望月智充

アニメーション監督です。 「ここはグリーン・ウッド」「勇者指令ダグオン」「海がきこえる…

望月智充

アニメーション監督です。 「ここはグリーン・ウッド」「勇者指令ダグオン」「海がきこえる」「ふたつのスピカ」「絶対少年」「さらい屋五葉」「バッテリー」など。 北海道生まれ、埼玉県在住。 過去にアメブロに書いたものから、加筆訂正してこちらにまとめています。

最近の記事

正確を「期する」方がいい

 2012年8月29日の朝日新聞の見出しを見て、ついにこういう表現が出たか、と驚いた。 「日韓、同じ味を愛す私たち」  キムチが日本の生活の一部になっている等という記事だったが、ここで問題にしたいのは「愛す私たち」である。この場合、「愛する私たち」とするのが正しいと思う。  スティービー・ワンダーの曲『Sir Duke』は邦題『愛するデューク』だが、これが『愛すデューク』だったとしたらかなり違和感があるでしょう? デュークも私たちも名詞(体言)なので連体形の「愛する」でな

    • インタビュー記事は話し手の個性を表現すべきではないか

       時折アニメ雑誌などからインタビューを受けるわけである。  昔は、ライターが起こした原稿を事前にチェックするという風習はなくて、送られてきた雑誌を読んで初めて自分のインタビュー記事の内容を知ることができた(担当者がアバウトだと雑誌を送ってこないこともしばしばあって、催促の電話をかけたことも一度や二度ではない)。  いざ記事を見て、「こんな事言ってないぞ」とか「おれ絶対こんな言葉使ってない」とかがっくりきて、けれども何となく諦めてしまうような場だったのだ、インタビューというも

      • 「勇者指令ダグオン」の頃

        「勇者指令ダグオン」の制作に参加してからちょうど25年になったので、そのことに驚きつつ、あれを作った頃の話を少しばかりしてみたいと思います。とりとめもなく。                                    勇者シリーズは毎年、2月から放送を開始して翌年の1月まで、というサイクルで続いていました。その理由はタカラのおもちゃ販売計画にある。放送開始からゴールデンウィーク・夏休みなどを経て、クリスマス商戦と共にストーリーもクライマックスを迎えるというタイム

        • 死ぬのが怖くなくなる本

           人間が「死ぬこと」を恐れるというのは、遥かな昔からそうだっただろう。  だからその恐れから逃れようとして例えば宗教が生まれ、天国や地獄や生まれ変わりや、そういう概念を編み出してきたのだろう。埋葬や墓にも特別な価値を見出しても来たのだろう。丹波哲郎は極楽のような霊界を提示していたが、死への恐怖心がきっと人一倍強かったのだろう。  手塚治虫の『火の鳥』でも、不老不死を求めるのは富や権力を手にした人間が多い。普通に考えるなら、富や権力で現世を楽しんだのなら心置きなく死ねばいいの

        正確を「期する」方がいい

          恐竜を辞書で引く

           国語辞典を選ぶときは、試しに「恐竜」を引いてみて比較するとよい。 そんなふうに書いてあったのは「とんでも本」シリーズ(と学会)のどこかだったのだが、今探しても見つからない。仕方ないので引用は諦めます。  なぜ「恐竜」かというと、恐竜というのは短く簡潔に説明するのがとても難しい概念だから、ということだった。確かにそうであろうと思う。そこで、近くの市立図書館にある国語辞典すべてで「恐竜」の項目を引いて、比較検討を試みたいと思う。  国語辞典は18種類あった(そのうちの小型辞書

          恐竜を辞書で引く

          『火の鳥羽衣編』をめぐって

           コンビニコミックとして出ていた『火の鳥』(手塚治虫)の話である。 2015年に秋田書店から出版された分厚いやつ(全5巻)があって、その3巻目に「羽衣編」が収録されている。いわゆる朝日ソノラマ版を底本としていて、同時収録は「復活編」と「望郷編」である。  羽衣編についての最低限の説明をしておく。シリーズの他の物語はすべて長編または中編であるのに対して、羽衣編だけが44ページの読切短編である。また、画面は冒頭とラストを除いて全ページがタテに4コマに割られていて、すべてのコマが

          『火の鳥羽衣編』をめぐって