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オンライン読書会『オカルトマンガを語る会』イベントレポート【2020年7月】

どうも、クチコミとランキングでいいマンガが秒で見つかるサービスマンバです!
先月もYouTube Live配信にてオンライン読書会を開催しました!

今回のテーマは「オカルトマンガを語る会」
今回は漫画家・やじまけんじ さんにお越しいただき、こわ〜いマンガの話をたっぷりお届けしました。

そのイベントのもようを、マンガソムリエ・兎来栄寿さんによるレポートでお届けします!
兎来さんによる日本のオカルトマンガ史概観が読めるのはココだけ!!!必読ですよ〜!

◇◆◇◆◇

7月25日、オカルトマンガを語るオンラインマンバ読書会が開催されました。

今回はゲストに現在LINEマンガにてコッペくんを連載中で8月10日に第1巻の発売を控えたやじまけんじさんをお招きしました!

ゲストに一問一答@やじまけんじさん

最初のコーナーは「ゲストに一問一答!」。やじまさんに様々な質問を投げかけてみました。

Q.子供のころに好きだったマンガは?
A.コミックボンボンで連載していた本山一城の『スーパーマリオ』シリーズ

沢田ユキオさんの『スーパーマリオくん』と双璧をなすマリオマンガの名前が挙げられました。やじまけんじさんは『ミュータントタートルズ』のコミカライズが切っ掛けで(マリオもタートルズもどっちも亀!)コミックボンボンを読むようになり、『メダロット』や『サイボーグクロちゃん』を愛読していたボンボン派だったそうです。本山さんの描くピーチ姫が非常にかわいかったのが個人的に印象に残っています。


Q.トラウマになったマンガは?
A.いがらしみきおの『Sink』

ぼのぼの』があまりにも有名ですが、それ以外では不可視の不気味な恐怖や哲学性を帯びた名作が多い、「本当は怖いいがらしみきお作品」。『I -アイ-』などはやじまさんの担当であるコルクの佐渡島さんも賞賛していました。「本当に起きないとは言い切れない恐怖がある」と、『Sink』のおどろおどろしい魅力を語るやじまさん。

こちらのクチコミの「このホラーを描いた人が今現在ぼのちゃんを描いている事実が一番こわいかもしれない」という一文はまさにその通り! と一同膝を打ちました。


Q.今周りで流行っているマンガは?
A.縦スクロールの『ザ・ボクサー』や『喧嘩独学』

ザ・ボクサー』は新井英樹の『RIN』のような、圧倒的天才を描いたボクサーマンガ。『喧嘩独学』は『外見至上主義』のT.Junさんの作品で動画配信周りをテーマに据えて恋愛要素も持たせた復讐劇。どちらもLINEマンガで読める作品です。

WEBTOON発の『俺だけレベルアップな件』がピッコマで月間売上1億円を超えるというニュースがあり、旧来の出版業界の方からは「WEBからは中ヒットは出ても大ヒットは出ない」「見開きがないと迫力のある作画ができない」と言われていた状況もここにきて大きく変わりつつあるのかなと思います。やじまさんと縦スクロールマンガについてのお話が弾みました!

会でも言及されたこちらの記事も縦スクロールマンガについての理解を深められる内容なので、併せて読んでみてはいかがでしょうか。


Q.どんなオカルトマンガが好き?
A.現実の怪奇現象か民話を元にしたもの

今回の会を切っ掛けに自分の好きな作品を分析してみると、実際にあった怪奇現象や民話、民俗学的設定を元にした作品が好きというやじまさん。

そんなやじまさんによる『三つ目がとおる』『ゴールデンゴールド』のクチコミはこちら!

他にも諸星大二郎作品などもお好きだということです。


Q.今日一番話したいマンガは?
A.黒田硫黄『大日本天狗絵詞』

やじまさんによる『大日本天狗絵詞』のクチコミはこちら!

丁度作者と同じくらいの年齢である大学を卒業する頃に読んだことで、その時の将来に対する漠然とした思いなどの心理状況も無意識に反映されていたのかなとやじまさんは語ってくださいました。


Q.『コッペくん』の連載について一言
A.Twitterで始めたマンガを現在LINEマンガにて連載しているのでぜひ読んでください。癒されると思います!

