香と、彼女の出発前に羽田のホテルで逢瀬を楽しんでいた。
 彼女は国立大の法学部を出ている才媛で父親と喧嘩していなければ、今頃は父親がオーナーの法律事務所で弁護士として働いていたかもしれないとの噂だった。
 国立大の法学部なんて幾らでもあるから、司法試験に受かったかは分からない。しかし、彼女はいろいろなことをよく知っていたし、頭の回転が速いだけでなく、上品で食べるマナーが良いのが武田が気に入っていた点でもあった。
 そもそも、胸も尻も大きくグラマラスなボディの持ち主だったから興味を持ったのだが、それ以上に食事やお出かけ、そして夜の睦み事が楽しかったのだ。

 喜美香は部屋の窓から夜景を見ていたが、振り返って武田を挑発した。

「今夜は窓辺で後ろから私を攻めるの?
 正面から攻める?
 それとも駅弁に挑戦する?」
「腰を痛めるといけないから駅弁はやめておくよ」
「へぇ、武田さんが初めから白旗とは珍しい。
 今の私の話を聞いて、対抗心から私を駅弁でイかせようとするんじゃないかと思ったんだけど」
「誰に対抗するんですか?
 喜美香が気持ち良くなるのに必要なら、駅弁でも帆掛ほかけぶねでも茶臼ちゃうすでもやるけど、誰かに対抗する必要はないと思うな」
「ごめんなさい、別に誰かと比べていたわけじゃないのよ。
 ハッスルして、ガンガン突いてくれるかなぁ、なんて思っただけ」
「大丈夫だよ、ちゃんとガンガン突いて喜美香をイかせるから」
「うん、それは間違いない!
 さ、お風呂行きましょ!
 私、洗うね」
「ありがとう」

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 バスタブでは武田は喜美香の脚の間に座り、手に持ったスポンジで丁寧に首の後ろ、背中、肩、腕、腋、前に手を回して、胸と腹を洗われた。

「映画『プリティ・ウーマン』の入浴シーンのようだね」
「ふーん、プリティ・ウーマンね」

 あれっ、この映画が公開された1990年当時、喜美香は生まれたいただろうか?もちろん、後から観た可能性は十分にあったが。

「ねぇ、立って、こっちを向いて」

 武田は黙って立ち上がり、喜美香の方を向いた。
 喜美香は丁寧に女性用のスポンジで男根と陰嚢を洗い、石鹸を落とした後、中腰になって、彼の男根を咥えた。丁寧に口でそれが天を向くよう元気にした。

「うふ、これくらい元気だと今すぐに欲しくなっちゃうわ」
「じゃあ、着けてくれるかな?」
「いいですわよ。
 そうしたら、ここでしますか?
 あとで、窓辺で私に恥ずかしいことをさせないの?」
「それはそれで、あとでしよう!」
「本当にタフね。
 ちょっと待っててください」

 喜美香は軽くタオルで拭いてからバスルームを出て、鏡台に置いてあった武田の小物入れからコンドームを取ってきた。

 自分の部屋でする時、武田は枕の側にコンドームを用意してくれていたが、初めてホテルでした時に枕の側には何もなくて、鏡台の横に見慣れない小物入れが置いてあったのだ。

「これ、何?」
 と喜美香が聞いた時、武田は、
「プロテクション」
 と答えた。プロテクト=守る、防御する、までは類推できた喜美香だったが、
「防御、何?」
「防護膜、コンドーム」
「あぁ、なるほど、防護膜ね!」
 と蓋を開け、厚さ別にコンドームが3種類3個ずつ並んで入っているみて、几帳面過ぎないか?と思った。

 喜美香は包みを開けながらバスルームに戻ってきた。武田にキスをした後、ニンマリして、天を向いたままの武田の前に跪き、向きを確認した後、男根にそれを乗せ、口で被せていった。

