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ベンチワークについて日本代表コーチに聞いてみた時の話 #バスケコラム

今回は、ベンチワークの話。
ベンチワークというのは、コーチとしてベンチに入り、指示を出したり、タイムアウトをとること。
それをどうすれば良いのかというコーチの悩みが少しでも軽くなれば幸いなので、書くことにしました。

私のようなしょうもないバスケコーチでも、
日本代表を教えていたコーチとお話しする機会をたまたま戴いたことがある。
私はその時一番聞きたいと思ったことを素直に聞いてみた。


ベンチワークで一番大事にしていることは何ですか?


これについてその方は快く答えてくださった。
以下、それについて当時を思い出しながら、
記していく。

当時の会話 ベンチワークとは

「私は今、高校バスケ部の監督をやらせてもらっているんですが、監督をやっていて一番難しいと思うことがベンチワークなんです。
コーチはどのようなことに一番意識を置くべきなんでしょうか?」

「あなたはヘッドコーチなんですか?」

「はい」

「どのくらいのレベルの高校なんですか?」

「目標を○○にしています」

「なるほど、ベンチにはコーチが何人いるんですか?」

「私とアシスタントでもう1人いるので、
 2人です」

「その少ない人数ではコントロールできることや意識できることがとても限られますね。
あなたがチームで大事にしていることは何かありますか?」

「一番大事にしているのは、コミュニケーションを取り続けるということです」

「なんでそれを選んだの?」

「試合中ではDFFにおいて、常にコミュニケーションをとり続けることで、より良いDFFになると信じている。また、練習中は喋って修正を繰り返すことで、選手が成長できるし、練習の質が上がると思っているからです」(ここではざっくり)

「なるほど、それはすごく良いね」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「じゃあそのチームで大事にしていることが出来ているかどうかをベンチでは一番に見ましょう
ベンチが2人しかいないのであれば、色んなところ(細かい相手のオフェンスなど)を見ることが難しいので、試合の状況を2人で集中して見ることになると思います」

「そうですね」

「高校生だったらコントロール出来ることも限られると思います。練習してきたこと以上のことはでないです。だから試合中コーチが意識するのは、まず練習してきたことが出来ているのかどうかということです。
無理して色々と見て指示を出すよりも、チームで大事にしていることができているかを見て伝えてあげることが一番大切です」

「分かりました!ありがとうございます!!」

「頑張って」


その人は、私に終始優しい口調で、真剣にお話ししてくださり、最後には笑顔で「頑張って」と
言ってくれた。

日本代表コーチが語ったこと

ベンチワークでコーチが意識するポイントは、
チームが大切にしていることができているか
どうか。

これは私の心に刺さりまくった。本当に。

当時の私が求めていた答えは、
ベンチワークの正解 であり、そのようなことをずばり言ってくれるだろうと期待していたのだと思う。
しかし、日本代表のコーチにまで昇り詰めた人であっても、驕らず私の話を詳しく聞いてくれて、ならば大切なのはこれだよと伝えてくれた。
良い意味ですごく裏切られた気持ちになった。

当たり前のことを言っているようで、
それがトッププロのチームを見てきた人が大切にしている考えなんだ、と本当に感銘を受けた。

また、練習してきたこと以上のことはできない
という言葉も貰ったので、ベンチワークは練習と密接に繋がっているという考えを持つことができた。

自分の中でベンチワークへの迷いが無くなった。

コーチ向けのクリニックなどではなく、いち若輩者の話を真剣に聞き、対話してくださったことに本当に感謝している。


おまけ ベンチワークで考えること

ここからは、私が思うバスケのベンチワークの話

意識することは沢山ある


まず一つは、選手という人的資源の消費について

当然どのチームでも試合に出せるメンバーは状況によって限られる。試合中の人的資源は有限なのだ。それを上手くやりくりできなかったら、
監督の責任になる。考えることは以下の点である
・選手の体力&戦術
・ファウルトラブル&怪我離脱
・交代のタイミング

バスケはアホほど走るし疲れるスポーツなので、選手がフルでもたないことが多い。
だから、選手の体力が残り何%なのか意識する。
時には、特定の選手に力を抜けと指示する時間帯もあるかもしれない。
さらに、選手の体力に合わせて戦術を選択しなければならない。オールコートでDFFするのか、誰をマークするのか、誰で攻めるのかとか。

プラス、主力がファウルアウトしないようにしなければならないし、怪我のリスクを負わないように立ち回る必要がある。

これらを加味して、交代のタイミングを事前に、そして瞬時に考えなければならない。


二つ目は、相手の強み・弱み

自分のチームのことばかりに目を向けていても、相手に対応できないので、これも必須。
相手がやりたいOFFやDFFの狙いどころを考えなくては、戦いが不利になる一方である。
また、ゾーンなどの戦術に対応しなくてはならないので、監督としての知識や経験が重要になってくる。


三つ目は、試合の流れ・タイムアウトの数

流れが悪い時はタイムアウトを取りたいし、
相手が対応しきる前に戦術を変えるためにタイムアウトを取ることも考えられる。
しかし、タイムアウトの数は前半2回、後半3回と限られているので、その判断がなかなか難しい

多少流れが悪いと感じていても、選手の様子を見てタイムアウトを温存する場面が何度もあったし、逆に早い段階でタイムアウトを使い切らなければ、取り返しのつかないダメージをくらうという試合もあった。
これらは本当に一瞬の判断が求められるので経験とシミュレーションに頼るしかない。

私の判断基準の一つは1ピリで6点差がついた時。まず試合開始の入りのところは慎重にならなければいけないので、タイムアウトを渋っている場合ではない。
あとは、ターンオーバーが連続し、シュートでOFFを終われていない時間帯など。
逆に言えば、
守れているけど相手のシュートが入ってしまっている時や、攻めれているけどシュートが入らない時間帯は我慢しなくてはならないと思う。

試合の流れに関連して、チームの雰囲気というのも意識して修正させなければならない。
これは、コーチ主導でなく、選手主導で出来るのがベストだと思うが。どうしようもなくなった時には、タイムアウトを取る必要があるだろう。


最後に自チームの選手の良し悪し

これは、チームで大切にしていることに繋がることで、それが意識できているかを感じ取って、
指示を出したり、どの選手を使うかを考えなくてはならない。
また、練習通りのプレーができてるのか、
集中できているのかなどを意識して見る。


主にこれら四つのことを意識して、
誰を使うか、どの戦術を選ぶか、
どんな言葉を選手にかけるか
 
ということを頭の中でぐるぐると無限に考えるのが、私なりのベンチワークである。

ていうかおれなりの精一杯

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