やじまさん初の週刊連載にして、初の縦スクロール。挑戦に満ちた、クマのコッぺくんとワニのロコくんが冒険を探す物語です。

最近の月曜日は『チェンソーマン』や『呪術廻戦』、あるいは『忍者と極道』などで心の状態が混沌とすることが多いのですが、最後に『コッペくん』を読むことでそれが優しいデザートとなり気持ちよく月曜日を締め括ることができます。

昔のバナー広告でも語られたことですが、LINEマンガに限らずアプリ上で公開される作品というのは読者の注意を引くためにえてして残酷なものや陰惨なもの、あるいはかわいい女の子や恋愛を売りにしたものが多いです。それが悪いというわけではもちろんないのですが、そういった中でまったく違う作風で新しい風を吹き込む『コッペくん』のような作品が評価され存在感を増していくことはマンガの多様性の保持において大事なことでもあると思います。

また、『コッペくん』のような作品・キャラクターの魅力は国や文化圏が違っても比較的スムーズに受け入れられると思うので、ぜひいずれアニメ化などもされて世界へと羽ばたいて欲しいなと思います。

スペシャルトーク「新旧オカルトマンガ激論」

続いては、スペシャルトーク「新旧オカルトマンガ激論」のコーナー。今回のメインとなる、古今東西のオカルトマンガについて熱く語っていくコーナーです。

その前座として、私兎来がオカルトマンガの歴史概論的なトークをさせていただきましたので、当日語り切れなかった部分も併せて記していきます。

1930年代、アメリカでは短編ホラー漫画が出始めていました。そして、1943年にホラー漫画史初の長編と言われる『Dr. Jekyll and Mr.Hyde』、いわゆる『ジキル博士とハイド氏』が発売されました。

この頃のホラー漫画は、特に今ではUSJことユニバーサルスタジオジャパンでも有名なユニバーサル映画の名作の影響を色濃く受けていました。

1931年 
『魔人ドラキュラ』シリーズ
『フランケンシュタイン』シリーズ
1932年
『ミイラ再生』シリーズ
1941年
『狼男』シリーズ

といった作品の影響は特に強く、現代でも日本人がハロウィンでイメージするものの大半は、この時期に作られたユニバーサル映画で形作られたイメージが大きく残っています。

藤子不二雄(A)『怪物くん』が1965年スタートですが、これはまさにドラキュラ、狼男、フランケンシュタインがメインキャラクターとして登場する作品であり、これらの影響を強く受けている顕著な例のひとつです。

しかし、1954年に「コミックスコード」という倫理委員会の規定により大規模な規制が掛かり、何とドラキュラ、狼男、ゾンビ、グールなどを描くことや「ホラー」「テラー」といった言葉を使うこと自体が禁じられてしまいました。その後、70年代に規制緩和されるまで著しく表現が制限されたコミックしか流通しない暗黒時代となりました。それ故に、アメコミといえばヒーローもの、という連想が働くほどにそういった作品ばかりが作られた時代がありました。表現規制の歴史として、覚えておいて損はないところです。

一方で映画界では1960年代に規制緩和があり、スプラッター表現を用いた作品がブームとなりました。

1960年
ヒッチコックの『サイコ』
1963年
ハーシェル・ゴードン・ルイスの『血の祝祭日』
1968年
ゾンビ映画の始祖であるジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』

などなど、枚挙にいとまがありません。

東京喰種』や『アイアムアヒーロー』といった近年のヒット作も、また最近はタイトルに「デッド」が付いたり付かなかったりするゾンビマンガ全般も非常に増えましたが、それらもすべてこういった作品の系譜上にあると言えるでしょう。

では日本の怪奇漫画の原点は、というとやはりというか手塚治虫が中心となって発展したと言われています(漫画の歴史を遡ると大体源流として手塚治虫に行き着くのがある種お約束となっています)。

手塚家でも所持されていたという戦前マンガの代表的シリーズであるナカムラマンガライブラリーでは本格的なオカルトやホラーはありませんでしたが、手塚治虫は終戦直後の1947年には『オバケ』、1948年には『妖怪探偵團』といった作品も著しています。

手塚治虫の偉大さはもちろんなのですが、折角なので他の代表的な作家を見ていきましょう。

1950〜60年代は貸本漫画全盛の時代。楳図かずお古賀新一らが活躍した時代です。

1961年、楳図かずおが貸本短編誌『虹』29号に発表した「口が耳までさける時」(※スタッフ注:「楳図かずお こわい本」5巻に収録)によって「恐怖漫画」という言葉が登場しました。

