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いつか撮りたい綺麗な景色

去年、正確に言うと一昨年の2019年の年末にパスポートを作りました。役所に受け取りに行ったのが2020年1月。まだコロナの足音が忍び寄る前のこと。

作った理由はふたつ。

ひとつは大好きなフィギュアスケート観戦で、入場時の本人確認で顔写真付き身分証明書の提示を求められる可能性があったこと。

もうひとつは、海外試合を観に行きたいと思い始めたから。

パスポートを作ったのは2度目。人生初パスポートは高校の修学旅行で上海へ行った時。海外旅行はそれっきりで、それ以降使われることなく5年の期限切れに。

英語をはじめ外国語が苦手(アレルギーといってもいいくらい)で、話せる言葉は関西弁とほんのちょんぼしな出雲弁のみ。海外旅行より国内旅行で、47都道府県のうち未踏の地はあと6~7県。さて、次はどこへ行こうか……と思っていたところ、ひょんなことからフィギュアスケート沼にドボン。2019年のフィンランディア杯、配信の画面越しに触れた観客のあたたかさに、それまで海外旅行に全く興味を持てなかった私が「ここに行ってみたい!」とある種の恋に落ち(笑)、その勢いも手伝って作ってしまったわけです。

そんな憧れへ小さな一歩を踏み出した矢先、自由に旅する翼を奪われました。

やっぱり私には縁がないのか……。

友人から「いつか一緒に(海外旅行へ)行こう」ともらったパスポートカバーを付け、引き出しの奥にしまいこんで半径1メートルの世界で過ごすこと1年半あまり。少しずつ国内移動ができる状況に、行きたいところに行けることがこんなにありがたいことだったのかとかみしめる日々です。当たり前は当たり前じゃなかった。失ってはじめて気づくことがたくさんありました。

10月からフィギュアスケートはグランプリシリーズがスタート。海外での試合が久しぶりの選手が多く、出場する選手はもちろん、煩雑な手続き、厳格な運営など関わるスタッフさんたちも大変な中での大会であることが想像できます。試合があることも当たり前じゃなかったと、また気づきが。

推しは2戦目のカナダ大会に出場。海外試合は私が恋に落ちたあの2019年フィンランディア杯以来でした。

本当に穏やかな笑顔で、試合に出られて、お客さんの前で演技できた歓びにあふれていて……見ていて胸がいっぱいになりました。新しい自分を世界の舞台で披露する姿は、めちゃくちゃカッコよかったです。

去年のカナダ大会は中止になってしまったので、2年ぶりの開催。カナダのお客さんは2年分の歓声を選手に送ってくれたのかもしれません。会場のあたたかい雰囲気は配信越しでもバシバシ伝わるものがありました。

やっぱり試合でしか得られないものがたくさんあると、トップ選手が集う試合で演技する姿を見て、インタビュー記事を読んで実感しました。100回の練習より1回の本番は本当だと思う。出場選手がかけがえのないものを手にできますように、どうかファイナルまで無事に試合が行われますようにと願わずにはいられません。

この海外試合観戦ならではのある出来事が、私の心の奥に小さな火をつけていて……今日の本題はそこです。

国内試合は(私が知る限りでは)観客席からの撮影は禁止だけど、海外では写真撮影OKの試合もあって、このカナダ大会、観客席から撮られた写真がツイッターにどんぶらこと流れてきて、我が家にバンクーバーの風が吹いて、私の心に忘れかけていた(忘れようとしていた)「撮りたい!」という炎が灯りました。

(ツイートリンク許可をいただきました。sonoさん、ありがとうございます!)

配信では見られなかった風景もあって、自分も観客席から応援している気持ちを味わえて、写真を見せてもらえてとてもありがたかったです。選手に歓声を送ってくれて、日本から見守ったファンとの時差と距離を埋めてくれた現地組に心からの感謝を!有観客で本当によかった。

「welcome back MAI」これめちゃくちゃパワーになったと思います。なんて粋なことを……!と感激しました。私、こういう写真にグッときてしまうんですよね……。観客席にいる人でないと撮れない貴重で素敵な一枚です。

趣味で写真を撮り始めて11年目。旅先や日常にレンズを向けてきたけど、世界の舞台で活躍する推しを撮ってみたい、第一線の舞台がどんな場所なのか、中継や配信では見えないところを撮ってみたいという気持ちが強くなりました。

(自由に旅する)翼を奪われて、海外との距離が遠くなっているけど、それでもいつか……!と、想いはふくらむばかりです。観客席からでないと見られない、撮れない景色があると、sonoさんはじめ現地組が見せてくれた写真を見てそう感じました。

プレス撮影の写真も素敵なものがたくさん。今回、日本からのカメラマンは会場入りできなかったみたいで、どれだけ報道写真が残るか心配したけど、カナダの現地カメラマンもいい瞬間を撮ってくれました。動きの中の一瞬をとらえる力、プロのいい仕事は万国共通です。

「とても綺麗な景色でした」

カナダ大会後に投稿された草太選手のインスタに、そんなコメントが添えられていました。

この景色をファンのみんなにも見せたい、と思って投稿してくれた気持ちと、なによりキミがリンクにいる景色がとても綺麗だったよと伝えたいです。

推しはいつも私にあたらしい景色を見せてくれる。そしてあたらしい夢まで。いつもこちらがもらってばかり。

いつになるのか全然わかんないけど、画面でしか見たことがない街に降り立ち、そこで見たもの感じたものすべてを撮りたい。もっと言えば、観戦旅行記として文章も書いて、ムック本みたいに一冊に編集してカタチにしたい!クソデカ理想をぶち上げて、私の中の編集者魂がメラメラと燃えております。

今までこわくて遠ざけていた言葉の壁すら「んなもんどないかなるやろ!」と、根拠のない自信が芽生えつつあります。遠慮してる場合じゃない。人生は一度きり。そんなことにかまっとられん!かなえたいという想いが勝ってます。

いつだって自分が好きになったものが、自分を動かす力をくれる。趣味レベルでも自分が好きでやりたいことだから、もっと技術を身に着けたい、上手くなりたいと気持ちを掻き立てられる。好きが好きの力を大きくしてくれる。

私はまだ見ぬ世界を見たいし、写真も文章ももっと上手くなりたい。伝わる、伝える力を強くしたい。全部推しがくれた感情です。

そんなカナダ大会の余韻にひたっていたところ、怪我で出場辞退した選手の代わりに12日から始まるNHK杯への出場が急遽決まりました。

グランプリシリーズは1選手最大2試合の派遣。今季の草太選手はカナダ大会1試合のみでしたが、2試合目が巡ってきたことになります。出場の経緯が特殊なので「出場おめでとう」を発信することに慎重にならざるを得ないですが、今持っている力を存分に発揮してほしいと心から願います。

怪我で試合に出られない、スケートができない辛さを誰よりも身をもって知っている、そんな選手だということは、この記事でわかってもらえると思います。

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先日、京都の護王神社へお詣りに行ってきた時の写真です。足腰の健康・平癒の御利益を求める人が足を運ぶ神社として広く知られています。全ての選手の健康を祈って、今週末のNHK杯を応援したいと思います。

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いつか撮りたい綺麗な景色に出逢った時、すぐに心のシャッターが反応できるように、感じたことを表現できる文章が書けるように、それを見てくれた誰かの心がちょっとでも豊かになるように、半径1メートルの世界から一歩踏み出して、少しずつでも技術と感性を磨いていきたいです。翼はまだないけど、準備していればきっとかなうと信じて。

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