 喜美香がホステスになる前に、しばらく風俗嬢をしていたのではないかと武田が疑ったのは、喜美香が口でコンドームを装着させるのに抵抗もなく、スムーズにできるからだった。
 もちろん、考え過ぎかもしれない。スムーズな流れを妨げないように身につけたスキルかもしれなかった。機嫌が悪くなるのを避けるため、わざわざそんなことを聞いたりはしないが、武田が以前気に入っていた風俗嬢が全く同じように口で装着する技を持っていたのだ。
 その子はプレイを中断させないよう途中から口の中にコンドームを入れておいて、シックス・ナインやフェラチオをする時にサッと口で被せて、合体への流れを途切れさせなかった。
 コンドームを装着する時に男性の気分が萎えたりしてしまうのを防ぐ技の一つと言えたが、本当に流れを壊さずにできる女性はなかなかいないのが実情だったし、なぜホステスの喜美香がこの技を持っているのが不思議だった。

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 口でコンドームを装着した後、喜美香はそのまま天然Fカップのバストに挟んで、所謂パイズリをしてくれた。
 武田はその行為の視覚的効果には賛成だったが、気持ちが良いという点では全く賛成できなかった。喜美香が胸に男根を挟み、それを両側から両手で押さえて、胸を上下させている姿が淫靡なのは確かだが、快感中枢への刺激はあまりなく、射精へと高まるようなことは全くなかった。
 武田は喜美香の顎の下に手を入れ、上を向かせた。

「ありがとう、すごく刺激的な光景だ」

 武田が満足してくれたのと思ったのか、喜美香満足そうだった。

「立ち上がって、後ろを向いてごらん」
「うふ、入れてくれるの?」
「入れますよ」

 喜美香がウンと頷くと胸を押さえていた両手を離し、スッと立ち上がって後ろを向き、壁に手をついた。

「大丈夫かな?」
「今、確かめる」

 武田は喜美香の尻を少し広げ、下から"敏感な真珠"、"大きい唇"、はみ出して蝶々の形をしている"中の唇"をなぞった後、入り口から指を侵入させた。スッと指が飲み込まれていったことは確かだし、指に彼女の潤いが絡みついた。

「うふん、大丈夫そうね!」
「十分だね」
「来て!」

 喜美香は壁につけた腕に頭をよせて、ぐっと尻を突き出した。
 武田は自分の男根の先端を喜美香の入り口に合わせ、若干角度を調整し、腰を斜め上にクイッと動かした。入り口をすんなり通過し、全体がドンドン中に入っていった。

「うぅ、大きいわ!
 なんか今日、大きくない?」

 大げさなのか、盛り上げるために言っているのか、本当にそう感じるのかは本人のみぞ知るだった。
 しかし、武田が腰を進めれば進めるほど、抵抗を感じたのは事実だ。喜美香は膣を広げられたから武田のものが大きいと感じたのかもしれない。
 武田は喜美香のヒップを掴み、後ろから抽送を続け、自分が一度達するまでに喜美香が二、三度達した。内腿が痙攣していたので、本当に達したのだろうと武田は思ったし、喜美香がうそをつく必要はなかった。

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「こんなに汗をかくと、髪を洗わないといけないわ。
 ごめんなさい、先に出て待ってくださる?」
「もちろん。
 少し仕事をしていてもいいかな?」
「ええ、もちろんです」

 喜美香は素早くシャワーで武田の全身の汗を流し、タオルで全身を素早く拭いた後、それを彼の腰に巻き付け、洗面エリアへと送り出した。その後はシャワーカーテンを閉め、自分の髪を洗い始めた。

「髪を乾かす時間を少しくださいね」
「ごゆっくり。
 十五分くらいかな?」
「え、そんなにはかからないですよ」
「そうか、じゃあ、喜美香が来たら終わりにするから」
「うん、なら、きちんと乾かしますネ」
「そうして」

 武田がカバンからパソコンと電卓を出して、何か計算をしてはパソコンに入力していた。
 運用投資部長というのは自分でもパソコンを打ったり、電卓で計算したりするんだ、とヘアドライヤーを当てる合間に聞こえる電卓を叩く音を聞きながら喜美香は思っていた。そんなことは部下とかアシスタントがやるものと自分の他の客を見ていると思ってしまうのだが、この武田という男、他人を信用せず、自分で全部やらないと気が済まないタイプなのだろうと改めて思った。

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