やはり、日本の恐怖漫画の第一人者として楳図かずおは外せません。今回は楳図かずおの生い立ちを辿ってみます。

楳図かずおは1936年に和歌山県伊都郡高野町で生まれました。高野町というのはあの高野山があるところで、三重県の熊野や奈良県の吉野などとあわせて紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産になっているところです。楳図かずおはすぐに奈良に引っ越すのですが、いずれにせよ古来より真言密教や修験道の主な修行場として栄えた場所で、非常に霊的な土地です。

そういった土地で生まれ育ったことで、「自然が怖い」というのが楳図かずおの原体験としてあったといいます。

丁度私も吉野山に住んでいたことがあるのですが、山奥では都会では見られない無数の星が美しく煌めいている一方で、一度森の中に入るとまさに一寸先は闇。暗闇では何かが蠢く気配もあり、いつ何が襲ってくるか解らない恐怖がそこにはありました。「自然が怖い」という感覚には非常に共感できます。

1947年に発売された手塚治虫の『新寶島』を小学5年生の時に読んで漫画家になることを決意した楳図かずおは、そうした原体験から来る恐怖の感情を漫画へ落とし込んでいき数多くの傑作を生み出しました。

その楳図かずおの熱烈なフォロワーとして最も有名なのは、伊藤潤二です。5歳の頃から楳図作品に没頭して、1986年に「富江」で見事に楳図かずお賞佳作。伊藤潤二もまた恐怖漫画の大家となりました。

その伊藤潤二との対談にて楳図曰く、時代が進むとともに未知のものが未知でなくなってきてしまったと。かつて富士山の五合目以上は霧に覆われていて何があるのかわからず不気味で恐怖があった。しかし今や飛行機で空を飛べば上から全貌が見えてしまう。恐怖というのは放射能とかそういったものへ対象が移っていくのではないか、と述べていました。

また、楳図かずおと並んでオカルト漫画を語る上で外せないのが水木しげるです。

水木しげるの人生は『ゲゲゲの女房』が人気を博したことで知る機会も増えたでしょうか。水木しげるは元々画家を目指していたものの、戦争で徴兵されてしまいました。近眼だったことで最初こそ後方で補充員などを務めていたものの、最終的にはラバウルまで駆り出されるという戦時下の体験が作品にも大きく影響を及ぼしています。『総員玉砕せよ!』や『白い旗』などは今回のテーマからは外れますが、一読の価値があります。

水木しげるは手塚治虫より6年早い1922年に生まれているものの、デビューは1958年と遅咲きでした。そして1960年には怪奇短編集『妖奇伝』が発売。『妖奇伝』第2号には「幽霊一家 墓場鬼太郎」が掲載されました。

ちなみに、水木しげる以外にキタローの原作が存在することはご存じでしょうか。1933年から1935年頃にかけて民話の『子育て幽霊』を脚色した『ハカバキタロー(墓場奇太郎)』(原作伊藤正美、作画辰巳恵洋)という紙芝居が存在し、当時の紙芝居会社の社長が水木しげるにそのリメイクを描くように要請したことでその後の『ゲゲゲの鬼太郎』が生まれたそうです。

1965年から週刊少年マガジンで『墓場の鬼太郎』を連載開始。1967年には『ゲゲゲの鬼太郎』と改題されました。別冊の『日本妖怪大全』には現在大人気となったあのアマビエも描かれており、こうした水木しげるの活動により「妖怪」という言葉が一般に広まった結果、日本中に大妖怪ブームが巻き起こりました。

ちなみに、水木しげるはなぜ妖怪を描いたのか。

18世紀の妖怪画家である鳥山石燕の『百鬼夜行』、あるいは柳田国男や小泉八雲、泉鏡花といった妖怪を描く作家たちの作品に触れて(なお、2015年には『水木しげるの泉鏡花伝』という泉鏡花の生涯を水木しげるが描いた漫画も出ています)、水木しげるは妖怪の存在が非常に腑に落ちたそうです。それまでの人生で感じてきたことが、妖怪という存在があるのであれば納得できると思い、妖怪について真剣に考察を続けたそうです。

室町時代ごろには「百鬼夜行絵巻」といった作品もあり、妖怪というのは日本人に深く根差したテーマのひとつではありましたが、それをここまで人口に膾炙する形で創り上げた功績はあまりに偉大です。

日本人は幼い時から『ドラえもん』というタイムマシンが当たり前に登場するSF作品に触れているお陰でSFを楽しむ素地が自然と形成されているという話があります。SFから妖怪まで身近なものとして受け入れながら育っていくこの日本の特異で稀有な国民性が偉大な漫画家たちによって涵養されていることにしみじみと感じ入ります。

