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柏木ハルコ『花園メリーゴーランド』|絶対に忘れられない漫画が、そこにはある

主人公は、ちょっと無口な高校1年生の相浦くん。旅行中にバスを乗り過ごし、知らない集落に迷い込んでしまい…。そして、土地の女性たちに誘われて、というか襲われて、いきなり貞操の危機に陥るが!

都会では考えられない「性」の概念。日本は貞淑というイメージが強いが、それは現代に限った話で、昔、本当に少し前までは、日本人も性に大らかだった。「夜這い」の習慣は当たり前で、現在においても尚、閉鎖的な集落ではその習慣が根強く残っていても、何もおかしいことはないと思う。今の日本の教育の中で生きて育てられた思春期の相浦には、集落でのこの古い「性」のしきたりは、とてつもない衝撃だったろう。私がこの作品を初めて読んだのはまだ学生だったので、相浦と同じ体験をしたら同じように衝撃で動揺しまくるだろうと感情移入が著しかった。澄子は、美少女という設定なのだが、この頃の柏木ハルコの絵は残念ながら下手くそだ。『健康で文化的な最低限度の生活』で柏木ハルコを久々に読んで、絵の上達ぶりに大変に驚いたくらいだ。なので、澄子の美少女っぷりは絵で表現できていないのだが、澄子の言動は思春期特有のもので、読んでいてかなり可愛い。ここはさすが漫画家としてツボをよく分かっている。自分が当事者だったら澄子の言動は堪ったものではないのだが、私も澄子とこの事件・出来事を体験し青春を経験したような、そんな気になるくらい読んでいて没入してしまう。相浦の成長、心の変化、大人への一歩、間違いなくこの瞬間が起点で、私自身の青春の思い出のように、未だに鮮明に強く私の頭の中に残っている、不思議な作品だ。

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