『フランシス・ハ』と27歳

最近やけに若者ぶってしまう。
社会人4年目。

上司が求めてくるのは、いつだって「若者の意見」なので、
こちらもデジタルネイティブっぽい事を言う。
「ニュースはスマホで見ます」
「コミュニケーションはLINEよりもSNSですね」
すると、後輩が「そもそも検索とかしませんよね」と同意を求めてくるので、ちょっと焦る。

「ところで君たちって本当に、若者世代の中心にいるの?」
上司が尋ねる。

本当は、インスタでいい感じの店を探す方法が分からない。
本当は、検索だってめちゃくちゃする。
本当は、全然若者のメインストリームになんかいない。

2個下の後輩は「僕たち世代って~」という前置きの後、サステナブルやIOT化について語る。
言葉のふしぶしに上の世代への軽蔑がにじみ出ていてドキドキする。分かったフリして頷いているのがバレたくなくて。

就活に行き詰った時、お笑いの養成所へ見学に行ったことがある。
「今日来てくれてるのは、何歳くらいの人が多いのかな?」と講師が言って、
手をあげると18や19の子と同じくらい、アラサーの人がいた。

なんだ、やっぱりな。お笑いはいつでも始められるんだ。
それだけ確認して、結局出願書は出さなかった。

25で老いを感じていると言ったら、猛反発に遭うのは分かる。
20歳の自分は「5年後もまだまだ若い」と思っていた。
30歳の自分は「25なんていくらでもチャレンジできる」と言うだろう。

分かっているけど、息苦しい。
水面があがってきているのに、自分の立ち位置はあがってない。

『フランシス・ハ』という映画の主人公は27歳。
で、この主人公の痛々しさがまあリアルだ。

プロダンサーになるという夢を追っているけれど、5年以上ダンスを続けて、それが叶う可能性が低いことにうすうす気づき始めている。
学生に「大人だね」と言われて「そんなに変わらないよ、まだ私27だし」と少し慌てた口調で答える。

27歳。
なんて絶妙な年齢設定なんだ。
27歳の主人公が、夢を追いかけて奔放に生きる映画もあるだろう。
27歳の主人公が、仕事をしながら子供を育てる映画もあるだろう。

夢と実力の損益分岐点。
劇中で二度かかるデヴィッド・ボウイ「Modern Love」が、本当の人生でも流れたらいいのに。

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