1970年代には日本全体でオカルトブームが起こりました。

1973年にはノストラダムスの大予言が大流行。ユリゲラーのスプーン曲げ、ネッシー、ツチノコ、こっくりさん、口裂け女などの流行、そして雑誌ムーが刊行開始したのも70年代でした。

その時代には

1972年 デビルマン
1973年 恐怖新聞
1974年 三つ目がとおる
1975年 エコエコアザラク

といった作品が生み出され人気を博しました。日野日出志諸星大二郎山岸涼子曽祢まさこらが活躍し始めたのもこの頃です。

1990年代になると、週刊少年サンデーが『うしおととら』や『GS美神 極楽大作戦!!』が大ヒット。また『学校の怪談』『地獄先生ぬ〜べ〜』がブームを牽引し、また妖怪が一躍大人気の時代でした。

個人的には、90年代のジャンプで連載されていた『アウターゾーン』が最もトラウマになった作品でありつつも大好きでした。

異界のアイテムを扱うお店の美人店主・ミザリィを主人公として、概ね1話完結型で毎回さまざまな事件が起こるという内容です。物を失くして探したはずのところから見つかるという経験をしたことがある人は多いと思いますが、それは妖精の仕業だと『アウターゾーン』の世界では語られます。しかし、その妖精というのが小さなゴブリンのような醜悪で獰猛な存在で、その姿を見てしまった者は妖精に殺されてしまうのです。幼い頃の私は失くし物を見つけた時には妖精を見つけてしまわないように必死でした。

ただ、怖いお話も多いのですが毎回理不尽なだけの終わり方にはしないという哲学で作られ、感動的なストーリーもある秀逸な作品です。現在続編の『アウターゾーン リ:ビジテッド』が刊行されていることを知らない方もいると思うので、当時好きだった方にお薦めです。


90年代後半は世紀末という世相でオウム真理教の事件など陰惨な事件が続発したこともあり社会不安が増大し、『新世紀エヴァンゲリオン』が社会現象を起こすなど終末思想やオカルトがまた大流行。すべてをノストラダムスの予言に繋げるオカルト漫画『MMR』や、1999年に滅びる世界で戦う『X』なども人気でした。

大規模な妖怪ブームというのは20~30年周期で発生しています。2013年には『妖怪ウォッチ』がコロコロコミックでの漫画がスタートし、ゲームも発売。2014年アニメ放映開始で大ブレイクしました。全国で妖怪メダルを巡って親世代たちも奔走していたのは記憶に新しいところです。

妖怪ウォッチ』は子供向けでしょ、ということでまったく通ってない方も多いとは思いますが、登場キャラクターのコマさんを主軸にしたスピンオフ『妖怪ウォッチ コマさん』シリーズは大人が読んでも泣ける素晴らしい作品ですのでぜひ読んでみてください。

このペースでいくと、2030~2040年頃にまた大きな妖怪ブームを起こすコンテンツが登場してくるのではないかと予想しています。

余談ですが、当時からオカルト漫画の読者層は少女がメインだったそうです。女性がそもそもホラーが好きであるのはもちろんのこと、少年漫画だと正体不明の化物というのは強い主人公によって打ち倒される存在であることもあり、純粋に恐怖の感情を描くには少女漫画の方が適していたという説もあります。

より詳細な歴史を知りたいという方には、米沢嘉博著『戦後怪奇マンガ史』をお薦めします。山田ミネコ、ムロタニツネ象、萩尾望都、つのだじろう、わたなべまさこなど、怪奇漫画・恐怖漫画の系譜上のキーパーソンとその作品についてや成立について非常に丁寧に書かれています。

「こわ〜いマンガ」のクチコミ大募集!

