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えらいぞスーパーマン

師走というのは、なぜこんなに忙しいんだろう。12月に入ったのなんて、つい昨日のことのようなのに、赤子を追いかけ回しているうちに年末になってしまった。

この数ヶ月、noteを更新することができなかったけれど、どうしても2019年のうちにひとつ書いておきたかったことがある。今年の自分を褒める場を残しておきたいのだ。


昨年出産した私は、この春、夫と共に育休を延長した。理由はいろいろあったのだけれど、保育園の手を借りずに夫とふたりでの子育てを続行することにしたのだ。

その頃には子育ても慣れてきた(と思っていた)し、育休を取りつつ大学に通う夫との連携もうまくいっていたので、私はできる範囲で仕事に復帰することにした。

リモートで編集の仕事をさせてもらったり、音声から原稿を書いたり、行けるときには取材にも行った。子育てをしながらで至らない部分やできない範囲があるのに、柔軟に受け入れてくれたまわりの方々には本当に頭が上がらない。

社会とのつながりができるのが嬉しくて、つい仕事を入れすぎることもあったけれど、なんとか乗り切ってこれたのは、仕事関係の方々と家族のおかげ。本当に。ありがとうございました。

復帰したばかりの頃、娘はまだ1歳にも満たなくて、つかまり立ちした頃だっただろうか。朝、娘と起きて朝食のあと公園に連れていく。午前と午後のお昼寝のあいだに少し仕事をし、午後は夫と交代で娘と遊び、寝かしつけ後にまた仕事をする。

「ライターは在宅仕事だから、子育てしながらできていいね」と言う人たちが思い描く、まさしく「子育てと仕事の両立」の生活が始まったのだ。

「結構いい感じじゃん」

そう、思っていた。


それが、しんどくなってしまったのは。「わああ、これは持続可能じゃないぞ」と思うようになったのは、一体いつからだっただろう。

まず娘の昼寝が、ある日いきなり減ってしまった。2回だった昼寝が朝の1回だけになり、時間も急に短くなった。まじか!昼寝中が貴重な仕事時間だった私にとって、これは痛手だった。

さらに、娘はあっという間にひとりで歩き回るようになり、今まで以上に目が離せない。パソコンやスマホに興味を示すようになったため、起きている間に仕事をすることはほぼ不可能となった。

娘の成長が嬉しいとともに、溜まっていく仕事に焦りが募る。 みなさん、赤子と同じ部屋で仕事ができるのは、寝返り前までです。それ以降は、檻にでも閉じ込めておかないと無理!覚えておいてね。

夫は夫で学業が忙しくなっていき、私たちはお互いの仕事や大学のスケジュールを共有しながら、どうにかシフト制で娘を連れ出した。夫が娘を連れ出してくれた3時間に仕事をしなければいけないはずなのに、うたた寝したりTwitterを眺めているうちに数時間が経ってしまい、後悔したことが何度もある。

日中働けない分、仕事は夜に回った。娘を寝かしつけたあとの数時間が勝負。睡眠時間は削られていき、日中赤子をテレビの前に座らせ自分は死んだように寝ていたこともある。

キャパ超えしたら、仕事相手にも家族にも迷惑をかける。それだけはわかっていたので、なるべく慎重に仕事を入れ、お仕事をお断りしてしまうことも多くなっていた。やってみたい取材もたくさんあったのに、できない自分が情ないやら、悔しいやら。

赤子に苛つく理由のひとつには「仕事があるのに」があって、仕事を断るときは「子どもがいなかったら」と思っていた。まさに仕事と子育てが、互いを喰い合っている状態。常に赤子を追いかけ、原稿に追われる日々。

こうやって振り返ってみると、いろいろと下手なやり方をしていたんだと思う。スケジュール管理も、仕事のスピードも、子育ての仕方も、きっともっとうまい方法があっただろうなあ。

それでも、ついにきた。なんとか年を越せそうなところまできたのだ。


きっと外から見れば、子育てと仕事を両立しているように見えていた(はずの)私は、そんな自分を褒めることはないまま突っ走ってきたんじゃないかと、今思う。

「子育ても仕事も、好きでやっているんだから」

「育休を延長することも、復帰することも、自分で選んだんだから」

自分の都合やわがままで始めたこの環境を思えば、自分を褒めることなんてできない。むしろ仕事先にも家族にも、迷惑ばかりかけている。常にその罪悪感でいっぱいだった。

子育てと仕事を両立している人はスーパーマンだと思っていた。私もスーパーマンになれるのかなと思っていた。私は今年、仕事と子育て、両方の足でしっかり立っていられてたんだろうか。

仕事も子育ても、いろんな人に両脇を支えてもらいながら、震える足でどうにか立っていたような年だった。

でも、もしかしたら「仕事と子育てを両立できてるスーパーマン」はみんな、震える足で肩組み合ってようやく立っているのかもしれないなあ、なんて。


寝不足で、不機嫌で、バランスの悪い生活だったけど。今年の私はスーパーマンだったよ。今日くらいは、自分にそう言ってあげたい。

締切を落とさず、一本ずつ本気持ちを込めて記事を書いた。地方取材も行けて、思わぬ形で新しい仕事をもらえた。

娘がよく笑う元気な子に育ち、ひとりですべり台ができるようになった。部屋は散らかっていたけれど、みんなが元気で過ごせた。

十分じゃないか!えらい!すごい!よくがんばった!

この年末は、「もっと頑張れたのかも」なんて考えるのはやめよう。全力で「おつかれさま!」と自分を褒めて終わりたい。今年ももう終わりだもん、そのくらい、いいよね。

子育てと仕事を両立させたスーパーマンよ、子育てに専念したスーパーマンよ、仕事をがんばったスーパーマンよ。みんなみんな、えらい!よくがんばった!おつかれさまでした!

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