税金の世界史
タイトルが「税金の世界史」であるため、昔のことに関する記述が多いのかなと思いきや、現在の話、未来の話、仮想通貨の話、筆者が理想とするユートピアの話など内容はもりだくさん。
300ページ近くあり、しかも字が小さいので読破に時間がかかってしまった。ゆるい税金の知識と世界史の知識があれば内容はさほど難しくはないのだが、片手間に読める内容でもなかった。
でも税金や世界史が好きなワタクシとしてはかなり満足のいく内容だった。
偉大な文明の誕生は、低い税負担と小さな政府、その凋落は高い税負担と大きな政府を伴う。そして経済の変化や新技術の登場に抵抗するよりもそれらを取り入れることが大事。
新技術と言えば、最近よく耳にする仮想通貨。
仮想通貨を理解していない人々はテクノロジーの進歩を拒絶している。そして今後訪れるであろう金儲けのチャンスをふいにしている。
仮想通貨、すでに何年も前に廃れてもおかしくなかったものが、今や一兆ドル近くの産業に成長している。この科学技術の新しい可能性に世間は熱狂した。1990年代のインターネット登場以来の大騒ぎである。
そして、国境のないデジタル経済から税金を徴収する方法を政府はどうにかして見つけなければならない。株式市場でさえ、形のないテクノロジー企業の価値を従来のやり方で評価しようとして四苦八苦している。法令を遵守している企業あるいは個人は一部のメディアをどれほど怒らせたとしても法令を遵守していることには変わりがない。
経済は変化している。にもかかわらず、法制度や税制はその変化について行けていない。税制も変化しなければならない。
そうするには、税金について政府に丸投げするのではなく、身近なところでも税金について考える機会を我々ひとりひとりが持たなければならないのではないか。
「私、税金の事わからないから」
こういう人、周りにも非常に多い。ほとんどの人が税金を納めているにもかかわらずである。源泉徴収という形で税金を納めている人が多いからであろうか。
ちなみに、源泉徴収制度の導入はアメリカでは1943年、イギリスでは1944年。政府はより迅速にしかも容易に税金を集められるようになった。
したがって、納税者はいくら徴収されているかということを意識しなくなった。税の透明性が低下した。将来の増税も容易になった。
でもこれはまだなじみがあり、見える税金である。
目に見えない、通知されない、納税者の理解を得ていない税金がインフレ税。インフレ税はステルス税の中でもきわめてステルス性が高いので厄介である。
インフレとは通貨価値が下がること。
平均賃金が年々上昇しているものの、通貨の購買力がそれでも間に合わないほどのペースで低下し続けている。
長いスパンで見たとき、じわじわとインフレが進んでいることは何となくは理解できていた。
身近な例で言えば少年ジャンプの価格。昔は200円持っていけばおつりがもらえたのに今は300円近くまで値上がりしている。(消費税導入の影響などもあるのだろうが)
あと、かつては二親のうち一親が働けば中流の生活を保てたのに、今では共働きではないとやっていけない。子供の数もそれほど増やせない。どの世代も税金とインフレで貧しくなっているのである。
それに加え、ここ最近、さらにインフレになっているという。
貨幣以外の資産を持つ者と持たざる者の格差がさらに広がることになろう。
国民の税負担が小さい国、税制が公平でわかりやすい国が生き残る。
これまでの歴史はずっとそうであった。これからもそうであろう。
税負担を小さくするためにはどうすればよいか。
税負担を公平でわかりやすくするためにはどうすればよいか。
他人任せにせず、ひとりひとりが税金について考えなければならないと思った。
そしてまがりなりにも税金のことを知っている人は周りの人たちを啓蒙していかなければならないとも思った。
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