前座と言いつつ非常に長くなりましたが、以降はマンバに投稿されたクチコミを紹介しながらさまざまなオカルト漫画について語っていきました。


『ゴールデンゴールド』

「説明のつかない力に解釈をつけるのが妖怪や幽霊、神や魔法を生み出す理由」「その中でも『お金』というものの目に見えない力を描いたのがこの作品」とやじまさん。訳の分からない恐怖に着実に浸食されている感覚が恐ろしくも楽しい作品です。そして何しろ絵がお上手で島の空気感に引き込まれます。


『さんかく窓の外側は夜』

「言霊や呪いといった昔からあるものと現代のSNS等で人を傷つける言葉との相似を考えさせられる」とやじまさん。「その上でしっかりエロいのも魅力」というコメントも(笑)。現在連載中の『違国日記』はもちろん、BLや女性共感系の作品から、『花井沢町公民館便り』のような青年誌SF作品まで、ヤマシタトモコさんの作品は本当に押並べて上質です。


『青春オカルティーン』

小林ロクさんがツイ4で現在連載中の『ぶっカフェ!』の前に連載していた作品。マンバのTさんは「青春とちょっとの寂しさとが詰まった一冊で滅茶苦茶オススメ!」と激賞。『ぶっカフェ!』ともどもギャグの中にあるシリアスがたまりません。『ぶっカフェ!』のとあるエピソードは非常にクオリティが高く全人類に読んでほしいくらいなのですが、その才能の片鱗は『青春オカルティーン』から既に溢れ出しているのでぜひあわせて読んでいただきたいです。


『妖怪ハンター』

ジャンプダークファンタジーの端緒にある作品であり、諸星大二郎さんの初連載作。やじまさんは『アダムの肋骨』『孔子暗黒伝』といった作品で諸星作品を通ってきたそうです。「『マッドメン』に出てくる古事記のパロディなど滅茶苦茶なところもあるけどそれがまとまっていて面白く読める」とのこと。民話や神話など既存の物語と接続させる巧さ、独特の異形な世界観は他にない魅力です。

ちなみに「諸星大二郎作品を読んだことがない人に最初に薦めるとしたら?」という議題では、この日は『栞と紙魚子』シリーズという結論に達しました。

影絵が趣味さんによるクチコミが素晴らしいのでぜひお読みください。

かつて南沢奈央さんと前田敦子さんにより実写化もされた代表作ですが、短編の連なりなのでどこから読んでも楽しめるのもお薦めしやすいポイントです。クトゥルフ神話を併読するとより楽しめます。


『後遺症ラジオ』

こちらも、なかやまさんの素晴らしいクチコミが話題になりました。「あらすじで既にヤバい、怖い」と言われた本作では、時系列がバラバラに描かれています。それを正しく時間通りに直すと……という非常に優れた試みをなかやまさんは行っており、それを著したクチコミ自体が「こんなクチコミ初めて見た!」得体のしれない恐怖を醸し出してくるところが名状し難い良さを放っています。そのお陰で早速気になって買ってくださる方も現れました。拍手!


『地獄少女』

当時のなかよし読者の少女たちに絶大な人気を誇り、アニメ化によって更にその人気を拡大。遂にはパチンコ・パチスロ化もされて(『コジコジ』や『イタズラなKiss』もパチンコ化されましたが、なかよし作品のパチンコ化でしかも6台出るほど成功を収めた事例は稀有)幅広い層に支持される名作ホラー。何といってもヒロインの閻魔あいが魅力的で、彼女の凛々しい姿に魅せられた方も多いことでしょう。心に残るストーリーやセリフもあり、「ちょっと上を向いたらこんな広いお空があるのにね」はいつでも忘れたくない名言です。


『ルート3(ひとなみにおごれやおなご)』

知る人ぞ知るコミックガムで連載された「平成の妖怪絵師」みなぎ得一さんの作品。クチコミを投稿してくださったふでだるまさんは「ホラーが苦手だったのに妖怪大好きになった作品」「オカルトも人間臭さが欠かせない要素」とし、キャラクター造形の良さを指摘しています。設定による物語の妙もありますし、『足洗邸の住人たち。』でも見られるみなぎさんの超常的な存在・事象に対するあくなき興味と知識と愛情が溢れ出ているのも読んでいて面白く気持ちいいポイントです。


『東京BABYLON』『X』

「オカルトマンガにおけるCLAMP」というお話で、代表的なこの二作品の名前が挙がりました。東京にはびこる怪異に立ち向かうスタイリッシュな伝奇アクションは、少女マンガに少年マンガ的な要素を取り入れ接続する意義も持ちつつ、結局人間が一番怖いというミギー的な話も盛り込まれた名作です。『X』はその延長線上にあり、1999年に世界が滅びるとまことしやかに言われていた世相に見事に合わせた時代性を象徴する作品です。無期限休止中ですが、いつか完結を読みたいです。


