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Bitcoin保有銘柄の決算情報を眺めてみた - MicroStrategy

年次報告書(Form 10-K)の読み方をNoteでもくもく下書きをしていたのですが、内容がボリューミーで書きたいことが色々ありなかなか公開ができない...(笑)そのため、気になっていたBitcoin保有企業の決算情報を眺めてみました(過去から少々Bitcoinはポートフォリオに組み入れていましたが、筆者も2020年にBitcoinを買い増ししたひとり)

今回はKPIよりも資金の流れやいかにビットコインに資産が集中しているか着目してみました。

MicroStrategy

おそらく、Bitcoin保有している上場企業としては残高1位ではないでしょうか?

https://www.microstrategy.com/ja

最近(2021/2/18)にはこんなニュースも。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-02-17/QONGGRDWX2PU01

本業としては、Software companyなのですが、その別の顔はBitcoin company。CEOであるMichael SaylorとのインタビューPodcastの表題にも"the CEO Who Turned a Software Company Into a Bitcoin Company"(ソフトウェア会社をビットコイン会社にしたCEO)つけられているくらいです(笑)

https://podcasts.apple.com/ie/podcast/michael-saylor-ceo-who-turned-software-company-into/id1056200096?i=1000503394773

さて、MicroStrategyがBitcoinをさらに追加購入したと世間を賑わせていますが、飛びついて買うのはリスクがあります。実際に業績やバランスが決算書上どうなっているかを見てみましょう。

※決算書等の公開情報から見て取れるものを記載しております。投資をする際には自己責任でお願いします。

記事執筆現在(2021/2/20)の最新の決算であるFY2020 Q4決算 (2020年12月期)を見てみましょう。※下記タイトル未設定となっていますが、Q4のIR資料に飛びます。

ボリューム感のイメージがつきやすいように決算ハイライトについてPLは2020年度の期中平均レート((平均TTB107.82 + 平均TTS105.82 )÷2 = 106.82)、BSは期末TTM(TTB102.50 + TTS104.50)÷2 = 103.5)で日本円に換算してみます。

決算ハイライト

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Revenue(売上)が$480.7M (約513億)、Non-GAAP Operating Expense(Non-GAAP営業費用) $321.9M(約334億)、Non-GAAP Operating Expense(Non-GAAP営業利益)が、$68.2M(約7.2億)ほどになっています。

さて、10-Kに飛びましょう(スクショで該当部分を貼っていますが、記事を読みすすめるとスクショが下にどうしても流れてしまうので手元にも10-Kをダウンロードして見るのをおすすめします)。まずはSelected Financial Dataで数値の概要を掴みましょう。10-Kでは千ドル表示ですが、説明では百万ドル(M)表示にしています。

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業績ですが本業のトップラインは下がっていますね。そして、純利益から純損失に転落してしまっています(泣)。
またバランスシートですが、総資産のボリュームが前年以前に比べて大幅に増加しています。
それでは本表に行きましょう、まずは損益計算書から。

Statements of Operations (損益計算書)

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Revenues(収益)

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Total Revenues(総収益)は、微減。売上内訳を見てみるとProduct License/Product support/Other servicesが減っていて、Subscription servicesが増えていますね。

※Bitcoinは投資目的と捉えていて本業はソフトウェア関連サービスなのでトップラインのRevenue(収益)には何も載ってきません。

Cost of revenues(原価):

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Total cost of services(総売上原価)も売上に合わせて減少。売上の減少率よりも原価の減少率が小さいのは、サポート費用の減少に加えてサブスクリプションサービスでのコストカットに成功しているように見て取れます。

結果としてGross margin(売上総利益)は過年度の水準に落ち着いています。

Operating expense(販売費及び一般管理費)

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Sales and marketing expense(販売/マーケティング費用)をFY2020は大幅に抑えていますね。R&D(研究開発費)とGeneral and administrative(一般管理費)も前年同期で若干抑えている印象。

そして最も注目すべきは、Digital asset impairment losses。$70M計上しています。※日本だとこれは「特別損失」/「営業外」に入るのですが、Operating expensesの区分に入っているのが面白いですね。

