見出し画像

弐瓶勉『シドニアの騎士』|絶対に忘れられない漫画が、そこにはある

対話不能の異生物・ガウナ(奇居子)に太陽系を破壊されて千年。人類の繁殖と生産を維持しながら宇宙を旅する、巨大なる播種船・シドニア。シドニアの最下層で育った青年・谷風長道(たにかぜ・ながて)は、衛人(モリト)と呼ばれる大型兵器の訓練生となり、歴史的名機・継衛(ツグモリ)への搭乗を許される。長道の命を賭(と)した戦いが今ここに幕を開ける!

弐瓶勉の作品はどれも面白いのだが、セリフが極端に少なかったり、世界観の説明が皆無だったりすることが多いので、自分で想像補完して楽しむ必要があって、結構、読むのに疲れる作風というのが正直な印象だったのだが、この『シドニアの騎士』は今までとは大きく違っていた。かなり、読者に歩み寄ってきている。そして、その距離感が絶妙で、過去の弐瓶勉の作品の中で、私は本作が一番、圧倒的に面白い。作中の世界設定もそうだし、ロボットや兵器の造形も、男心をかなりくすぐってくるカッコよさ。今作で最も驚いたのは、人間ではない異型の生物を、思わず「可愛い」と感じさせてしまう、その画力と表現力だ。異型の生物に恋をしてしまうことに納得させられてしまう。結局、容姿ではない見てくれではない、真は心なんだって、それは全宇宙共通なんだって、思わされる。ブスと距離を置いてしまう矮小な自分を、恥ずかしいと思わないといけない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?