『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』

最近とても増えたゾンビものですが、その中でも一風変わっているものの非常に面白く私もマンバTさんもお薦めしているのが『ゾン100』。「読んでいてこんなに前向き・爽快になれるゾンビマンガはない」! 「ゾンビマンガは登場人物が死ぬことを待望してるところがあるが『ゾン100』のキャラは皆生きていて欲しい」と非常に強く頷けるコメントもいただきました。

やじまさんはゾンビものだと『就職難!! ゾンビ取りガール』がお好きだそうです。

福満しげゆきさんの描く女の子の不思議な色気・かわいさたるや。


『はなしっぱなし』

五十嵐大介作品もオカルト等を語る上では触れずにはいられませんが、とりわけこの『はなしっぱなし』はキャッチーではないが故に奥深い魅力を湛えています。「嵌る人は本当に癖になってしまう、珠玉の不思議世界。理解するのではなく、画面をそのまま味わいたい」とクチコミであうしぃさんが仰る通りで、卓越した想像力と創造力から生じたこの世界に全身で浸り続けていたくなる作品です。マンバTさんは『海獣の息子』ともども「自然を見る眼の鋭さ」があると五十嵐大介作品全体に通底する要素を指摘。言葉で説明できないものに対する感性の豊かさが素晴らしい作品を生み出す一因なのは間違いないでしょう。


『もっけ』

当たり前に妖怪が存在する現代日本で、それらが見えたり引き寄せる体質を持っていたりする姉妹の物語。怖くて重い展開もあるものの、不思議とヒロインたちの言動や田舎の原風景から癒しすら感じられます。クチコミでは、この作品が「妖怪を通してリアルな人間社会とその中での成長を描き出している」と指摘。アフタヌーンらしい、独特の空気感の名作です。なおこの作品も時系列がバラバラに描かれているので、順番を変えて再読する楽しみがあります。


『怪異と乙女と神隠し』

精鋭のマンガ読みたちがこぞって絶賛する、最近1巻が発売されたばかりの今年注目の作品です。作者ぬじまさんは『歌うヘッドフォン娘』『虎子、あんまり壊しちゃだめだよ』といった過去作ではかわいい女の子を主軸としたコメディを描いていたのですが、本作は女の子のかわいさはそのままに一気に別路線でその才能を開花させてきた印象です。諸星大二郎さんは古事記を作品に取り入れましたが、こちらは万葉集。この日に備えて最近のおすすめオカルトまんがとして読んできていただいたやじまさんも「設定が面白い」と褒めていました。


『百鬼夜行抄』

「これを超える妖怪・怪奇漫画はなかなか無い」「1話から完璧で全巻買ってしまった」とクチコミを書いてくださったタカさん。私も初めて出逢った時にはまず表紙の美しさに惚れ、そしてお話を読んで更に惚れました。とにかくあらゆる面でクオリティが高い名作です。1995年から実に四半世紀も続く物語はその年月の分だけ味わい深さも積み重ねられ続けており、読んでいる時間は幸せに浸れます。老若男女問わずまず1話読んでみていただきたい作品です。

その後も、つのだじろう作品、そしてつのだじろうさんや楳図かずおさんに特に顕著なギャグマンガと恐怖マンガの両立とヒット、続編も描かれている『地獄先生ぬ~べ~』などなど話題は尽きることがありませんでしたが、残念ながらあっという間に刻限に。

「2時間が体感時間では一瞬の内に過ぎ去ってしまう」という愉快な恐怖体験を参加者で共有しました。

最後にマンバの説明と独自の機能紹介も行われましたが、『霊媒師いずな』を例に挙げて「イタコ(タグ)で(マンガを)検索できるのはマンバだけ!」という新たなパワーワードが誕生しました。

また、今回のゲスト・やじまけんじさんの『コッペくん』は8月10日に単行本1巻発売。

LINEマンガ掲載版とはコマ割なども変わっているので、ぜひ併せて読み比べてみてください。


改めてオカルトマンガやその歴史に触れてみることで、さまざまな刺激を得られて個人的にも非常に楽しかったですし、今後もオカルト要素のある作品を意識的に系譜上に見て整理してみたいとも思いました。

皆さんも寝苦しい夜には暑さも忘れるようなオカルト作品に手を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

◇◆◇◆◇

まさに夏真っ盛りのシーズンに突入しているところですが、ぜひ今回の配信で取り上げた作品を助けに少しでも涼しくなっていただければ幸いでございます!

次回配信は8月末を予定しています。詳細情報はマンバ公式Twitterと、マンバYouTubeチャンネルをチェック!

▼チャンネル登録はこちら▼
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次回もお楽しみに〜!!

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