こちらのDigital asset関連の解説は長くなるので後述します。

さて、以降がっといきましょう。

(Loss) income from operations/ (Loss) income before income taxes/ Net (loss) income

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Interest income(受取利息)が減少。Other(雑損失/雑収入)は、前年のincome(収入)からloss(損失)に転じています。

(Loss) income before income taxes(税前利益)は、34M(利益)から△19M(損失)に転換していますね。これは、先述したDigital asset impairment lossesからくるものと考えられます。そのために税金の引当もマイナス(利益方向)となり、結果7Mの純損失になっています。

Balance Sheets(貸借対照表)

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Total Assets(総資産)が$916M→$1,465Mで前年比+60%膨らんでいますね。内訳を見ると目立つのがやはりDigital assetsの$0→$1,054Mのところでしょう。一気に買い増していますね。Total Assetsの増加<Digital Assetsの増加になっていますが、Cash等の減少が影響しています。

さて、Digital Assets購入の資金をどうやって捻出しているのでしょう。

Liabilities(負債)側を見てみましょう。Convertible senior notes(シニア転換社債)を$486M発行しているようです。また、Stockholder's equity(純資産)においては、Additional Paid-in Capital(資本準備金)が、$593M→$763Mに増加しています。そのため、増資をしたことが考えられます。

上記の社債発行や増資でCashは増加方向に行くはずなのですが、Cashは$456M→$59Mと減少していますね。結果としてのCash残高であり他の要因でも増減したものと考えられますが、主に昨年から持っていた手許資金をBitcoinの購入に充てたものと考えられます。

上記のことは、Statements of Cash Flows(キャッシュフロー計算書)からも見て取れるので一緒に眺めてみると資金の流れが良くわかります。

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さらに2021年2月に追加の社債を発行するとニュースでは言っているのでさらに社債残高は増加するものと考えられます。

そして、総資産に占めるBitcoinの割合にも注目。総資産1,465Mに対してDigital Assets勘定の残高は1,054M。なんと総資産の約72%がビットコインなのです。そのため、Microstrategyの株価がビットコイン価格に連動しやすいかがわかりますね。

Digital Assetsの開示

会計方針:

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抜粋:
・$1.125 billionのデジタル資産(ビットコイン)を購入。
・ASC 350 無形資産 (Intangibles - Goodwill and other)についてに沿って会計処理をしている。
・取得原価で記帳。その後の測定で減損(impairment)を認識。
・ASC 820 公正価値 (Fair Value)に沿って公正価値を決定。アクティブな取引所の価格を参照している。
・四半期ごとに資産の減損の可能性が"More likely than not"を示唆する状況があるかについて分析をしている。
・減損損失は、認識した期間にDigital asset impairment lossとして計上。減損したデジタル資産は減損したときの公正価値によって測定され、評価替えはされない。利益は、売却のときまで計上されない。
(※ASCというのは、Accounting Standards Codificationの略でUS GAAP(US会計基準)の基準の体系を示しています。)

$1.125 billionのビットコインを購入しているとありますが、BS上のDigital Assetsは$1.054billionで、この差額 約$70M(四捨五入)が減損されDigital AssetsのLossとして損益計算書に計上されています。

無形資産の基準に沿ってBS価額の測定をしている&価額については公正価値の基準に基づいて決定しているということですが、ここは基準が複雑で色々なステップがあるので、またの機会に別の記事にて解説したいなと思います。

その他:

・IR資料より70,469ビットコインを保有していて、1ビットコインあたり$15,964としています。対して、決算期末日(2020/12/31)のビットコイン価格は$28,841.57 (https://sg.finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/)。ということは...?
ここからはあなたの想像力を膨らませてみてください。

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終わりに

いかがでしたでしょうか?

・本業のソフトウェア関連の収益はわずかだか減少傾向
・資産のボリュームはここ1年で一気に増加
・総資産に係るビットコインの割合は72%
・Digital Assetsの測定は有価証券の基準ではなく無形資産の基準が使われている(ここは後日基準の解説ができたら...と思っている)

また他のBitcoin保有銘柄の決算書も眺めてみたいな...と思います。











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