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「体験」を設計した、洗濯ブラザーズのクリーニングストアLIVRER三宿店

You Tube配信できるクリーニング屋さん?

LIVRERは横浜に本店のあるクリーニングストアです。
兄弟で「洗濯ブラザーズ」という活動もしています。
そんな彼らのフラッグシップストアとして、三宿店の設計をしました。
オーダーは、①クリーニングの受付、②物販コーナー、③SNS用の動画撮影スペース、④ワークショップエリア、というものでした。
19坪の面積の中で性格の異なる4つのコーナーをどう作るか?
プランニング力を試される難しいオーダーです。

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クリーニングの受付〜物販コーナー
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物販コーナー〜SNS用の動画撮影スペース/ワークショップエリア


プランニングはパブリック〜プライベートのレイヤーで考える

ファサードは全面ガラス、外にはグリーンの借景、という恵まれたスペースはパブリックエリアとして、①クリーニングの受付②物販コーナーに。
クリーニング受付の背景には、この店の主役、コンベアー型のハンガーラックを設置しました。
見た目の無骨さに目が行きがちですが、実用性から回転式のハンガーラックとしています。
ファサード側から来店客を奥に引き込むと、半パブリックエリアとして、③SNS用の動画撮影スペース④ワークショップエリアが有ります。
一番奥はスタッフルームやトイレ等水回りのプライベートエリアとしました。

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クリーニングの受付


常識を疑い、設計の希望を通す

店舗への出入り口は元々1箇所でした。
コロナ禍における店舗設計として、お客さんを滞留させないことも念頭に置く必要があります。
そのため、ファサードガラスのサッシを1箇所外してドアにしました。
余程のことで無い限り大家さんに交渉をするとお願いが通ることも有るので、常識(条件)を疑うことも重要です。
しつこい設計と交渉を続けた結果、無事希望が通りました。
「ファサードのサッシを撤去」という周りのテナントには無い、ドアが2箇所ある店舗の完成です。
回遊性の有る、お客さんが動きやすい店舗となりました。

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可動?固定?最適解とは

ワークショップエリアの中央にはシンク付の大きなテーブルを予定していました。
「洗濯のワークショップをやりたい」という要望だからです。
クライアントの要望を聞く限り、おそらくそれが正解の回答です。
その回答は一時的なものではないのか?そう疑問に感じ始めると、むくむくと複数の回答の可能性が浮かんできました。

シンクが必要、という条件を一度取り払うと色々見えてきます。
テーブル的なものがあればワークショップはできる?
それが移動できれば空いたスペースで撮影もできる?
移動できるテーブルにシンクがついていたらそれごと移動して色んなところでワークショップできる?

そういった様々な「体験」を設計して導き出した回答は、シンク付の可動ヤグラ什器!です。
シンクの下には給排水用のタンクを入れたので、どこにでも転がしていき洗濯をすることが可能となりました。
店内で使わない時は寄せておき、空いたスペースを広く使うことができます。
水道は固定されているもの、という概念を一度取り払ったことで新しい回答にたどり着きました。

ワークショップスペースとヤグラ什器(手前)

商品を元に選んだ内装マテリアル

LIVRERの洗剤は、世界的な環境配慮企業であるアウトドアブランド・Patagoniaからも認められた、ナチュラルな成分で出来ています。
その洗浄力はシルクドゥソレイユほか国内外のトップアーティストたちのお墨付きで、彼らの繊細な舞台衣装を洗っています。
そんなLIVRERの店なので内装で使うマテリアルも一気通貫した理念がなくてはなりません。

環境に優しい/エコ=ナチュラルな雰囲気、とはならないのがManekineko & Partners流です。
クールな雰囲気はしっかり残しつつも環境に配慮したマテリアルを選びました。

「ガラステーブル」
天板は、テレビに使われていた廃ブラウン管のリサイクルガラスです。
テーブル脚には、愛知県産のヒノキの間伐材とステンレスを組み合わせました。

「床:コルクフローリング」
コルクは木の伐採は不要な素材で、コルク樫の生育サイクルに合わせて、表面の樹皮のみ剥ぎ取ります。
それがコルク樫を活性化し、森林全体の健全化に繋がります。
またコルクというと茶色いイメージが思い浮かびますが、石のような硬質な表情と、柔らかで膝や腰に優しい歩行感を両立できるフローリング材を選びました。

「壁・カウンター腰部分:ハイブリッドボード」
古紙(アート紙などのリサイクルしづらい紙)と廃プラスチックをかけ合わせたボードです。
耐久性が有るゆえ、鶏舎・豚舎の壁・天井材や、現場事務所の床材で使用されることが多い、下地材的な役割です。
含有されるリサイクル素材の色により、ロット差が有り全く同じマテリアルにはならないという特性もあります。
工業製品なのに統一感が無い。それがマテリアルのおもしろい表情に繋がっています。

目を凝らすとチップの中に小さい文字が混ざっていることも


ポテンシャルが高くても選択肢に入らないマテリアルを知ってもらうきっかけ作りや、新たな可能性を引き出すことができるのがインテリアデザイナーの仕事のひとつだと捉えています。
SNSを見たり来店する方々が、環境配慮へ関心を寄せるヒントになるかもしれません。

忘れてはいけないのが照明計画!
クールに見せたいから白い照明を選んでいるわけではありません。
照明メーカーのショールームで、どの色が一番クリーニングの汚れが見えやすいか?
その点にフォーカスして選んだ色が白色の照明器具でした。

◎ 私たち「Manekineko & Partners」については
https://note.com/manekineko_prtnr/n/n5840e697b0f2

◎LIVRERと洗濯ブラザースについては
https://livrer.co.jp/
https://www.youtube.com/c/SentakuBothers

各種お問い合わせは hello@indigodesign.jp まで。


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