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飲食業界の新しいスタンダードをつくる 「食べると勝手に健康になる飲食店」ができるまで

ご無沙汰しております。約2年ぶりのnote更新です。今月から定期的にnoteを発信していきますので、よろしくお願いいたします。

いわゆるコロナ禍も明け、飲食業界の反転攻勢が始まりました。

今回は前回の更新から今日までに取り組んでいたお店作りや、僕が考える今後の飲食業界の在るべき姿を改めてお伝えします。

健康と美味しさの両立を目指して

前回2021年のnoteでは「質的栄養失調に向き合う」というテーマで、「僕はコンビニ・スーパー・飲食店など、どこに行っても“質的栄養を考えてつくられた食品が手に入る社会」の実現を目指している」と書きました。

それから約1年半、僕は質的栄養を考えて作ったメニューを食べることができる飲食店をプロデュースしました。

日本屈指のビジネス街である東京・大手町に2022年10月にオープンした「梯子」です。それまで誰もやったことがなかった「美味しさと健康の両立」を初めて実現させたお店と言っても過言ではありません。

コロナ禍になって飲食店が一斉に休業になり、飲食店の在り方を自分なりに模索していました。

「もう一度、1から飲食店をやるとしたらどんな業態をやるべきだろうか」

そんなことをずっと考えていました。

考え抜いて出た結論が「純粋に人の役に立ちたい、喜ばせたい」という気持ちでした。

それを飲食店で形にするにはどうすればいいか。たどり着いたのが「健康な食」でした。

食べ物は人間の体だけでなく精神面も作る、いわば根源の部分を担っています。夢とかお金とか生き方とか、いろんな考えや思いを持って人間は行動しますが、全ては元気がないとできない。元気であるために必要なのは日々の食事です。

ただ、「健康な食」は美味しさとの両立が難しいんです。病院食を思い出していただけると、イメージがしやすいと思います。健康を意識した栄養と、満足できる美味しさは相反するものなんです。

栄養管理のプロである栄養士は、人を幸せにする「味」や「ビジュアル」の追求はできません。一方で、料理のプロであるシェフは味やビジュアルは追求できますが、健康に関する栄養面はほとんど気にしません。

そもそも、飲食店で提供する料理には炭水化物や糖質が多く含まれる傾向にあります。

魚男でもお客さまを楽しませて喜んでもらう料理は生み出し続けていますが、お客さんの体をつくる栄養の観点でメニューを作ったことはありませんでした。

実際、健康を売りにしている飲食店のほとんどは、健康を気遣うあまり、薄味で旨味が足りません。僕が知る限り、健康と美味しさを両立するレストランはありませんでした。

分子栄養学を飲食店メニューに取り入れる

どうすれば健康と美味しさを両立することができるのか。健康を意識するようになって、栄養学など健康に関する情報を集めていたときに知ったのが、最先端の栄養学である「分子栄養学」でした。

聞き慣れないという方に分子栄養学の概念を簡単に説明すると、ひとりひとりの個人に合った適切な種類および量の栄養を摂取していくことで、健康に導いていく考え方です。「1食の塩分は5グラム以下」といった管理栄養学の考えとは全く違う概念です。

カロリーだけ摂取しても必要な栄養素が採れなかったら、食事の意味はありません。飽食の時代だからこそ、日本人に必要な栄養素を適切に採れるメニューがそろった飲食店を作りたいと思ったんです。

しかし、私は分子栄養学については専門外なので、メニューを作ることができません。そこで、分子栄養学を専門で研究している人を探すことにしました。

ツテがなかったので、SNSで発信をしている料理研究家を探しました。

見つけたのが、分子栄養学アドバイザーで料理研究家の岩本綾子先生です。私たちは岩本先生のインスタグラムからダイレクトメッセージを送り、「飲食店のメニュー開発に協力してほしい」とお願いしました。

岩本先生は家庭料理を教えるのが専門で、飲食店のメニュー開発の経験はありませんでした。しかし、私たちの「健康と美味しさの両立する飲食店を作りたい」という思いに共感してくださり、協力してもらえることになりました。

メニュー作りの第一歩は調味料探しでした。岩本先生からは「分子栄養学の考えとして、飲食店では当たり前のように使われている白砂糖や精製塩、サラダ油は健康の観点から使ってほしくない」という要望が出たので、ありとあらゆる調味料を取り寄せました。塩だけでも30種類ほど取り寄せ、味とミネラルをチェックしました。

また、グルテンフリーの観点から小麦粉も使わず、和食に合うもの、日本人になじみのある食材を選んでいきました。結果的に精製塩はミネラル塩に、サラダ油は米油に、小麦粉は米粉に切り替えました。生クリームを作る材料も牛乳から豆乳・オーツミルクに切り替えました。

これらの調味料は、分子栄養学で大切な「どの食材を使えば血糖値が上がらずに済むか」という視点で選びました。

さらに、岩本先生からは「カツオ節と昆布は出汁として使わないでほしい」という要望が出ました。梯子は和食のお店で、和食の命は出汁です。出汁をとるのに必要なカツオ節と昆布が使えないと言われたら、何を使えばいいのかと(笑)。

カツオ節と昆布に代わる出汁として岩本先生が提案したのが「ボーンブロス」です。ボーンブロスは牛や豚、鶏などの骨付き肉を弱火で長時間煮込んでとったスープです。骨から溶け出すコラーゲンやミネラルが豊富で消化吸収もよく、海外では病気を予防する理想食「飲む美容液」と呼ばれています。

 弱火でじっくり煮込みます

岩本先生が作ってくれたボーンブロスを飲んでみると、これまで味わったことのない味わいが口の中に広がりました。

「ボーンブロス出汁×和食」のメニューなら、健康と美味しさが両立できるかもしれない。

私たちはメニュー開発に取りかかりました。

血糖値を上がりにくくするメニュー開発に試行錯誤

特に意識したのは、食事後の血糖値が上がりにくくなるメニュー作りです。そのためには、糖質を抑えて吸収しにくくする食材を使う必要がありました。

初めて使う食材での試作も多く、私や岩本先生が納得するメニューにたどり着くまでには相当苦労しました。「この食材を使えば、もっと美味しくなるけど、それだと糖分とカロリーが多くなってしまう」と試行錯誤の連続でしたね。

数ヶ月の試作期間を経て、メニューが完成しました。和食料理としても美味しくて、健康にも気遣いがある。味と健康に妥協しない。本当に良いメニューができました。

梯子の名物「ボーンブロス懐石」

日本人になじみのある食材で、分子栄養学に基づいた飲食店のメニューを作ることができた「梯子」は、僕にとって非常に感慨深いお店になりました。まさに「食べると勝手に健康になる飲食店」が完成したんです。

僕はこのノウハウを、自身がプロデュースするお店に広げています。
札幌市にある水炊き屋「人生狂わすタイプ」はボーンブロス白湯でたっぷり野菜や平飼い鶏肉を食べる博多水炊き屋をコンセプトに、中華料理店「台湾厨房FORMOSA」は「100%グルテンフリー」をコンセプトに美味しさ、健康、美しさを追求しています。

8月には東京・高円寺に「動悸(ときめき)」というお店も開店予定です

僕の目標は「食べると勝手に健康になる飲食店」を日本全国に広めていくことです。これを飲食業界の新しいスタンダードにしていきますので、ご興味のある方はぜひお声がけください。

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